記憶力と食事の関係性を管理栄養士が解説 脳にいい食材を併せて紹介


記憶力と食事の関係性を管理栄養士が解説 脳にいい食材を併せて紹介

皆さんは、日常で集中力が続かない、頭がぼーっとして上手く働かず、仕事や勉強がはかどらないなどの経験はありませんか? もしかするとそれは食事に原因があるのかもしれません。

脳と食事の関係性

Q. 記憶力の低下と食事は関係しているのでしょうか?

A. 記憶力と食事は密接に関係していると言えるでしょう。脳に必要なエネルギー量は人間の1日に必要なエネルギー量の約20%を占めています。ですが、脳の重さは平均1200〜1500g、全体重の2〜2.5%ほどの小さい臓器です。その事から分かる通り、脳はものすごくエネルギーを消費する臓器です。

Q. 脳の分のエネルギーを食事から摂取する必要があるということですね。

A. その通りです。脳がエネルギー不足になってしまうと脳機能は低下し、その結果記憶力の低下にも繋がってしまいます。その他、集中力・やる気の低下なども引き起こします。また、脳は腸とも密接な関係があり、お互いに影響を及ぼし合っています。これを「腸脳相関」と言います。

Q. ストレスを感じるとお腹が痛くなるのも腸脳相関が原因でしょうか?

A. そうですね。腸内環境を良くする事が、脳の健康に直接影響を与え、結果記憶力向上にも繋がります。腸内環境は食事で大きく改善できるので、そういった面からでも、食事が大事だと言えるでしょう。

脳のエネルギーと摂取方法

Q. 脳に必要なエネルギーとはどういったものでしょう?

A. 脳は主にブドウ糖をエネルギー源とし、機能しています。ブドウ糖は炭水化物などの糖質を分解して作られます。その他、脳機能を活性化するにはビタミン・ミネラル類などの栄養素や抗酸化物質などが必要不可欠です。

Q. これらの栄養素を摂取する際の注意点を教えてください。

A. 抗酸化物質は体内で作り出される量が年齢に伴い徐々に低下していきますので、食事から積極的に補うようにしましょう。最近の研究結果ではケトン体も脳のエネルギー源となる事が分かりました。ケトン体とは脂肪や筋肉を分解し、肝臓で生成されるエネルギー源の事です。

Q. 脳にエネルギーを送るためにはどういった摂取方法が良いのでしょう?

A. 脳が疲労を感じた時に食事を摂ることをおすすめします。特に朝起きた時、脳は飢餓状態なので朝食は欠かさず食べましょう。

記憶力低下の改善に効果のある食材

Q. では、どういった食材が脳機能の向上に役立つのか教えてください。

A. これから説明する食材は脳が活性化する栄養素や抗酸化物質が豊富に含まれています。積極的に摂取しましょう。まずはバナナですね。バナナは脳のエネルギー補給の代表になる食材です。体内に取り込んだ食材は消化吸収に時間がかかりますが、バナナには自身で分解する力(酵素)があるため、エネルギー補給に即効性があります。そのため、スポーツ選手や受験生など瞬時にパワーを発揮したい時などに摂取するのがおすすめです。

Q. なるほど。食事のメインになるような食材では何がおすすめですか?

A. 鮭やサバ、牡蠣などの魚介類ですね。魚に含まれるDHAやEPAなどの良質な魚油はオメガ3系脂肪酸と言われ、記憶に関わる脳神経を活性化させる働きがあります。また、DHAは脳に多く存在している栄養素の一つです。これらは体内で生成されないため、食事からの摂取で補う必要があります。また、牡蠣などに多く含まれる亜鉛は脳の記憶に関わる海馬に多く存在します。亜鉛が欠乏すると記憶障害を引き起こす原因となります。

Q. ほかにもあれば教えてください。

A. 豚肉ビタミンB群を豊富に含んだ食材です。ビタミンB群は神経伝達物質を作る働きがあります。また、糖質をエネルギーに変換するサポートをしてくれるため、炭水化物と一緒に摂取するのがおすすめです。また、卵黄に含まれる卵黄レシチンは脳機能をサポートする役割のあるフォスファジルコリンが多く含まれています。その他、レシチンに含まれるコリンは、記憶能力の向上・維持に不可欠なアセチルコリンの原料であり、脳機能を維持するには欠かせない成分です。

Q. 朝食時におすすめの食材はありますか?

A. ヨーグルトなどの乳製品・納豆などの発酵食品はいかがでしょうか。乳製品や発酵食品にはビフィズス菌や乳酸菌などの腸内に好影響を与える腸内細菌が多く含まれています。また、ブルーベリーに含まれるフラボノイドは記憶を司る海馬に関わるタンパク質を活性化させる働きがあります。その他、他の果物と比べて抗酸化物質が多い食材です。冷凍するとより効果が高まります。他にも脳の機能を助けてくれるビタミン類やミネラルも豊富です。

Q. 野菜についてはいかがでしょう?

A. おすすめはほうれん草トマトです。ほうれん草に多く含まれている葉酸は、脳にダメージを与えるホモシステインを分解・減少させる効果があります。葉酸はビタミンB群の一種で、水に溶けやすい水溶性ビタミンです。スープなど水分ごと摂取できる調理方法がおすすめです。トマトに多く含まれているリコピンはカロテンの2倍・ビタミンEの100倍抗酸化力があると言われています。酸素消費量が多い脳は、酸化しやすい臓器とも言えます。酸化は脳の老化促進に繋がるため、抗酸化物質多いリコピンで酸化を抑えてあげましょう。

Q. おやつで記憶力向上に効果的なものはありますか?

A. チョコレートを摂取すると、脳由来神経栄養因子(BDNF)の血中濃度の上昇が期待されます。BDNFは神経細胞を再生・成長を手助けする物質です。アルツハイマー型認知症の予防にも効果があり、記憶を司る海馬にも多く存在しています。チョコレートを摂取すると学習能力の向上が期待されるという実験結果も報告されています。


濱川 絢(管理栄養士)

大阪成蹊短期大学栄養学科卒業。卒業後、栄養士として委託給食会社・料理教室アシスタント・学生向け食堂などで勤務。栄養士として献立作成やイベント・食育と幅広く活動し、現在はライターとして視野を広げ、栄養に関する知識を多くの方に伝えるべく執筆活動中。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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