薬局の薬剤師はなぜ質問が多いのか?医薬分業の役割・メリット


薬局の薬剤師はなぜ質問が多いのか?医薬分業の役割・メリット

【薬剤師・大学教授が解説】薬局の薬剤師は症状や病気について色々と質問してきます。病院で診察を受けて処方箋も持っているのに、なぜすぐに薬を調剤してくれないのでしょうか。実はこれは「医薬分業」で、患者さんの安全を守るために大事な役割を果たしてくれているのです。薬局薬剤師の質問の役割とそのメリット、もし医薬分業でなかった場合の危険性について解説します。

薬局の薬剤師からの質問、患者さん側は面倒?

体調が悪くなって病院で診察を受けた後、調剤薬局に処方箋を持って行くと、薬剤師から「どうされましたか?」と病状について改めて聞かれることがあります。

薬を受け取りに来た患者さんからすると時に違和感を覚えるようで、

「なぜ病院で話したことを繰り返し説明しなきゃいけないの?」
「もう処方箋が発行されているのだから、そのまま薬を出してくれたらいいのに」
「他の患者さんがいるところで、自分の病気のことを言わせるなんてひどい!」

というような不満の声を耳にすることもあります。

「病院で風邪だと言われました」と簡単に説明しても、「いつ頃から症状がでましたか?」などとさらに質問されて、面倒に感じてしまったという方もいらっしゃるかもしれません。なぜ薬剤師は病院での診察を終えたあなたから、さらにいろいろなことを聞き出そうとするのでしょうか?

これは薬局の売り上げのために対人コミュニケーションを図ろうとか、あなたの症状に個別に興味があるといった理由で話しかけているわけではありません。意味が分かれば、薬局での質問されたときの気持ちが変わるかもしれません。

薬局の薬剤師の仕事の意味は? 患者側の安全性を高める「医薬分業」

薬剤師という仕事をあまり知らない人からすると、調剤薬局の薬剤師の仕事は、「医師が発行した処方箋に書かれた薬剤を薬局の棚から取って袋に入れ、患者に渡すこと」と思われるかもしれません。しかし、書かれているものを棚から出して渡すだけなら、ロボットでもできそうですね。わざわざ6年制大学の薬学部を卒業して、国家試験をパスした有資格者だけしかできない業務とは思えません。

実は薬剤師には、それ以外に重要な役割があります。それこそ「処方箋をチェックすること」なのです。

医薬の専門家であるはずの医師でも、患者の病状を十分に把握しないで誤った診断をしたり、薬の選択や用量を間違えたりなど、ミスをすることがあります。かつては、個人開業の小さな医院の中で、ある一人の医師が自分で診察した患者に薬を直接渡すことはよく行われていましたが、この場合ミスがあっても気づけないため、患者が誤った薬を使ってしまうリスクがありました。

そのため、近年は「医薬分業」が推進されていますが、これは医師が書いた処方箋の内容が適正であるかどうかを、別の独立した調剤薬局の薬剤師が確認することによって、安心安全に薬が提供されるように配慮されたためです。

客観的なチェックのために、実は処方箋に書かれていないこと

処方箋を薬剤師がチェックするときには、客観性が求められます。そのためには「先入観」があってはいけません。そのため、処方箋には肝心な病名が書かれていないのです。

「処方箋にはっきりと病名を書いてくれれば、薬局で説明する手間が省けるのに……」と思われるかもしれませんが、処方箋に書かれた病名を薬剤師が鵜呑みにしてしまっては、「医薬分業」にしている意味がありません。

また、実際のところ、処方箋に書かれた内容を薬剤師が見れば、その患者がどのような病気と医師から診断されたかはだいたい類推できてしまいます。しかしそれだけでは、医師が行った診断が適正だったかどうかを確認したことにはならないのです。

薬のプロとして薬剤師が、改めて最初から患者の訴えを聞き取り、できるだけ先入観を持たずに病気の診断から薬剤の選択までを検討し、その結果が医師の処方箋と適合したときに、本当に「問題なし」と言えるのです。だから、調剤薬局の薬剤師は、患者であるあなたに病状やその他の情報を直接尋ねようとするのです。

