「高齢者の筋力低下を防ぐ」にはどのような食事がいいのかご存じですか?

筋力を維持することは、健康寿命を延ばすために欠かせません。加齢に伴う筋力低下「サルコペニア」を予防するには、たんぱく質を「いつ」摂取するかが重要であることが最近の研究で明らかになってきているようです。そこで今回は栄養士に、効果的なたんぱく質の摂取法とそのタイミングについて詳しく解説していただきました。
筋肉をつけるための時間栄養学
Q. 筋肉の維持に関連するサルコペニアとはなんですか?
A. サルコペニアとは、加齢による筋肉・筋力の減少のことを示します。サルコペニアにより、転倒や骨折、それらによる寝たきり生活のリスクが増加します。よって、高齢者が快適な老後生活を送るためには、筋肉の維持、サルコペニア予防はとても重要です。
Q. 筋肉をつけるために重要な栄養素についても教えてください。
A. 筋肉の主成分であるたんぱく質が最も重要です。特に、たんぱく質を構成するアミノ酸の中でも、バリン、ロイシン、イソロイシンという分岐鎖アミノ酸(BCAA)が大事です。また、炭水化物やビタミン、ミネラルも、筋肉の合成には重要です。
Q. 逆に筋肉が落ちやすい食事、または食習慣はありますか?
A. 低エネルギー・低たんぱく質な食事を続けていると、体に必要なエネルギーを確保するために自分の筋肉を分解してしまいます。
たんぱく質はいつ摂るのが効果的?
Q. たんぱく質を摂る良いタイミングはありますか?
A. 多くの人は、朝よりも昼や夕食時にたんぱく質を多く摂取しています。しかし、研究では、朝食により多くのたんぱく質を摂取している方が、夕食に多くたんぱく質を摂取している人よりも、握力や骨格筋量が高いことが報告されています。よって、朝に意識してたんぱく質を摂取すると良いでしょう。
Q. 1食で摂るべきたんぱく質量はどれくらいですか?
A. 高齢者では、1食、体重あたり0.4g/kgのタンパク質を摂取することで、筋肉の合成を最大にできると報告されています。つまり、50kgの方であれば、1食20gとなります。
Q. たんぱく質の種類や、摂取するコツはありますか?
A. たんぱく質には、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質があります。肉や魚、卵、牛乳・乳製品などに含まれる動物性たんぱく質には、体内で合成できない必須アミノ酸が含まれているので、毎日の食事で取り入れることが大切です。穀類や大豆・大豆製品、野菜類には植物性たんぱく質が含まれます。いろんな食品からたんぱく質を摂取しましょう。朝食で1食20gのたんぱく質を摂取するには、主食となるパンまたはご飯のほかに、肉・魚・卵・大豆製品を使った料理を1~2品、牛乳・乳製品を組み合わせると良いです。
プロテインやサプリメントは本当に効果的?
Q. 筋トレに効果的なプロテインの摂取タイミングはありますか?
A. 効果的なプロテインの摂取タイミングを検討した研究はたくさんあります。それらの研究をまとめてメタ解析した報告では、①運動後のプロテイン摂取、②夜のプロテイン摂取が骨格筋量の増加に効果的であったとまとめています。
Q. より効果的に筋肉をつけるために、サプリメントなどは有効ですか?
A. 食事からの摂取を基本とし、サプリメントは補助的に使う方がよいでしょう。同じ研究論文では、特にミルクプロテイン(牛乳、ヨーグルト、ホエイ、カゼインなど)がより効果的であったと結論付けています。一方で、動物性と植物性たんぱく質を混合した方が効果的だという報告もあります。
Q. プロテインや高たんぱく食品を摂ることの注意点を教えてください。
A. プロテインや高たんぱく食品の摂りすぎは、消化器系や腎機能に負担をかけることがあります。消化不良や胃腸の不快感がある場合は、摂取量や摂取方法を見直してみましょう。
参考文献:
(1) Effects of Timing and Types of Protein Supplementation on Improving Muscle Mass, Strength, and Physical Performance in Adults Undergoing Resistance Training: A Network Meta-Analysis.

田原 優(広島大学大学院 医系科学研究科公衆衛生学 准教授)
早稲田大学にて博士(理学)取得。その後、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)留学などを経て現職。「食べるタイミング」を考える時間栄養学をメインに、睡眠や運動など日常行動まで取り入れた時間健康科学研究を進めている。著書に「Q&Aですらすらわかる体内時計応用法(杏林書院,編著,2022)」「体を整えるすごい時間割(大和書房,2019)」などがある。

市川 知美(広島女学院大学人間生活学部管理栄養学科 教授)
管理栄養士。大学卒業後、病院の管理栄養士として勤務。県立広島女子大学(現・県立広島大学)大学院 修士(生活科学)取得。広島女学院大学 専任講師・准教授を経て2020年より現職。広島大学大学院 博士(口腔健康科学)取得。疾病予防の観点から、生活リズムおよび生活習慣、食事摂取に関する研究をおこなっている。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
※記事内容は執筆時点のものです。
免責事項(Medical DOCサイトへ)
このコラムを読んだ方におすすめのアプリ

アクセスランキング- RANKING -
