糖尿病の治療薬「SGLT2阻害薬」についてご存知ですか?効果・服用時の注意点を解説


糖尿病の治療薬「SGLT2阻害薬」についてご存知ですか?効果・服用時の注意点を解説

糖尿病治療に使われる薬はさまざまな種類がありますが、それぞれの違いについて詳しく知る機会は少ないと思います。昨今、血糖値を下げる働きだけではなく、糖尿病の合併症を防いだり、心疾患の治療も一緒にできる「SGLT2阻害薬」に注目が集まっています。

SGLT2阻害薬とは? 効果・メリットを解説

Q. SGLT2阻害薬にはどのような効果がありますか?

A. SGLT2阻害薬には、血糖値を低下させる効果があります。それ以外にも体重を減少させる効果血圧を下げる効果腎臓を保護する効果心疾患のリスクを低減する効果があります。体重を減少させる効果は血糖値を低下させた結果として得られると考えられています。また、腎臓を保護する効果や心疾患のリスクを低減する効果は血圧が下がった結果として得られると考えられています。

Q. SGLT2阻害薬のメリットについて教えてください。

A. SGLT2阻害薬で得られる効果は、糖尿病で合併しやすい肥満症や高血圧、糖尿病性腎症、心不全の治療にも発揮するため、合併症も一緒に治療できるのが最大の効果(メリット)です。なお、合併症に対する4つの効果の強さは製品により大きく異なります。

Q. どのような作用で糖尿病が治療できるのですか?

A. SGLT2阻害薬はSGLT2の働きを阻害することによって、血液中のグルコースを尿から排泄させて、血糖値を下げます。SGLT2は私たちの腎臓にあるタンパク質で、老廃物を排出するための尿を作る過程で、老廃物と一緒にグルコース(ブドウ糖)も排出してしまわないように体内に留めておく役割を担っています。その役割を阻害することで、体内のグルコースを尿から排泄させるように促す方法を用いています。

Q. SGLT2阻害薬は長期間の服用が必要な薬なのでしょうか?

A. 治療効果が十分で副作用が問題にならなければ、長期的に継続して使用することができます。継続的に使用できるかどうかは、使い始めてから数週間〜数か月の間でわかります。その間、医師の診察のもとで、必要に応じて薬の量や製品の種類を変更しながら、治療効果や副作用を観察して判断します。このような薬の調節は、薬と身体との相性に大きな個人差がありますので必ずおこないます。

糖尿病以外にも効果がある? 適応に“なる人”と“ならない人”の違いとは

Q. SGLT2阻害薬は、糖尿病以外の疾患に対しても効果が得られますか?

A. SGLT2阻害薬の中には糖尿病以外に慢性心不全慢性腎臓病に対しても効果が得られるものがあります。また、近年SGLT2阻害薬がダイエット薬として販売されているため、肥満症にも効果があると思われがちですが、SGLT2阻害薬は肥満症に対しての適応はありません。

Q. SGLT2阻害薬が適応となる人はどのような人ですか?

A. 現在、SGLT2阻害薬が適応となるのは、「2型糖尿病」「1型糖尿病」「慢性心不全」「慢性腎臓病」の人だけです。2024年4月現在、日本国内で販売されているSGLT2阻害薬は、「ダパグリフロジン」「カナグリフロジン」「エンパグリフロジン」「イプラグリフロジン」「ルセオグリフロジン」「トホグリフロジン」の6製品です。この6製品に共通する適応症は2型糖尿病で、4つ全ての疾患で承認されているのはダパグリフロジンのみです。

Q. SGLT2阻害薬が使用できない人についても教えてください。

A. 治療効果が出るまでに数週間程度必要になるため、即座に血糖コントロールが必要な糖尿病性ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡(こんすい)になっている人は使用できません。また、容体が急変する可能性がある重症感染症の人や手術などの緊急対応が必要になりそうな人は、急な体調の変化に合わせて厳格な血糖コントロールが必要なため、使用できません。これらの人はインスリン製剤を使用します。

SGLT2阻害薬の副作用と使用上の注意点とは

Q. SGLT2阻害薬の副作用にはどんなものがありますか?

A. SGLT2阻害薬のよくある副作用としては、カンジダ症や膀胱炎などの性器・尿路感染症を始め、頻尿、脱水、正常血糖ケトアシドーシスの4つがあります。性器・尿路感染症は雑菌が尿のグルコースをエサにして、たくさん増えてしまうことによるもので、排尿痛や尿の色の濁り、性器とその周辺の痒みが出ます。また、頻尿や脱水はグルコースを排泄するため、尿の量が増えたことによるもので、「トイレの回数が多い」「のどや口が渇く」「疲労感」「めまいやふらつき」などの症状が出ます。正常血糖ケトアシドーシスは、身体が高血糖の状態だと勘違いしてしまうことで、高血糖になった時に起きてしまうケトアシドーシスが正常な血糖値でも起きてしまうものです。口の渇きや尿量の増加、体重の減少、だるさなどの症状がでます。

Q. 男性と女性で注意すべき点は異なりますか?

A. 注意すべき点は男性も女性も基本的には同じですが、女性は尿道が短く、一般的に男性よりも膀胱炎を発症しやすいといわれているため、症状が出ていないかのセルフチェックはもちろん、予防もしっかりしましょう。性器・尿路感染症においても、女性での報告は多いものの、男性の報告もあるため注意が必要です。尿が排泄されることによって膀胱や尿道で増えた雑菌を洗い流せるので、薬を飲み始める前より1日500ml程度多めに水分をとり、できるだけこまめにトイレに行くことが大切です。

Q. 副作用を放置するリスクについて教えてください。

A. 膀胱炎は治療しないで放っておくと、膀胱で増えた雑菌が膀胱と腎臓をつないでいる尿管を通って腎臓に入ってしまいます。そうなると急性腎盂腎炎(じんうじんえん)になり、入院が必要になる場合もあります。セルフチェックでおかしいなと思ったら早めに受診することをお勧めします。

Q. その他、SGLT2阻害薬を使用する際の注意点は何かありますか?

A. 薬と身体との相性には大きな個人差があるので、無理をして薬の服用を続けようとしないことです。また、自己判断で薬を使用することは控えて、医師の診断のもとで、適応内で薬を使用することをお勧めします。さらに、薬の副作用で日常生活に大きなストレスを感じる場合や、いつもと違うと感じたときは遠慮なく薬剤師や医師に相談してください。


志田 美春(COCO et al)

神戸薬科大学で薬剤師免許、博士(薬学)号を取得。新卒で大手製薬会社に入社し、最先端の創薬研究に従事。転職先では培った技術を活かして、培養肉の基盤研究を推進。この研究活動が評価され、2023年度長井記念若手薬学研究者賞を受賞。その後、産学連携の事業開発を経て、2024年に研究コンサルタントとして独立。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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