処方箋に問題があった場合には「疑義照会」

もし、処方箋の内容に問題があると疑われたときには、薬剤師が医師に問い合わせてくれます。この過程を「疑義照会(ぎぎしょうかい)」と言います。疑義照会の結果、医師が認めれば、処方箋の内容が訂正されます。明らかに間違いがあるのに医師に確認がとれない場合には、薬剤師が調剤拒否することもあり得ます。

筆者自身も、こうした医薬分業の意義を思い知らされた経験があります。

筆者の子どもが発熱した際、近くの医院に連れていきました。担当医師は、見かけは優しそうな方でしたが、簡単に見ただけで「風邪だね。お薬を出すから大丈夫だよ」と、診察を終えました。診察後に窓口でもらった処方箋を見て驚きました。解熱剤、咳止め、痰切り、痛み止め、鼻水を抑える薬、胃薬など風邪の諸症状に使える薬がずらりと並んでいたからです。

おまけに複数の成分が混ざった総合感冒剤や抗菌剤まで含まれていました。ちなみに、子どもは発熱があっただけで、咳や鼻水などはでていませんでした。幸い筆者自身は薬の専門家ですので、その処方箋の内容が適正ではないことはすぐにわかりましたが、その医院で質問することは控え、そのまま調剤薬局に処方箋を持って行きました。

薬局で薬剤師と「咳や鼻水などの症状がまだでていないのに予防的に対症薬を飲む必要はないはず」「同じ効能の薬が重複して処方されている」「幼い子どもにこれだけ多種類の薬を飲ませるのは難しい」ということを話し、筆者からも処方変更を相談してみました。その結果、薬剤師から医師へ疑義照会がなされ、処方薬の数が減らされました。

現実問題として、医師によって処方する薬の量や内容には差があります。処方権と調剤権のすべてを医師が独占することは危険であり、利害関係のない第三者として薬剤師がチェックする「医薬分業」は必要不可欠な機能だと痛感しました。

薬局側の課題……プライバシーへのさらなる配慮は必要か

調剤薬局の窓口で、薬剤師が患者情報を確認することが大切であることは、納得していただけたと思いますが、他の患者さんがたくさんいるところで質問されて答えなければならないのは、確かに嫌ですね。筆者自身もそう感じたことがあります。

病院では診察室で医師と患者だけでの問診が基本ですから、薬局でも患者のプライバシーに配慮すべきだと思います。処方箋のチェックのために、積極的に患者から情報を聞き取るのであれば、薬局の窓口でのやりとりが他の患者に聞こえないような設備を用意してもいいのではないでしょうか。薬局の経営に携わっている方がこの記事を読んでおられたら、ぜひご検討いただきたいところです。

薬局の薬剤師は頼れる存在! 理解して積極的に活用を

薬剤師は、単に調剤するだけではなく、みなさんが適切に薬を使用して安心安全な日々を過ごせるように、あれこれ質問をしているのです。いつもと同じ薬だったとしても、病状の変化によっては薬の種類や用法用量を変えなければならないのに、医師がそれに気づいていないケースもあります。「薬剤師さんに念のため再チェックしてもらおう」という意識が持てれば、「質問をされるのは煩わしい」とか「早くしてほしい」といったイライラはなくなるでしょう。

薬剤師は、薬のプロとしてみなさんの味方になってくれますから、どんどん頼ってください。


引用:「All About [健康・医療]|医師などの専門家によるヘルスケア情報」より

※記事内容は執筆時点のものです。
免責事項(All Aboutサイトへ)


All About 脳科学・医薬 ガイド / 阿部和穂

薬学博士・大学薬学部教授。脳科学と薬理学を専門とする研究者
東京大学薬学部卒業、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員、星薬科大学講師を経て、武蔵野大学薬学部教授。薬学博士。専門は脳科学と医薬。

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