脳卒中を予防するために日常生活でできることは?早い段階で気づくポイントも解説

「認知機能×歩くコース」を選択中の方限定で、認知症に関するコラムをお送りします。
脳卒中は命に関わる疾患(病気)で、後遺症が残ると日常生活にも支障をきたします。脳卒中の発症には生活習慣が深く関わっているため、日常生活での注意点を知り、予防のためにできることを行いましょう。本記事では脳卒中に早い段階で気づくためのポイントも解説します。
脳卒中とは
脳卒中は、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れる脳出血、脳血管にできた瘤(こぶ)が破裂することなどで起こるくも膜下出血の総称です。
脳の血管に異常が生じることで、脳細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなり、さまざまな神経症状が出現します。
発症後の治療も重要ですが、予防でリスクを減らせる疾患であることから、適切な生活習慣の維持と管理が求められます1。
●脳卒中による症状
損傷を受けた脳の部位によって症状が異なります。代表的な症状を以下の表にまとめました。これらの障害は、日常生活に大きな影響を及ぼすため、早期発見と適切な治療、リハビリテーションが重要です。
脳卒中による症状
| 種類 | 症状 |
|---|---|
| 運動障害2 | ・体の片側の麻痺(顔、腕、足) ・姿勢を保てない |
| 嚥下障害2 | ・食事の際にむせやすい |
| 失語症・構音障害2 | ・言葉の理解ができない ・言葉が出てこない3、言葉を正常にはっきり発音できない4 |
| 高次脳機能障害2 | ・半側空間無視:片方の空間に注意が向かない ・記憶障害:人の名前や場所が思い出せない ・注意障害:注意力や集中力が低下する ・失行:病気の前までできていた動作ができなくなる |
(文献2〜4を参考に表を作成)
脳卒中予防のために注意すべき病気
脳卒中の予防には、生活習慣病の管理が重要です。
・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・不整脈(心房細動)
上記の病気は、脳卒中発症の危険因子であるため5、定期的な検診を受け、食生活などに注意しましょう。
喫煙や肥満は、生活習慣病のリスク因子となります5。
禁煙や減量に目を向けることも重要です。
生活習慣の改善と医療機関での適切な治療を組み合わせることで、脳卒中の予防効果が期待できます。
脳卒中予防のために日常生活でできること
生活習慣病の管理と定期的な健康チェック、適切な食事、継続的な運動が重要な予防策となります。
具体的には
・朝晩の血圧測定と記録
・EPAやDHAが豊富な魚料理の摂取
・1日60分以上の歩行運動
などがあります。
自身の健康状態に関心を持ち、定期的な検診を受けながら、食事や運動の改善に取り組むことで、脳卒中のリスクを低減できます。
●生活
食事面では塩分の摂取を減らし、野菜や果物を増やし、バランスの良い食事を摂るように心がけましょう。また、禁煙、節酒、適切な運動習慣を心がけましょう。
脳卒中のリスクとなる病気に自分自身が関心を持つこと、定期的な検診や人間ドッグなどでの検査が推奨されます。処方された薬がある場合は、正しく服用するようにしましょう。飲みにくい、飲み忘れた、薬を飲むと調子が悪くなるといった場合は薬剤師や医師に相談を検討してみてください6。
●食事
高血圧や糖尿病、脂質異常症の管理には食事が重要な役割を持ちます。
病気ごとに、食事の際の工夫について紹介しますので、ご家庭で取り入れられる対策をしてみましょう。
| 疾患の種類 | 食事の工夫 |
|---|---|
| 高血圧7 | ・1日の塩分の摂取量は6g未満を目標にする ・調味料をかけすぎないよう注意 ・野菜や果物を積極的にとる (糖尿病や腎臓の病気がある方は医師に相談) |
| 糖尿病 | ・食物繊維を多く含む食べ物をとる8 (野菜、穀物、きのこ、海藻など) ・カロリー制限する9 |
| 脂質異常症 | ・EPAやDHAが豊富な魚料理を積極的にとる ・オリーブオイル、えごま油、大豆油などを使用する ・コレステロールの多い食品に注意する (魚卵、マヨネーズ、レバーなど) |
(文献7〜9を参考に表を作成)
●運動
運動は生活習慣病の予防と管理において重要です。
身体活動・ 運動の量が多い方は、少ない方と比較して循環器病、2型糖尿病、がん、ロコモティブシン ドローム、うつ病、認知症等の発症・罹患リスクが低いことが報告されています10。
日常的な運動習慣を身に付けられるよう、できる範囲から始めてみましょう。
成人、高齢者における運動の目安を紹介します。
| 運動の目安 | |
|---|---|
| 成人11 | ・歩行または同等以上の運動を1日60分以上行う(1日約8,000歩以上に相当) ・息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行う ・筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨する ・座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する |
| 高齢者12 | ・歩行または同等以上の運動を1日40分以上行う(1日約6,000歩以上に相当) ・筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動を週3日以上行う ・座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する ・身体機能が低下している高齢者については、安全に配慮し、転倒等に注意する |
(文献11、12を参考に表を作成)
脳卒中予防10か条
日本脳卒中協会が脳卒中予防の知識を普及するために「脳卒中予防十か条」を作成しています13。
危険因子を知ること、危険因子を減らすための生活習慣の工夫、発症時の対応を10個に集約したものです。
いつ起こるかわからない脳卒中に対して、注意が必要な病気の把握や、対策を意識するのに役立てるとよいでしょう。
脳卒中予防十か条
| 1 | 手始めに 高血圧から 治しましょう |
