認知症の予防方法について詳しく教えて!
年齢を重ねるにつれて、認知症が発症する確率が上がってきます。できることなら、今のうちから予防しておきたいですよね。はたして、今からでも実践できる認知症の予防方法はあるのでしょうか。
「物忘れ=認知症」とは限らない
Q. 最近よく人の名前を忘れてしまいます……。これって認知症ですか?
A. 「物忘れが増える=認知症」と思っている人は多いと思いますが、物忘れが増えたから認知症と診断されるのではありません。生活のしづらさが出てきたり、身の回りのことを行うことが難しくなったりするといった生活状況や、脳検査、血液検査の結果などをもとに認知症と診断されます。
Q. では、歳を取ると認知症になるのですか?
A. 加齢に伴って起こるイメージがあるかもしれません。しかし、「アルツハイマー病」や脳卒中で起こる「脳血管性認知症」、多量飲酒で起こる「アルコール性認知症」などの元となる病気が原因で、認知症の症状が出ることも多くあります。また、脳卒中は高血圧、脂質異常症、糖尿病などが要因で起こります。
Q. 将来、認知症にならないか心配です。
A. 元となる病気にならない「身体作り」、「生活作り」が一番の予防方法となります。予防の視点は大切ですし、認知症の予防自体が元気に過ごすことにつながるので、ぜひ実践していただきたいです。物忘れが増えたことをすぐに恐れることはありません。
認知症の予防は「身体作り」と「生活作り」がカギ
Q. 具体的には、何をすればいいのですか?
A. 身体作りと生活作りの2つの生活習慣を視点に考えます。まず、身体作りの基本となるのは、バランスのよい食事と十分な睡眠です。食事は青魚や大豆、ビタミン、良質な油などをバランスよく食べることが大切です。睡眠に関しては人によって体質もありますが、最低でも6時間以上の睡眠時間を推奨している研究結果が多いようです。
Q. 運動についてはどうでしょうか?
A. 適度な有酸素運動で脳血流量が向上し、脳機能自体が活性化することで、認知症の予防となる効果が期待できます。また近年、認知課題と運動を2課題同時に行う「コグニサイズ」と呼ばれる方法はより効果が高いという研究結果が出ています。運動の強度は軽く息がはずむ程度とされています。例えば、街中にある青色のものを探しながらウォーキングする、数を数えながら階段を登るなどの方法が考えられます。特に運動が苦手な人も、例に挙げたような仕事や買い物に行きながら実施できる方法でしたら、取り入れやすいと思います。
Q. 生活作りとは、どういうことでしょうか?
A. 具体的には、人とのつながりや何らかの役割を担うことです。ここで言う人とのつながりとは、仕事、趣味仲間や地域の活動への参加などが挙げられます。社会的なつながりが多いと認知症リスクが46%低下するという研究結果があります。また、外に出向くことが苦手な人は、ご家族との交流も1つの方法と考えられています。こうして人との交流を持つことで、部下を教える人、幹事をサポートする人、家族の為に料理を作る人などといった、何かしらの役割が発生します。この役割を持って動くこと自体が、考えて能動的に動くことになり、脳機能の活性化や身体作りにもつながります。これが生活作りです。
ライフイベントのタイミングで生活習慣の見直しを
Q. ほかに、予防でできることはありますか?
A. もう1つは、好きなことをやり続ける工夫をすることです。認知症の方の中には、うつの傾向が見受けられる人もいらっしゃいます。好きなことは心理的にも穏やかになりますし、認知症とならずとも高齢となった際に、自分らしく過ごす手立てとなります。そのために今できることは、「自身が好きなことを知ること」や「手段を増やしておくこと」です。
Q. 特に好きなことが思い浮かばない場合はどうすればいいでしょうか?
A. もし好きなことがはっきりとしていない人がいらっしゃいましたら、これを機に自身が好きなことは何かを振り返る機会を作ってみてください。自身について深掘っていくことで、人と話すことが好き、身体を動かすことが好き、食べることが好き、料理が好きなど、自身の好みに気が付くと思います。手段に関しては、近年IT化が進んでいるので、インターネットを活用するのも手です。新しい情報を得たりSNSで発信したりすることで、新しい人との交流も生まれます。
Q. 認知症予防には生活習慣が大切なのですね。
A. そうですね。生活、役割、楽しみのバランスが崩れるタイミングで、一度見直してみるといいと思います。また、けがや病気はもちろんのこと、退職や子育ての区切り、ペットやパートナーとの死別などのライフイベントがあった際も生活習慣は崩れやすいです。今までの生活と身体の調子、役割や生活環境が変わったら、再度、生活習慣と向き合ってみましょう。
Q. なるほど。たしかに、大きなイベントが起きたときはリズムが変わりますね。
A. そこがまさしく見直しのタイミングです。ライフイベントの渦中にいると、気持ちが沈んでいたり目の前のことに目一杯になったり、考える余裕がない場合もあります。落ち着いた時に「少し生活を見直してみようかな」と振り返ることができたら十分です。逆にライフイベントの渦中は生活習慣が崩れやすいため、より食事や睡眠をしっかりする意識を持つことが重要と言えるでしょう。いずれ、生活習慣の見直しが認知症の予防へとつながっていきます。
石原 綾乃(作業療法士・介護支援専門員)
東京都立保健科学大学卒業。リハビリテーション病院や大学病院の非常勤勤務にて、主に脳血管疾患、整形外科疾患、難病の方に対するリハビリテーションに従事。その後、医療介護分野のIT企業の一般職に転職。現在、リハビリテーションを通して一人ひとりの人生に寄り添いたいという考えから、訪問看護ステーションに在籍。病気や障害に限らず、ライフバランスが崩れたり、生活のしづらさを感じたりしている方に対して、1歩を踏み出す準備や後押しのサポートをしている。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
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