「骨粗鬆症(骨粗しょう症)」の原因や治療を医師が解説 骨密度の低下は予防できる?
主に加齢が原因で骨の密度が低下してしまう「骨粗鬆症(骨粗しょう症)」。放置すると、ちょっとしたことで骨折しやすくなり、日常生活に支障をきたすこともあります。一体、骨粗鬆症は予防することができるのでしょうか。
骨がもろく骨折しやすくなる、骨粗鬆症の原因は?
Q. 骨粗鬆症とはなんですか?
A. 骨粗鬆症とは、骨密度が低下して骨がスカスカの状態になったり、骨の質が劣化したりする疾患です。そのため、ちょっとした転倒や尻もちで骨折することもあります。一般に、男性に比べて女性の方が多く発症すると言われています。
Q. 骨密度について、もう少し詳しく教えてください。
A. 簡単に言えば、骨の強さを判定するのに用いる指標のことです。骨はカルシウムやミネラルで構成されていますが、それらの成分が骨の中にどれだけ詰まっているかを示しています。
Q. その骨密度が低下してしまう原因はなんでしょうか?
A. 主な原因に、加齢が挙げられます。高齢になるにつれて、腸でのカルシウムの吸収が悪くなるため、骨が弱くなってしまうのです。そのほか、過度のダイエットをしている人もカルシウムなどの栄養素が不足しがちなため、骨粗鬆症になりやすくなるとされています。
Q. 他方で、骨質が劣化してしまうのはなぜですか?
A. 年齢とともにコラーゲンが硬くなり、劣化が進んでしまうからです。また、加齢のほかに、性ホルモンの低下や生活習慣病でも劣化が進行することが知られています。
Q. 高齢者以外だと、どんな人が骨粗鬆症に気をつけたらいいでしょうか?
A. 「閉経後の女性」は要注意です。なぜなら、閉経すると骨密度を一定に保つ働きがある女性ホルモンの分泌量が急激に減少するからです。それから、「運動不足の人」も骨粗鬆症には気をつけた方がいいでしょう。
Q. なぜ、運動不足だと骨粗鬆症になりやすいのですか?
A. 運動をすると体に適度な負荷がかかり、骨に刺激が加わって強度が増します。そのため、運動が不足すると骨がどんどん弱くなってしまうのです。そのほか、「喫煙者」「骨粗鬆症の家族がいる人」「糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病がある人」も骨質の劣化が進むことで、骨粗鬆症になりやすいとされています。
骨粗鬆症は治る? 治療法を医師が解説
Q. 骨密度が低下してしまったら、元に戻らないのでしょうか?
A. いいえ。骨粗鬆症は治療をすることができます。骨密度の程度にもよりますが、一般的に中心となるのは薬を使った薬物療法です。
Q. 具体的に、どのような薬が使われるのですか?
A. 一概には言えず、色々なタイプの薬を組み合わせて使います。よく使用されるのは、古くなった骨を壊すのを抑制する薬や新しい骨が作られるのを促進する薬でしょうか。そのほか、骨を作るのに必要なカルシウムやビタミンK2、活性型ビタミンD2などを補充する薬も使うことがあります。また、薬物療法と並行して、食事療法や運動もおこないます。とくに、劣化した骨質を改善するには、運動が最適です。
Q. 薬物治療の効果は、すぐに表れるのですか?
A. いいえ。そもそも、骨粗鬆症は生活習慣病の一種なので「治療に終わりはない」と考えていただいた方がいいと思います。つまり、骨粗鬆症は完治するものではなく、生涯にわたって向き合う必要があるということです。骨密度や骨質が再び低下しないように、日常生活で常に注意する習慣をつけましょう。
骨粗鬆症を防ぐには?予防のための運動・食事・生活習慣
Q. 骨粗鬆症を防ぐには、日常生活でどんなことに気をつければいいでしょうか?
A. まずは、運動習慣をつけることから意識していただきたいです。とくに、ウォーキングやジョギングがおすすめです。歩くことで重力が骨へ刺激となって伝わり、骨の強度が増します。ただし、転倒には十分気をつけながら運動をおこなうようにしましょう。
Q. 食事面で注意すべき点はなんでしょうか?
A. よく「骨粗鬆症を予防するにはカルシウム」と考える人も多いと思いますが、カルシウムだけでなく、ビタミンやミネラルもバランスよく摂ることが大切です。とくに、ビタミンKやビタミンD、タンパク質は骨を作るのに重要な栄養素ですが、普段の食生活ではどうしても不足しがちなので、積極的に摂るようにしましょう。
Q. ほかにも、積極的に摂った方がいい食べ物はありますか?
A. 動物性の脂を摂ることも大事ですね。なぜなら、動物性の脂は骨の形成を促進する働きがあるからです。しかし、高齢になると食べる量が減ってしまい、必要な栄養素を摂取できないという人も少なくありません。まずは1日の食事摂取量を見直してみて、不足している場合は必要に応じてサプリメントなどを活用するのもいいでしょう。
Q. 反対に、控えた方がいい食べ物はありますか?
A. カルシウムの吸収を妨げる食べ物には要注意です。例えば、インスタント食品やスナック菓子、アルコール、カフェインは控えた方がいいですね。また、食塩はカルシウムの排泄を促す作用があるため、減塩を意識しましょう。加えて、肥満の人は生活習慣病に気をつけることも大切です。
Q. そのほか、日常生活で気をつけることはありますか?
A. できるだけ外に出て、日光を浴びるようにしましょう。日光を浴びると、体内ではビタミンDが作られます。ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあるため、積極的に摂りたい栄養素ですが、日々の食事では不足しがちです。そのため、毎日30分~1時間程度は日光にあたり、ビタミンDの生産を促進するような行動を取るといいでしょう。
朱田 尚徳(所沢あかだ整形外科 院長)
富山医科薬科大学医学部医学科卒業。国内外の整形外科病院勤務ほか、Jリーグのチームドクターなどを歴任。2020年、埼玉県所沢市に「所沢あかだ整形外科」開院。理学療法士や鍼灸師とともに、チーム医療に務めている。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、義肢装具等適合判定医。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
※記事内容は執筆時点のものです。
免責事項(Medical DOCサイトへ)