| 2 | 糖尿病 放っておいたら 悔い残る |
| 3 | 不整脈 見つかり次第 すぐ受診 |
| 4 | 予防には たばこを止める 意志を持て |
| 5 | アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒 |
| 6 | 高すぎる コレステロールも 見逃すな |
| 7 | お食事の 塩分・脂肪 控えめに |
| 8 | 体力に 合った運動 続けよう |
| 9 | 万病の 引き金になる 太り過ぎ |
| 10 | 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ |
(文献13より許可を得て掲載)
脳卒中を早期発見するために必要なこと
脳卒中の早期発見には、FASTと呼ばれる判断基準を用いましょう。顔・腕・言葉に突然の異変が現れた場合、脳卒中を疑い、早急に救急車を呼びましょう。
FASTに加えて、脳卒中の5大症状も覚えておきましょう6。いずれも「突然」起こります。いつもと違う、様子がおかしいと思ったら、ためらわずに救急車を呼んでください。
脳卒中5大症状
・片方の目が見えない、 物が2つに見える、 視野の半分が欠ける
・経験したことのない 激しい頭痛がする
・力はあるのに立てない、 歩けない、 フラフラする
・ろれつが回らない、 言葉が出ない、 他人の言うことが 理解できない
・片方の手足・顔半分の 麻痺・しびれが起こる
(顔のみ、手のみ、 足のみの場合もある)
脳卒中予防のために血液サラサラの薬を飲むことはある?
非弁膜症性の心房細動があり、脳卒中のリスクが高い場合に血液サラサラの薬(抗凝固薬)を予防的に服用することがあります6。
血の塊ができるのを予防し、脳梗塞の発症リスクを減らすためです。
ただし、抗凝固薬の使用には出血のリスクも伴うため、医師による定期的な経過観察が必要です。
服用開始前には、出血リスクの評価や、他の服用中の薬との相互作用の確認を行います。
歯科治療や手術の際には、薬の中断が必要な場合もあり、事前に主治医へ「血液サラサラの薬を飲んでいる」と伝えるようにしましょう。
まとめ
非弁膜症性の心房細動があり、脳卒中のリスクが高い場合に血液サラサラの薬(抗凝固薬)を予防的に服用することがあります6。
血の塊ができるのを予防し、脳梗塞の発症リスクを減らすためです。
ただし、抗凝固薬の使用には出血のリスクも伴うため、医師による定期的な経過観察が必要です。
服用開始前には、出血リスクの評価や、他の服用中の薬との相互作用の確認を行います。
歯科治療や手術の際には、薬の中断が必要な場合もあり、事前に主治医へ「血液サラサラの薬を飲んでいる」と伝えるようにしましょう。
(参考文献)
1, 厚生労働省:脳血管障害・脳卒中. 生活習慣病などの情報.
[https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-05-006](最終閲覧日:2026年3月2日)
2, 日本脳卒中学会亜急性期以後のリハビリテーション診療. 脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]. 協和企画. 2023. p252-91.
3,厚生労働省:意思疎通支援
[https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sanka/shien.html](最終閲覧日:2025年2月12日)
4, MSDマニュアル家庭版:構音障害.
[https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%84%B3%E3%81%AE%E6%A9%9F%E8%83%BD%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E6%A7%8B%E9%9F%B3%E9%9A%9C%E5%AE%B3](最終閲覧日:2025年2月12日)
5, 日本脳卒中学会:脳卒中一般. 脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]. 協和企画. 2023. p2-56.
6,日本脳卒中協会:脳卒中の予防・発症時の対応.
[https://www.jsts.gr.jp/common/asset/pdf/onset.pdf](最終閲覧日:2025年2月12日)
7, 日本高血圧学会:第4章生活習慣の修正. 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版. 2019. p64-75.
8, 日本高血圧学会:第3章高血圧の管理および治療の基本方針. 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版. 2019. p64-75.
9, 日本糖尿病学会:3章食事療法. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂. 2024. p37-66.
10, 厚生労働省:はじめに. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2023. p1.
11, 厚生労働省:成人版.健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2023. p9-10.
12, 厚生労働省:高齢者版.健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2023. p13-4.
13, 公益社団法人日本脳卒中協会:脳卒中予防十か条.
[https://www.jsa-web.org/citizen/85.html](最終閲覧日:2025年2月12日)
赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック
東京脳ドック 院長
伊藤 たえ
引用:認知症ポータルサイト「テヲトル」より
※記事内容は執筆時点のものです。
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