将来の「認知症リスク」がわかる血液検査とは?
とくに初期段階での自覚が難しいとされる認知症。しかし、ある種の血液検査を用いれば、潜在的な進行度合いが数値で確認でき、改善も望める可能性があるとのこと。健康なうちから始められる認知症の予防方法について解説します。
あるタンパク質の量が認知症のインジケーター
Q. 認知症のリスクが血液検査でわかるのですか?
A. ある程度予測できます。認知症のうち約半数を占める「アルツハイマー型認知症」には、特殊なタンパク質が関わっています。このタンパク質の量は血液検査で測定できますから、リスク判定が可能なのです。正確に言うなら、認知症に至る前の「MCI(軽度認知障害)」のリスクを判定しています。検査の名称も「MCI検査」と呼んでいます。
Q. より早い段階での対策が打てるわけですね?
A. そういうことです。「MCI」のリスクを低い順にAからDの4段階で評価し、「MCI」を遠ざける対策ができます。もし、CやDといったハイリスクであれば、ローリスクなAやBを目指します。
Q. リスク自体が下げられるのですか?
A. 食事内容や運動に気をつけることで、一定の効果が出ています。タンパク質の量という「数値」は目に見えるわけですから、実感できる予防法といえるでしょう。
認知症予防は、アミロイドβタンパク質をため込まないこと
Q. MCIリスクを下げる具体的な方法について教えてください。
A. 化学合成された食べ物と認知症との関係は証明されていますので、とにかく、「自然な物を食べること」。ほかには、「糖分や塩分の過度な摂取を避けること」、「栄養バランスの良い食事内容に気をつけること」。大きな方向性としては、そんなところです。
Q. 体に悪い食べ物は、どう“悪い”のでしょう?
A. 悪い食べ物というのは、化学合成されたものを多く摂取することで、活性酸素が体内にたまり、血液の循環は悪くなり、さらに免疫力が下がり、先ほどの特殊なタンパク質を、より抱え込んでしまいかねないのです。正式には「アミロイドβタンパク質」というのですが、このタンパク質が脳神経細胞を傷つけたり死滅させたりします。
MCIを遠ざけておけば、認知症にもかからない
Q. ちなみにMCIとは、どのような状態を指すのでしょう?
A. 注意力や集中力の低下などが見られるものの、「認知症」との診断までには至らない状態のことです。わかりやすく言えば、健常と認知症の境目ですね。日常生活に差し障りがないため、自覚を難しくさせています。
Q. MCIの症状を教えてください。
A. 記憶障害、注意力や集中力の低下、物事を計画立てておこなえなくなる実行機能障害などでしょうか。具体的には、自宅の電話番号が思い出せない、やりかけたことが続かない、料理の手順がバラバラになるなどです。
Q. 日常生活に差し障りが「ありそう」に思えます。
A. だからこそ、MCIにならないための工夫が求められるわけです。「なりはじめ、かかりはじめ」で気づいたところで、予防とは呼べませんよね。「ならない、かからない」ためにはどうしたらいいのか。その答えが「MCI検査」とその対策だと考えています。
Q. MCI検査は、「物忘れ外来」などに行けば受けられるのでしょうか?
A. そうとも限りません。「物忘れ外来」はどちらかというと、認知症やMCIになった方が受診する医療機関です。受診先を探すとしたら、「MCI検査」や「MCI血液検査」といったキーワードと地名で検索してみてはいかがでしょうか。
Q. 最後に、MCI検査の費用を教えてください。
A. 当院の場合で、税込2.2万円となっています。40歳を超えたら、“元気なうちに”MCI検査を受けてみてはいかがでしょうか。ご自身の状況を数値で把握できれば、その対策に、励みや強い目的意識が生まれると思います。
古田 一徳(メディカルブランチ表参道 院長)
北里大学医学部卒業、同外科入局。その後も北里大学外科を中心とした外科勤務やドイツ留学などで診療経験を積む。2010年には、川崎市麻生区に「ふるたクリニック」開院。2013年、港区北青山に「メディカルブランチ表参道」開院。2016年、法人化に伴い理事長へ就任。日本肝臓学会専門医、日本肝胆膵外科学会名誉指導医、ほか資格多数。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
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