「異常に喉が渇く」のは糖尿病のサイン? 原因と対処法を医師が解説


「異常に喉が渇く」のは糖尿病のサイン? 原因と対処法を医師が解説

適度な水分摂取は必須ですが、過度に水分を欲しがるようになっていたら、異変が起きているかもしれません。もしかすると、その喉の渇きは尿で糖分を排出せざるを得ない“緊急事態”によって引き起きているのかもしれません。

糖は十分にあるのに、体が糖を利用できない状態

Q. 糖尿病になると喉が渇くのは、本当なのでしょうか?

A. はい。糖尿病とは、血液中の糖が増え、それを体内でコントロールできなくなる病気です。水分は糖と結びつきやすいため、過剰な糖が尿の中に排出される際、一緒に水分も体外へ出ていきます。すると、頻回な排尿によって脱水となり、喉が渇きます。それは糖尿病の代表的な自覚症状と言えるでしょう。

Q. 正常時なら、血糖はどのようにコントロールされているのですか?

A. 「インスリン」というホルモンの働きにより、筋肉などの細胞は血糖をエネルギー源として取り込むことができます。エネルギーとして消費されずに余った糖は、脂肪などの形で体内に蓄えられます。ところが、高血糖の状態が続くとインスリンの分泌が減り、働きが弱くなってしまうのです。血糖の高い状態が続くと、尿中にも糖があふれて出てきてしまうというわけです。

Q. 結果として糖を排出できていれば、インスリンが少なくても大丈夫なのでは?

A. 血糖値が高くなるような生活習慣を続けている限り、糖を排出し続けても状態は改善しないどころか、インスリンの分泌はさらに減り、働きも弱まっていきます。そして、インスリンの働きが弱まることで、筋肉がエネルギー源として血糖を十分に使えなくなり、代わりに脂肪や蛋白質が消費されはじめます。その結果として、体重が減っていきます。ただし、「ダイエットに効果的」とは絶対に考えないでください。糖尿病による弊害の方が、肥満のそれをはるかに上回ります。

Q. 運動不足によって、体内の糖が過剰になることは?

A. 筋肉量の減少とともに基礎代謝が少なくなってくると、血糖値は上がりやすくなります。ですから、“太っていないのに糖尿病”という人はいらっしゃいますね。ですが、典型的なのは、糖分の取りすぎで糖尿病になるパターンでしょう。

喉の渇きを覚えたら、体重の変化に注意

Q. 喉の渇きは糖尿病以外でも起こりますよね? それが糖尿病のサインかどうかを知りたいです。

A. スポーツをした後や、飲酒によっておしっこがたくさん出た後などにも、喉は乾きます。ただし、頻尿があって、それを追いかけるように水分を取っているとしたら、糖尿病かもしれません。また、体重の顕著な増減に着目してみましょう。余った糖が脂肪へ変わると太りますし、糖が使えなくて脂肪を燃やしはじめると痩せます。

Q. ほか、糖尿病ならではの自覚ってありますか?

A. 「甘い物が欲しくなる」習性ですね。糖分の過剰摂取を続けると、次第により多くの糖分が欲しくなってしまう一種の中毒症状を引き起こすことがわかっています。また、体内で糖が余っているにもかかわらず、体がそれをうまく利用できていないためでしょうか。糖尿病が進行している際にみられる症状で、悪循環を起こしています。

Q. もし上記に該当していたら、確信がなくても受診すべきでしょうか?

A. ぜひ、そうしていただきたいですね。糖尿病の早期発見はもちろんですが、「糖尿病ではなかった」という“除外診断”をつけることも大切です。受診と治療は別物と捉え、「自分の体になにかが起きているのか、起きていないのか」を確認しておきましょう。治療の必要性を考えるのは、その後の話です。

勢いがついてからでは、止まりたくても止まれない

Q. ちなみに、高血糖が続くとどうなるのでしょうか?

A. 全身の血管の壁が傷付きます。あくまでイメージですが、「研磨剤の入った洗剤で、ガラスのコップをこすっている状態」に近いですね。血管の老化は誰にでも起こり得ることですが、「より加速させている」のが糖尿病の実態です。

Q. 具体的な影響は?

A. 真っ先に影響が出るのは全身の細い血管で、次々と“詰まり”が起きていきます。細い血管が多い目の網膜や腎臓、神経で症状がみられはじめます。具体的には、視力の低下や尿蛋白、局所的なしびれや痛みなどです。

Q. すぐに命が脅かされることはなさそうですが?

A. そんなことはありません。次の段階として、心臓や脳の血管に障害が起きてくると、心筋梗塞や脳卒中を起こしかねないからです。むしろ、糖尿病の治療で大切なのは、患者さんが心筋梗塞や脳卒中にならないことです。

Q. 健康診断で血糖の異常値が出たら、どれくらい深刻に受け止めるべきでしょうか?

A. 糖尿病の進行は例えるとすれば、坂道の転がり方に似ています。初期の緩やかな下りほど元に戻りやすいです。ある程度下ってしまってから治そうとすると、時間がかかりますし、その間の合併症リスクも高まり続けます。来院される人で多いのは、異常値が出ているのに“様子見を数年間も続けてしまった”患者さんです。糖尿病は一生にわたって自己注射や薬の服用を続けることになる可能性もあり得ますから、早めに対処しましょう。


大場 啓一郎(大場内科クリニック 院長)

昭和大学医学部卒業。昭和大学医学部大学院薬理学講座医科薬理学部門卒業。2014年、神奈川県相模原市に「大場内科クリニック」開院。2016年、法人化に伴い「医療法人社団若葉堂」理事長就任。なんでも相談できる「かかりつけ医」として尽力している。医学博士。日本内科学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本ワクチン学会の各会員。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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