認知症介護のポイントを教えて! 介護方法によっては認知症が進行するって本当?


認知症介護のポイントを教えて! 介護方法によっては認知症が進行するって本当?

日本では高齢化が進み、それとともに認知症の患者数も増加し続けています。今回は、認知症介護の基礎的な知識や注意すべきポイント、介護サービス利用について介護福祉士に詳しく伺いました。

過剰な介護は認知症を進行させる

Q. 認知症の方に対してはどのような介護が必要なのでしょうか?

A.認知症」といっても症状は人それぞれで、ほとんど介助の必要がない方から寝たきりの状態の方まで様々です。症状の進行にともない、介護をする回数や内容が増えていくのが特徴です。初期段階では物忘れが増え、料理など得意だったことが上手くできないなど、困りごとに対して手助けや助言が必要になってきます。症状の進行とともに、トイレや入浴、食事などの日常生活でもできないことが増え、介助が必要な場面が増えてきます。抑うつや妄想など精神的な症状に対してサポートが必要な場合もあるでしょう。体がうまく動かせなくなると、ベッドへの移動やオムツの介助など、介護者の身体的負担の大きい介護が主になってきます。

Q. 認知症の方の介護をするうえで、注意すべきポイントはありますか?

A. 認知症介護では、必要以上に手厚い介助は認知症の進行につながる可能性があるので注意しましょう。例えば、着替えはできても服の準備が難しい場合、着替えまで介助する必要はありません。すべての工程を手伝ってしまいがちですが、助けすぎる行為は「過介助」と呼ばれ、今できる能力を低下させてしまう危険性があります。この過剰介護が積み重なると自力で考えて行動する機会を奪ってしまい、結果として認知症の進行につながってしまうのです。

Q. では、どこまで介助すればいいのでしょうか?

A. 認知症介護では、要介護者の困りごとや辛い部分に寄り添って一緒に解決するというのが基本姿勢です。一方的に「助ける」ではなく、「一緒に行動する」ことを重視してください。どこが難しく何ができるのかを、一緒に確認しながら介助をするといいでしょう。このような認知症に対しての基礎的な知識を持つことは、適切な対応をするうえでとても大切です。

適切な認知症介護のためには知識も必要

Q. 他に適切な介護をするために必要な事はありますか?

A. 認知症介護はかかりつけ医との連携が不可欠で、定期的に診断を受けることが適切な介護を行うためには必要です。また、「認知症」とはあくまで症状の名称で、原因となる病気にはいくつか種類があります。それぞれの病気には特徴があり、あらわれやすい症状も異なるので、そのような知識も必要です。

Q. 病気の種類について、もう少し詳しく教えてください。

A. 認知症の原因となる、もっとも多い病気は「アルツハイマー病」です。最近の記憶に障害があらわれやすく、昔の思い出などは保たれやすい特徴があります。進行とともに、昔の記憶にも障害があらわれ、生活動作も難しくなってきます。次いで多いとされる「レビー小体型認知症」では、存在しないものが見える幻視やパーキンソン症状による筋肉のこわばりと無表情などが特徴的です。また、「脳血管性認知症」は脳卒中などの脳血管疾患が原因で起こり、記憶の保たれ方が部分的な「まだら認知症」や体の麻痺、言葉の障害などの後遺症が残る可能性があります。このような知識を身につけておくことで、病院の受診時に説明内容の理解がしやすくなり、適切な対応も可能になります。

Q. 本やネットの情報以外で、認知症について学ぶ方法はありますか?

A. 最近では「認知症カフェ」と呼ばれる交流や介護相談を目的とした場が、病院や自治体などの様々な機関に設けられています。知見を広げるだけではなく、介護福祉士や看護師、理学療法士などの専門家からアドバイスを受けることができますので利用してみるのもおすすめです。

介護者に余裕がなければ共倒れになる

Q. 介護の中でも認知症介護は、家族への負担が大きいのでしょうか?

A. 認知症の症状が進行し日常生活全般を介助することになると、状態によっては要介護者の体を抱える場面も多いため、身体的な負担だけでも大きいでしょう。夜中に対応が必要な場合、睡眠も十分に確保できないなど、身体的、精神的な負担は不安やストレスを強めることになります。ニュースなどでも「介護疲れ」という言葉が使われるほど、家族への負担は大きいものがあるのです。介護者の心身に余裕がないと不適切な対応も増えてしまいます。それによって症状の進行を招き、より負担が大きくなるという悪循環が起こることで、最終的には共倒れという危険性もあるのです。

Q. そういう時は、介護サービスを利用した方がいいのでしょうか?

A. 介護者の心身の負担が減り、介護福祉士から介護を学ぶ機会にもなりますので、積極的に利用した方がいいでしょう。代表的なサービスは、訪問介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、入所施設であればグループホームなどです。かかる費用については、介護保険サービスは1~3割の自己負担、高額になった場合は状況に応じて払い戻しを受けられます。利用するには、市町村に要介護認定の申請を行い、居宅介護支援事業所(ケアマネージャ)に相談してサービス内容をまとめたケアプランを作成してもらう必要があります。ケアプラン作成までは無料なので、不安のある方は相談だけでもしてみることをおすすめします。

Q. 認知症の家族を支えるためにまわりが協力できることはありますか?

A. 要介護者に寄りそう姿勢で、まずは認知症を正しく理解しておくことが大切です。そして、誰か一人に介護の負担が集中することは避けましょう。適切な対応をするためには、家族で分担して一人ひとりにゆとりがなければなりません。しっかりと支えるためには、介護者自身の体調管理も重要なのです。


大久保 圭祐(作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員)

総合病院に6年間勤務し、脳神経外科や整形外科のリハビリテーションを中心に、急性期・回復期・慢性期の全ての時期を経験。その後、介護支援専門員の資格を取得して家族と共に介護事業を設立し、居宅支援事業所と訪問介護事業をスタート。代表取締役であると同時に、現場では機能訓練指導員・介護職・ケアマネージャーを勤めプレイングマネージャーとして活躍。現在は、経営業務をメインに記事の監修やライターとしても活動中。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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