くも膜下出血になったらどんな手術・治療をするかご存じですか? 死亡率は?
発症したら死亡率が高く、命を取り留めたとしても後遺症が残ることも多いくも膜下出血。もし発症した場合、どのような治療を受けるのでしょうか?
くも膜下出血とは?
Q. くも膜下出血とはなんですか?
A. 脳卒中の一種であり、脳を覆う膜の一種である「くも膜」と脳の間で出血が起こることをいいます。脳卒中にはほかにも脳梗塞、脳出血がありますが、くも膜下出血は脳に栄養を運ぶ太い血管から出血するため、脳卒中のなかで最も危険であり、生命の危険が高いとされています。
Q. くも膜下出血の死亡率はどれくらいですか?
A. さまざまな研究報告がなされていますが、くも膜下出血全体での死亡率は50%近くと報告されています。くも膜下出血は24時間以内に再出血を起こすことも多く、その都度、死亡率が高くなります。
Q. くも膜下出血が起こると、どのような症状が見られるのですか?
A. 代表的な症状は、これまで経験したことがないような頭痛です。人によっては「バットで殴られたような」と表現することもあります。ただし出血が少ない場合は頭痛の程度も軽く、吐き気やめまいなどを自覚する程度の場合もあります。反対に出血が多い場合はいきなり昏睡状態になることもあります。
くも膜下出血の急性期治療
Q. くも膜下出血を発症したら、どうしたら良いのでしょうか?
A. くも膜下出血が疑われる場合には、一刻も早く救急車を呼びましょう。くも膜下出血の原因の多くは、脳動脈瘤の破裂です。これが再度破裂すると死亡率が高くなりますから、まずは鎮痛薬や鎮静薬などを用いて安静にし、同時に、脳動脈瘤を見つけて再出血を予防することが大切です。
Q. 再度の破裂による再出血を防ぐにはどうするのですか?
A. くも膜下出血の治療は、手術が基本です。よほど全身状態が悪くない限り、手術が適応になります。
Q. どのような手術を行うのですか?
A. 大きく分けて、開頭手術と血管内手術があります。代表的な手術は「開頭クリッピング術」といい、左右どちらかのこめかみ部分から切開して頭蓋骨の一部を開き、動脈瘤の一部をチタン製のクリップで挟みます。こうすることで動脈瘤内に血流が流れ込むのを防ぎ、再破裂を予防するのです。
Q. ほかにはどのような手術がありますか?
A. 「血管内治療によるコイル塞栓術」といって開頭しないで行う手術もあります。これは専用のカテーテルを使って動脈瘤にコイルを詰める治療法です。「開頭クリッピング術」と同じく、動脈瘤の内部に血流が流れ込むのを防ぎます。頭を切開する必要がないので体の負担が少なく、高齢者でも受けられるというメリットがあります。
Q. 体に負担が少ないというのはいいですね。
A. はい、そのため現在では「血管内治療によるコイル塞栓術」が主流になっています。
くも膜下出血の再発予防は?
Q. 手術をしたら、脳動脈瘤が再破裂することはないのでしょうか?
A. 治療を行わなかった場合、1ヶ月以内に再破裂する確率は70%くらいといわれています。しかし、きちんと治療を行った場合には再破裂をほぼ防ぐことができます。
Q. 手術をしたら、もう脳動脈瘤ができることはないのですか?
A. いいえ、手術によって社会復帰できたとしても油断することはできません。一度、くも膜下出血に至った人は、再び脳動脈瘤が発生し、破裂することもあります。
Q. 予防するにはどうしたら良いのでしょうか?
A. 一度くも膜下出血を起こした人は、退院後も定期的に医療機関を受診し、CTやMRI検査を受ける必要があります。あわせて高血圧や喫煙の習慣はくも膜下出血の原因になりやすいため、日常的にそれらに注意するようにしましょう。
Q. 生活習慣に気をつけることも大切なのですね。
A. はい。それから大量の飲酒や生活習慣病にも気をつけましょう。また、くも膜下出血の発症には遺伝が関係しており、身内にくも膜下出血を発症した人がいる場合は、高い確率で発症することがわかっています。そのような場合は特に生活習慣に気をつけるようにしましょう。
上田 啓太(上田クリニック)
東邦大学医学部医学科卒業。その後、東邦大学医療センター 大森病院、東京蒲田医療センター、東邦大学医療センター佐倉病院などで脳神経外科医として勤務。2022年、神奈川県横浜市に位置する「上田クリニック」の院長に就任。難病指定医。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医・指導医、日本脳神経血管内治療学会専門医。日本頭痛学会、日本老年脳神経外科学会の各会員。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
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