膝の痛み… 放置せずすぐ受診すべき症状とは? 放っておくと歩行困難になる恐れも!?


膝の痛み… 放置せずすぐ受診すべき症状とは? 放っておくと歩行困難になる恐れも!?

膝の痛みを「歳のせい」と考えて、放置してしまっている人はいませんか? 実は、膝の痛みを放置すると、やがては歩行困難になることもあるようです。

膝の痛みの原因は?

Q. 加齢とともに、膝に痛みを感じている人が多いと思います。なぜですか?

A. 膝は歩行時、平地で体重の3~4倍、階段昇降で6~7倍の負担がかかるため、軟骨が次第に擦り減ってしまいます。そのため、若い頃には何の痛みを感じていなくても、加齢とともに痛みを覚える人が増えてきます。特に、加齢に伴って多くの人が発症するのが「半月板損傷」です。また、半月板損傷が進行したことなどが原因となり、「変形性膝関節症」を発症する方はとても多くいらっしゃいます。

Q. 変形性膝関節症はどんなものですか?

A. 変形性膝関節症も関節においてクッションの役割を果たしている軟骨が加齢とともにすり減り、痛みが生じる病気です。まずは、半月板やクッション(軟骨)がすり減り、炎症が起きて痛みが生じるようになります。炎症により膝関節の縁に骨の棘のようなものができ、最終的には骨同士が直接ぶつかり合うようになって、関節がさらに変形してきます。

Q. 何歳くらいから発症することが多いのですか?

A. 一般的に変形性膝関節症は40代くらいから発症する人が増え始めるとされていますが、スポーツや交通事故などで10~20代に膝関節の怪我をした方は30代前後から発症する場合も少なくありません。男女比を見ると、男性より女性の方が多く発症しています。これには、加齢に伴い女性ホルモンが減少することが関係していると考えられています。

Q. なぜ、女性ホルモンが減少すると変形性膝関節症を発症しやすくなるのですか?

A. 女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、筋肉や骨、軟骨を健康に保つ働きを担っています。しかし、更年期になるとエストロゲンの分泌量が減少し、軟骨が摩耗するスピードも速くなります。そのため男性より女性の方が、変形性膝関節症になりやすいとされています。

変形性膝関節症を放置することのリスク

Q. 変形性膝関節症を放置すると、どのようなリスクがあるのですか?

A. 変形性膝関節症の症状は初期から末期まで分類されます。変形性膝関節症初期では立ち上がりや歩き始めなど、何か動作をするときに違和感や軽い痛みを感じるようになります。しかし、休めば痛みがなくなるのでこの頃はまだ病気を自覚していない人も少なくありません。変形性膝関節症中期になると正座をしたり、階段を昇り降りしたりするのが困難になってきます。ただし、個人差が大きく、変形性膝関節症初期でもひどい痛みを感じる人もいます。

Q. さらに進行するとどうなるのですか?

A. 変形性膝関節症が進行していくと膝の変形が目立つようになり、膝がまっすぐ伸ばせず、歩行が困難になることもあります。また、「平地を歩くのも痛い」「O脚またはX脚になる」「膝が腫れる」「歩行時に片足をひきずってしまう」「ゆっくりしか歩けない」といった症状が見られることもあります。

Q. O脚やX脚になることもあるのですね。

A. 日本人は遺伝的にO脚の方が多く、O脚の方は変形性膝関節症が進行していくと膝の内側にある軟骨がすり減ってしまい、よりO脚が進んでしまいます。逆に、欧米人はX脚になりやすいのですが、日本人も少ないとはいえX脚で外側の軟骨が擦り減ってしまう方もいます。

Q. 変形性膝関節症はどうやって診断するのですか?

A. 「普段痛みが出る部位、膝を押して痛みがないか」「関節の可動域」「腫れの有無」「O脚またはX脚の有無」などを触診によって調べます。また、X線(レントゲン)検査や超音波検査を行うほか、できる限りMRI検査を行うことで、軟骨や半月板、靱帯の損傷などがないか確認します。

Q. なぜ、MRI検査が必要なのですか?

A. X線検査や超音波検査だけでは、軟骨や半月板、靭帯などの傷み具合を正確に評価することが難しいため、MRI検査はできる限り撮ることをお勧めしています。

変形性膝関節症の治療と予防

Q. 変形性膝関節症はどのようにして治療するのですか?

A. 症状が軽い場合には痛み止めの内服薬を服用したり、湿布やクリーム、軟膏、ゲルなどの外用薬を活用して、炎症を抑えたりするのが一般的です。特に変形性関節症専用の湿布は非常に優れており、内服薬と同等の効果が期待できます。

Q. ほかにはどのような治療法がありますか?

A. 膝の関節内にヒアルロン酸を注射したり、痛みがひどい場合にはPRP(多血小板血漿)療法のような再生医療を行ったりすることもあります。また、理学療法士のリハビリテーションを受けて、筋力を向上させたり、関節の可動域や歩き方などを改善させたりすることもとても重要になってきます。

Q. それでも治らない場合にはどうするのですか?

A. それらの保存療法でも痛みなどの症状が改善できない場合には手術を検討します。手術には半月板や滑膜に対する「関節鏡手術」、骨を切ってO脚もしくはX脚を矯正する「骨切り術」や痛んだ関節を金属に置き替える「人工関節置換術」などがあります。

Q. 変形性膝関節症はどのようにして予防すれば良いのでしょうか?

A. もっとも気をつけなければならないのが肥満です。通常の歩行時では体重の数倍もの負荷が膝にかかるため、体重が重くなればなるほど、膝に対するストレスも増大します。そのため、標準体重を維持するように摂取エネルギーのコントロールを心がけましょう。

Q. そのほかには?

A. 膝に痛みがあると「痛いから動きたくない」と考えがちですが、そうなると膝を支える筋力が落ち、体重増加を招いてますます痛みが悪化するという悪循環に陥ってしまいます。そのため、積極的に運動することが大事。特に、太ももの前面にある大腿四頭筋を鍛えるトレーニングはとても重要です。

Q. そのほか、どのようなトレーニングをすれば良いでしょうか?

A. 関節の可動域を広げるストレッチや陸上でのウォーキングのほか、水中ウォーキングやジムの自転車こぎのマシーンによる有酸素運動は膝への負担が少ないためお勧めです。可能であれば週3回以上、1回1時間できると望ましいと思います。

Q. 食事と運動に気をつけることが大事なのですね。

A. 自分で運動を続けることも大事ですが、それ以上に重要なのが医療機関で理学療法士による運動リハビリテーションを行うことです。運動リハビリテーションでは筋力の向上や可動域の改善をめざすほか、正しい歩行のトレーニングや自宅で行う自主トレーニングの指導も行います。ぜひ、医療機関を選ぶ際には理学療法士によるリハビリテーションを行っている整形外科を選択しましょう。


渡邉 順哉(藤沢駅前順リハビリ整形外科)

2004年鎌倉学園高等学校卒、2011年東邦大学 医学部卒、横浜医療センター 初期臨床研修。2013年横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科、2014年神奈川県立汐見台病院(現・医療法人社団康心会 康心会汐見台病院)整形外科、2016年平成横浜病院 整形外科医長、2018年渡辺整形外科 副院長、2019年藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長。日本整形外科学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、認定運動器リハビリ・スポーツ・リウマチ医など。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
免責事項(Medical DOCサイトへ)

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