初期症状がない「胃がん」を早く見つける方法はご存じですか? 胃がん検診の流れや注意点も医師が解説

胃がんを早期に発見し、早期治療をおこなうために欠かせない「胃がん検診」。そのため、定期的に受けることが推奨されているものの、具体的にどのような流れでおこなわれるのか気になりますよね。
胃がんは見つかったときには進行している?
Q. まず、胃がんについて教えてください。
A. 胃がんとは、胃の内側の粘膜から発生する悪性腫瘍です。世界的に見ても非常に多いがんの1つで、日本でも多くの人が罹患しています。早期に発見して治療すれば、比較的予後の良いがんでもあります。しかし、進行するにつれて徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)と、粘膜の深いところに進んでいき、治療が難しくなってしまいます。
Q. 胃がんになると、どのような症状が出るのでしょうか?
A. 初期の胃がんでは、自覚症状がほとんどありません。進行すると、上腹部の痛みや不快感、食欲不振、体重減少、吐き気や嘔吐、黒い便(タール便)などが表れることもあります。これらの症状がみられる場合、すぐに医療機関を受診しましょう。
Q. 気づいたときには進行しているのですね……。
A. そのとおりです。胃がんの診断には、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が最も一般的なので、早期に見つけるためには、症状がなくても定期的に胃がん検診を受けることが重要です。
胃がん検診ではどんなことをするの?
Q. 胃がん検診では何をするのでしょうか?
A. まずは問診です。これまでにかかった病気や家族歴、胃がんのリスク要因である喫煙や飲酒の習慣や、食習慣などを確認します。また、胃がんのリスクを高めるとされる「ヘリコバクター・ピロリ菌」という細菌の感染歴や除菌歴を聞くこともあります。その後、胃カメラやX線検査(バリウム検査)でより詳しく調べます。
Q. 胃カメラについて教えてください。
A. 口から内視鏡(小型カメラ)を挿入し、胃の粘膜を直接観察して、がんやそのほかの病変の有無を確認します。異常が見つかった場合は、その場で組織の一部を採取して、病理検査をおこないます。
Q. X線検査についてはいかがでしょうか?
A. バリウムという造影剤を飲んだ後、X線撮影をおこなう検査です。バリウムが胃の粘膜に付着すると、X線でその部分が白くうつることを利用して、胃の異常な部分を見つけることが目的です。検査台で体を上下左右に動かして胃の中のバリウムを移動させ、胃の変形などを見つけます。
Q. 様々な検査方法があるのですね。
A. ほかにも、胃がん検診の一環として、血液検査によってピロリ菌感染の有無と、胃の粘膜の萎縮度で胃がんのリスクを調べる「ABC検査」がおこなわれることもあります。
胃がん検診の流れや注意事項
Q. 胃がん検診は、どのような流れでおこなわれるのですか?
A. どの検査をするかによって異なりますが、最も一般的な胃カメラであれば事前に診察して、持病や常用薬、例えば抗血栓薬を使っているかどうかなどについて確認します。検査前日は、医療機関にもよりますが「20時までに食事を済ませておく」「検査当日は食事を摂らない」といった流れが一般的です。
Q. 検査自体の流れも教えてください。
A. 当院を例に挙げると、胃の中の泡を消す消泡剤を飲んでいただいた後に、のどの麻酔(ゼリー状の麻酔薬をのどにためます)をおこなってから胃カメラをします。恐怖感のある人などは、希望に応じて鎮静剤を使うこともできます。検査自体は5~10分で終わります。
Q. 検査後の注意事項などはありますか?
A. 検査後、1時間程度は麻酔が効いており、むせることがあるので飲食を控えていただいています。また、組織検査をおこなった場合は、2時間以上経過してからの食事をお願いしています。その後も2~3日は、アルコールや香辛料などの刺激物は控えるようお伝えしています。

山田 晃弘(横浜内科おなかクリニック)
新潟大学医学部卒業。その後、虎の門病院や国立国際医療研究センターなどで経験を積む。2018年より現職。一人ひとりに寄り添い、安心して受診できるクリニックを目指している。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本ヘリコバクター学会認定医。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
※記事内容は執筆時点のものです。
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