日本人は少し太るだけでも「糖尿病」になりやすいって本当? 欧米の食文化と比較


日本人は少し太るだけでも「糖尿病」になりやすいって本当? 欧米の食文化と比較

国が違うと、文化も異なるのは当然ですが、異なる地域や文化で根付いた食の習慣は、糖尿病管理にどのような影響を与えるのでしょうか?

糖尿病ってどんな病気?糖尿病専門医が解説

Q. 「糖尿病」とはどんな病気ですか?

A. 糖尿病は「インスリン」というホルモンの働きが不十分となり、ブドウ糖が適切に体内に取り込まれず、血糖値が上昇する病気です。インスリンはすい臓から出るホルモンであり、血糖を一定に保つ働きがあります。

Q. もう少し詳しく教えてください。

A. 私たちが摂った食事の栄養素の一部は、糖という形で腸から吸収されます。そこから血液の流れに乗って、全身のあらゆる臓器や組織へ送られます。血液中の糖が組織の細胞に取り込まれる時に必要なのがインスリンです。インスリンの力を借りて取り込まれた糖が、私たちが活動するためのエネルギー源となるのです。インスリンがうまく働かなければ、血中の糖がエネルギーになることはできません。

Q. どうしてインスリンが機能しなくなるのですか?

A. 原因は2つあります。1つめは「インスリン分泌低下」で、すい臓の機能低下により十分なインスリンを作れなくなってしまう状態です。そしてもう1つは「インスリン抵抗性」で、インスリンは分泌されているもののインスリンが臓器に対して作用しづらくなり、血糖を臓器に取り込むためにより多くのインスリンを必要とする状態です。後者は運動不足や食べ過ぎによる肥満、ストレスなどが要因と言われています。

糖尿病は治る?治療法も教えて!

Q. 率直に、糖尿病は治りますか?

A. 結論からいいますと、現状、糖尿病を完全に治すのは難しいですが、早期に発見し、適切な治療や生活改善などを続けていれば、糖尿病ではない方と同じように天寿を全うすることが可能と言われています。

Q. 早期発見するためにはどうしたら良いでしょうか?

A. 定期的に健康診断や人間ドックを受けること、そこで糖尿病を指摘されたら放置せず、できるだけ早めに専門医を受診して食生活の見直しや運動習慣づくりなど、生活習慣の改善に取り組むことです。早期であれば、生活習慣の改善によって血糖値が安定し、将来的な症状の出現を遅らせることができます。

Q. 糖尿病の治療について教えてください。

A. 糖尿病治療の基本は食事療法と運動療法ですが、それでも血糖コントロールが不十分な場合には飲み薬の使用を開始します。最も大切なのは食生活の見直し、そして減量です。英国の研究では、糖尿病と診断された40~69歳の867人のうち、追跡期間5年で257人(30%)に糖尿病の寛解が見られたのですが、10%以上の減量を達成していた人は、体重が変化していない人に比べて寛解に至る頻度が77%高いことが報告されいます。日本と英国では異なる点も多いと思いますが、注目すべきデータだと思います。

日本と海外では食事療法が異なるの? 糖尿病と食文化の関係性

Q. 日本と海外では、糖尿病を取り巻く現状は異なるのですか?

A. 欧米の糖尿病患者は肥満度を表すBMIが平均で30前後とかなりの肥満ですが、日本の糖尿病患者のBMIは平均25前後で、肥満の一歩手前くらいの人がたくさんいます。日本人は欧米人よりもインスリン分泌能が低く、日本人の糖尿病にはインスリン分泌低下が強く関与していると報告されています。日本人を含む東アジア人は、もともとインスリン分泌能が低いことから、加齢や肥満などによりインスリン感受性が低下すると、糖尿病を発症するリスクが上昇しやすいと考えられています。つまり、日本人はちょっと太っただけでも欧米人に比べて糖尿病になりやすいのです。

Q. 日本と欧米諸国では、食文化も異なりますしね。

A. 伝統的な日本食は、緑黄色野菜、大豆、魚介類、漬物、海藻、緑茶などを摂ることができるのが特徴で、健康増進に役立つ栄養素を多く摂取できます。日本人9万人を対象に日本食パターンと死亡リスクとの関連を調べたJPHC研究では、日本食のパターンのスコアの高いグループでは、循環器疾患や心疾患などによる死亡リスクが低い傾向があることがわかりました。これは、和食によって食物繊維、抗酸化物質、カロテノイド、エイコサペンタエン酸といった健康に有益な栄養素を摂取できるためだと考えられています。

Q. 日本食はカロリーも低いと言われています。

A. 主要国の食料供給カロリーの国際比較(FAOSTAT)によると、日本の供給カロリー量は、1日あたり2500kcal程度であるのに対して、欧米の主要先進国は3000~3900kcal程度とかなり高値でした。高カロリーな食生活の影響もあり日本と比べて肥満も非常に多いことがわかっています。20歳以上のBMIを国際比較した2016年のデータ(NCD-RisC)によると、日本で「肥満」とされるBMI25以上の割合がアメリカでは男女とも60〜70%と非常に高く、さらに日本では0.3〜0.4%しかいない「高度肥満(BMI35以上)」の割合も約15〜20%ととても多いのです。


乾 恵輔(乾小児科内科医院)

2006年日本医科大学を卒業後、日本医科大学付属病院、神栖済生会病院、博慈会記念総合病院、国立病院機構静岡医療センターなどで経験を積んだのち、2018年より乾小児科内科医院勤務。医学博士、日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会総合内科専門医。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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