「要介護認定の基準」をご存知ですか? どんな人が受けられるか介護福祉士が解説
身近な人に介護が必要になったとき、身体面や経済面で不安な気持ちになる方も多いと思います。介護が必要になったときは、要介護認定を受ければサービスを利用でき、負担を軽減できます。今回は、要介護認定の対象になる人や申請方法について解説します。
要介護認定とは? 対象となる人・基準について
Q. はじめに、要介護認定について教えてください。
A. 要介護認定は、介護保険のサービスを利用するときに必要な認定です。要介護度によって、対象者がどの程度の介護を必要としているかの目安がわかります。
Q. どのような人が要介護認定の対象になるのでしょう?
A. 要介護認定の対象は65歳以上の方です。65歳になると市区町村から介護保険被保険者証(介護保険証)が届きます。介護保険証だけでは介護サービスが利用できないので、介護認定を受けたあと利用したいサービスに申し込む流れです。なお、40~64歳の方も、介護保険の対象となる特定疾病と診断されたときは認定の対象になります。
Q. 特定疾病とはどんな病気ですか?
A. 特定疾病は、老化を原因とする16種類の病気が指定されています。具体的には、末期がん・関節リウマチ・骨折を伴う骨粗しょう症・認知症・脳血管疾患などです。特定疾病に該当するかは、医師の判断によります。
Q. 介護認定の判定基準はなんですか?
A. 介護認定は、申請に基づき認定調査をおこなったあと、審査を経て判定結果が出ます。判定結果には、「自立」「要支援」「要介護」の3種類があります。自立は介護がいらない状態、要支援は生活の一部に見守りや介助が必要な状態、要介護は日常生活全般に介護が必要な状態です。要支援は1・2、要介護は1~5の要介護度に区分され、数字が大きいほど介護量が多くなります。
要介護認定の申請手順を介護福祉士が解説!
Q. 介護認定が申請できる場所を教えてください。
A. 介護認定の申請は、介護を受けたい方が住んでいる市区町村の高齢者窓口や、地域包括支援センターで受け付けています。本人が外出できないときは、家族の代理申請でも構いません。なお、代理申請は居宅介護支援事業所や入所先施設でも可能です。入院している場合は、病院の医療ソーシャルワーカーが相談に応じてくれます。
Q. 地域包括支援センターや居宅介護支援事業所とはなんですか?
A. 地域包括支援センターは地域における高齢者の困りごと相談ができる場所です。地域包括支援センターには医療・介護・福祉の専門家がいるので、介護や日常生活についての不安や悩みごとを相談できます。居宅介護支援事業所はケアマネジャーがいる場所です。ケアマネジャーは要介護者を対象にケアプランを作成し、介護サービスを利用するときのサポートや調整をおこないます。
Q. 介護認定の申請後は何をしますか?
A. 市区町村の窓口に申請すると、介護認定調査員が自宅や病院に訪れ、聞きとり調査をおこないます。調査後、コンピュータによる一次判定がおこなわれ、主治医の意見書とともに二次判定にかけられます。二次判定とは「介護認定審査会」という会議で、保健・医療・福祉の専門家による審査です。判定後、要介護度の通知書が自宅へ郵送されます。判定が出るまでの期間は、申請から通知まで約1~2か月と言われています。
Q. 聞き取り調査ではどのようなことを聞かれるのでしょう?
A. 本人や家族へ、心身の状態や日常生活の様子について伺います。約70項目を調査するため、1時間程かかります。本人の前では言いづらいことは、家族がメモにして調査員に渡すなど、事前に準備しておくのがおすすめです。
Q. 主治医の意見書は自分で用意するのですか?
A. 主治医の意見書は、役所と医療機関が直接やりとりするため、自分で用意する必要はありません。本人や家族は、介護認定を受けることをかかりつけ医に伝えておきましょう。心身の状態などで困っていることを医師に伝えておくと、その後の流れがスムーズです。主治医がいない場合は、市区町村の指定医で診察を受けることになります。
Q. 判定結果が出てからおこなうことを教えてください。
A. 在宅で暮らす場合、要支援の結果が出た方は地域包括センター、要介護の方は居宅支援事業所に相談し、ケアプランの作成を依頼します。施設に入所したいときは、施設に直接問い合わせましょう。
要介護認定を受けたら活用したいサービスは?
Q. 要介護認定後に使えるサービスは何ですか?
A. 生活の場所が在宅か施設かによって利用する介護サービスが異なります。介護サービスは、「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3つに大別されます。居宅サービスは在宅の方が利用するサービス、施設サービスは施設に入所している人に対してのサービスです。地域密着型サービスは、地域の実情に合わせて提供される小規模な居宅サービスや認知症対応の介護サービスです。
Q. 在宅サービスにはどのようなものがありますか?
A. 在宅サービスは主に、訪問・通所・短期入所にわかれます。訪問サービスは、へルパーや看護師などが自宅に訪れ、身体介護や入浴介助、リハビリをおこないます。通所サービスは、施設に通って食事やリハビリなどを受けます。短期入所は、介護施設に泊まるサービスです。その他、住宅をバリアフリー化するときの改修費支給や福祉用具貸与などのサービスがあります。
Q. 施設サービスにはどのようなものがありますか?
A. 施設サービスは、老人ホームへの入所だと考えてください。多くの人がイメージする老人ホームは、長期にわたり入所できる「介護老人福祉施設」です。ほかにも、リハビリを目的として3~6か月入所する「介護老人保健施設」や、介護と医療を提供する「介護療養型医療施設」などがあります。また、有料老人ホームやシニア向け住宅でも「特定施設入居者生活介護」の指定を受ければ、施設内で介護保険のサービスを受けられます。
Q. サービスを使うときに負担する費用はいくらですか?
A. サービスを利用すると、所得によって1~3割の費用負担があります。また、介護度ごとに1か月あたりの支給限度額が決まっており、限度額を超えると自己負担です。
西山 繭子(介護福祉士)
介護福祉士・社会福祉士・保育士資格を保有。大学で福祉資格を取得後、自治体の福祉窓口における相談業務、介護老人福祉施設の介護士、障がい者ヘルパーなどに従事。仕事を通じ、地域住民や利用者とその家族の困りごとに耳を傾ける。子育て中に保育士を取得し、トリプルライセンスのライターとして、介護・高齢者医療・保育の記事などを執筆。現在は、福祉・保育の正しい知識やケアの方法を広めるべく、介護福祉と子育て記事の監修者やライターとして活動中。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
※記事内容は執筆時点のものです。
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