銀杏は食べすぎると危険?秋に美味しい銀杏の成分は?
秋に旬を迎える、銀杏。
ついつい食べ過ぎてしまう方も多いのではないでしょうか。
実は、秋に美味しい銀杏は、食べ過ぎてしまうと中毒を起こす危険があります。
銀杏をどのぐらい食べたら中毒になるのか?
そもそも、なぜ中毒を起こすのか?
その症状は?
銀杏に関する疑問について、詳しくご紹介していきます。
そもそも銀杏とは?
銀杏とは、ご存知の通り、秋に紅葉するイチョウの木の実のこと。
イチョウの木は、とても生命力が強い植物で、約1億5000万年前の恐竜時代から世界各地に存在していたことがわかっています。
そんなイチョウの木の実である、銀杏。
古くから漢方としても使われているほど、薬効が強いのが特徴的です。
咳止めやぜんそくの治療薬や夜尿症改善、滋養強壮など、さまざまな症状に有効であることがわかっています。
銀杏の食べられる部分は、殻の中にある胚乳部分です。
気になるのは、銀杏に含まれる栄養価。
銀杏は主に糖質に脂質、たんぱく質からなりますが、ビタミンCやβ-カロテン、ビタミンCなどが均等に含まれています。
銀杏には中毒性がある?
「銀杏は食べ過ぎてはダメ!」と、なんとなく聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
さまざまな効果が期待できる銀杏ですが、中毒性があることがわかっています。
その成分は、アンチビタミンB6物質である「MPN」。
聞きなれない名前ですが、このMPNは銀杏の可食部に含まれていて、銀杏を大量に摂取するとビタミンB6欠乏症と似た中毒症状を起こします。
体内のビタミンB6は、欠乏すると神経伝達物質であるGABAの生合成が阻害されて、強直性痙攣などの症状が誘発されると考えられています。
そのため、銀杏を大量に食べるとこのビタミンB6の欠乏と同じ状態が起こるのです。
主な症状は、嘔吐と痙攣で、痙攣を何度も繰り返すことが多くあります。
その他の症状には、不整脈、顔面蒼白、呼吸困難、呼吸促迫、めまい、意識混濁、下肢の麻痺、便秘、発熱などがあげられます。
重篤な場合は、強直性及び間代性痙攣を伴い、意識を失うことがあります。
そして、最悪の場合は死亡する例も報告されているので、食べ過ぎには十分注意が必要です。
銀杏による中毒症状を起こしやすいのは、5歳未満の子どもに多く、報告されている全患者の70%以上が10歳未満の子どもたちです。
大人の場合は、かなり多量に摂取した場合に限られていますので、適量であれば中毒になることは少ない傾向にあります。
食べすぎるとどうなるの?何個までなら大丈夫?
では、どのくらいの量を食べると中毒を起こしてしまうのでしょうか。
銀杏の経口中毒量は、子どもは7~150個、大人は40~300個と言われています。
小さい子どもの場合は中毒を起こしやすく、5~6個程度食べただけで中毒を起こしたという報告もあります。
しかし大人の場合は、よほど多量に銀杏を食べないと中毒に至らないので、少量であれば食べていただいて問題ないでしょう。
目安は、大人は1日10個程度。
子どもの場合は5個以内です。
この量は必ず守るようにしてくださいね。
他にもあった!身近な中毒性のある食べ物
実は銀杏以外にも、私たちが普段食べている食材には中毒性のある食べ物があります。
しかし、多くの食材が下処理や調理など加工することで毒性を弱められたり、食べる量を適量にしたりすることで中毒症状を防ぐことができます。
身近な中毒性のある食材
①じゃが芋
じゃが芋の芽や緑色に変色した皮の部分、家庭菜園で作られた未熟で小さいじゃが芋には、天然毒素であるソラニンやチャコニンが多く含まれています。
ソラニンとチャコニンは、じゃが芋を加熱してもほとんど分解しないことがわかっています。
調理する時は、じゃが芋に芽があれば、そのまわりの部分も含めて必ず取り除きましょう。
皮に緑色の部分があったら、皮を厚めに剥き、緑色の部分のまわりもしっかり皮を剥くことが大切です。
②未熟な梅(青梅)
未熟な梅である青梅には、中毒症状を起こすアミグダリンが含まれています。
そのため、生食には適さず、お酒や酢、砂糖などに漬けて加工することで毒性を分解することができます。
青梅を美味しく安全に食べるには、甘露煮やジャム、ジュースなどに加工しましょう。
また、食品に関係する中毒の原因は、中毒性のある食べ物だけではありません。
食材や料理の保存状態や衛生環境が悪くて中毒症状を起こす場合や、野菜や山菜に似た有毒植物を採って食べてしまい、中毒症状を起こす場合もあります。
安全に食事を楽しむためには、中毒を起こす可能性のある食材について、正しい知識を身に付けて予防することがとても大切です。
銀杏のおすすめの食べ方
銀杏の食べ方がわからない!
そんな方におすすめの銀杏の美味しい食べ方について、ご紹介していきます。
銀杏を美味しく食べるには、炒る・茹でる・揚げるなどさまざまな調理方法があります。
また、銀杏単体で食べるだけでなく、炊き込みご飯や茶わん蒸し、炒め物などの料理にプラスしても美味しく召し上がれますよ。
旬の今の時期におすすめの食べ方は、炒り銀杏。
フライパンに銀杏を入れ、中火でコロコロと転がしながら炒めるだけのとてもシンプルな料理ですが、銀杏のホクっとした食感や甘味をしっかりと味わうことができます。
そして、一番手軽な食べ方として、電子レンジでチンする方法もあります。
ヒビを入れた銀杏を家にある茶封筒などに入れ、電子レンジでチンすれば簡単にお家で銀杏を食べることができます。
加熱する前は、包丁の柄や専用の銀杏割りなどを使って銀杏の殻にヒビを入れましょう。
こうすることで、銀杏が熱によって破裂するのを防ぐことができますよ。
電子レンジの加熱は、500W~600Wで1分半程度が目安です。
塩を少々振りかけるだけでとっても美味しく召し上がれます。
食べ過ぎるとからだに良くない銀杏ですが、秋を感じられるとっても美味しい食材。
目安量を守って、ぜひ美味しく召し上がってくださいね。
内科医 / 工藤孝文
福岡県みやま市出身。福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学、帰国後、大学病院で糖尿病、肥満症などの生活習慣病を専門に修業、現在は、自身のクリニック工藤内科で診療を行う。2017年よりスマホ診療を導入し全国規模でダイエット治療・漢方治療を行っている。
テレビ番組の出演・医療監修、書籍、雑誌やヘルスケア情報サイトの監修など、メディア活動多数。
日本内科学会、日本糖尿病学会、日本東洋医学会、日本高血圧学会、日本甲状腺学会、小児慢性疾病指医
引用:「+healthcare」より