「関節リウマチ」の初期症状や治療法は? 治療中でも妊娠・出産は可能?子どもに遺伝はする?【医師解説】
つらい痛みや腫れた関節と長く付き合っていくイメージがある「関節リウマチ」。しかし、最近は治療薬の進歩とともに症状を感じずに過ごせるようになる患者さんも多くなってきているそうです。関節リウマチの症状や治療法、治療中の妊娠や出産などについて解説します。
関節リウマチとは?
Q. まず、関節リウマチについて教えてください。
A. 関節リウマチは、自分の免疫が自分の手足の関節などを攻撃してしまう疾患です。本来、ウイルスや細菌などの異物が侵入した際に外敵から自分を守るために働く免疫が自分自身の関節を攻撃してしまうことで、関節症状をはじめとした様々な症状が表れます。関節の炎症が長く続くと、関節の構造が破壊され、関節の変形や痛みがずっと残ります。
Q. どのような症状が表れるのでしょうか?
A. 関節の腫れや痛み、動かしにくさが主な症状です。特に「朝方に手の指がこわばる」のが、リウマチの初期症状としてよくみられます。ほかにも、「ペットボトルの蓋を開けるときの指の痛み」や「タオルを絞るときなどの手首の痛み」もよくある症状です。また、リウマチは足にも症状が出ることもあります。具体的には、足の指の付け根や土踏まずの痛みを訴える患者さんがいらっしゃいます。
Q. 関節以外の症状には、どのようなものがありますか?
A. 疲れやすさや体重減少がよく起こります。また、稀に血管に炎症を起こし、発熱、皮膚症状、神経炎、血管の閉塞(梗塞)などを起こすこともあります。
関節リウマチの原因・治療法
Q. なぜ、関節リウマチになるのですか?
A. 関節リウマチが発症する原因は、現時点で明らかになっていません。ただ、いくつかの遺伝的要素が重なり、そこにウイルス感染、ストレス、喫煙などの環境による刺激が加わることで発症すると考えられています。
Q. 関節リウマチになった場合、どのように治療していくのですか?
A. これまで、関節リウマチは発症して10年以上経過してから関節が壊れていくと考えられていました。しかし近年の研究から、リウマチを発症して2年以内が最も急速に症状が進行するということがわかりました。そのため、発症から2年以内にしっかり治療することが、進行を遅らせるために非常に重要な時期と考えられています。この時期に治療をおこなえば、症状がほぼなくなった「寛解」状態に至る患者さんも多いですね。その一方で、関節が壊れてしまった後に治療をしても効果があまりないことも多いため、できるだけ関節リウマチを早期に発見し、早い時期から治療を始めて、腫れや痛みを抑えると同時に関節を破壊から守っていくことが重要です。
Q. 具体的な治療法についても教えてください。
A. 治療の基本は、自分自身を攻撃する免疫を抑える「免疫抑制薬の内服」になります。それでも関節症状が改善しない場合は「生物学的製剤の注射」など、次のステップの薬剤を使用して効果的に炎症を鎮めていきます。以前と比較して、現在は治療法の選択肢も多くなっているので、患者さん一人ひとりと相談しながらその患者さんに適した治療法を選択し、治療目標を一緒に決めます。そして、定期的に検査をしながら薬の効果や副作用の有無を確かめながら、治療を進めていきます。
関節リウマチの治療中でも妊娠、出産は可能? 遺伝する?
Q. 関節リウマチの治療中でも、妊娠や出産は可能ですか?
A. 現在では、妊娠中でも使用できる抗リウマチ薬もあり、関節リウマチの活動性を抑えつつ、無事に出産される患者さんも多くいらっしゃいます。関節リウマチの活動性がしっかり抑えられた状態(寛解状態)であれば、不妊症との関連性は低く、妊孕性(妊娠確率)に影響はないとされています。一方、活動性が高い状態では妊孕性の低下と、妊娠するまでの期間が長くなることが報告されています。妊娠を希望する患者さんは特に、普段の治療で関節リウマチをしっかりと抑えておくことが大切です。
Q. 子どもに遺伝しないか心配です。
A. 「関節リウマチ患者が家系に1人もいなかった場合、ある人が関節リウマチを発症する確率は0.5%であるのに対し、リウマチ患者の兄弟姉妹がリウマチを発症する割合は5%」というデータの報告があり、兄弟姉妹間ではある程度の遺伝的要因はあると考えられます。しかし一方で、「親から子へリウマチが遺伝する確率は10%以下」という報告もあり、例えば関節リウマチのお母さんが子どもを10人以上出産した場合、そのうちの1人がリウマチを発症するかしないかというくらいの確率となるため、それほど高い数字ではないことがわかります。つまり、母親がリウマチでも、その子どもはリウマチを発症しない確率の方が圧倒的に高いのです。ただし、一般集団と比べるとリウマチを発症する確率は高いため、「発症するリスクはある」と普段から意識し、気になる症状があれば早めに受診することが大事です。そうして実際に早期発見・早期治療をすることで、日常生活に支障が出るのを避けられたという患者さんもたくさんいらっしゃいます。
Q. 関節リウマチの人が妊娠・出産する際の注意点はありますか?
A. 大切なのは、妊娠前にリウマチの活動性をしっかり抑えておくことです。先述したとおり、関節リウマチの疾患活動性が高い状態では妊娠しにくいと言われており、仮に妊娠したとしてもその後、低出生体重児や妊娠高血圧症などの合併症が多いとされています。
Q. 妊娠のタイミングはいつが好ましいですか?
A. 関節リウマチ患者さんが妊娠を希望される際は、まずリウマチを寛解状態にしてからの妊娠計画をおすすめします。また、妊娠前の病状によっては、妊娠中のリウマチの病状や妊娠合併症の有無についてリウマチ科医と産婦人科医、外科医、整形外科医などが連携し、様々な立場から情報提供しながら妊娠を継続することが望ましいとされています。関節リウマチの治療薬の中でも使用されることが最も多い「メトトレキサート」は、流産や奇形児のリスクになるので、妊娠を希望する場合は薬剤の変更を考慮します。そのため、月経周期まで勘案した妊娠計画の立案を、患者さんと相談しながらおこなうといった対応が重要です。
上野 智敏(板橋腎・リウマチ隼聖クリニック)
鹿児島大学医学部医学科卒業。筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。その後、飯塚病院、虎の門病院、複数の医療機関で経験を積む。2023年、東京都板橋区に「板橋腎・リウマチ隼聖クリニック」を開院。医学博士。日本内科学会認定総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本透析医学会専門医、日本高血圧学会専門医。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
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