家族が「認知症」になったときのサポートの基本とコミュニケーションの注意点


家族が「認知症」になったときのサポートの基本とコミュニケーションの注意点

身近な人が認知症。そんな場面に直面したとき、私たちはどうすればいいのでしょうか? サポートの仕方や、コミュニケーション上の注意点について解説します。

認知症ってどんな病気?

Q. 「認知症」はどんな病気ですか?

A. 認知症とは病気の名前ではなく、なんらかの原因によって脳の細胞が壊れてしまい、認知能力が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を意味する言葉です。

Q. 例えばどんな原因で起こるのですか?

A. 認知症の原因は様々で、病名だけで何十種類もありますが、いくつかの代表的な原因疾患によって分類されています。

Q. 認知症の分類について詳しく教えてください。

A. アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症の3つが比較的多いとされ、それに前頭側頭型認知症を加えた4つが代表的な認知症の原因疾患と言われています。また、レビー小体型認知症や脳血管性認知症、前頭側頭型認知症にも、アルツハイマー病変が加わっているものが多いと言われています。

認知症になるとどんな症状が出るの? 医師が解説

Q. 認知症になると、どのような症状が表れるのですか?

A. 認知症の種類によって少しずつ異なりますが、いわゆる「物忘れ」などは、共通して見られる症状です。日常的に「物忘れ」という言葉を使う人もいますが、実際は、忘れているのではなく、新しい出来事の記憶が形成されない状態です。ほかには「日付や曜日、場所がわからなくなる」「言葉を発しにくくなる」といったことも多くみられます。ただし、前頭側頭型認知症の中には、物忘れや日付、場所の認知能力は保たれていながら、同じパターンの行動を取るといった症状を呈するケースもあります。

Q. いろいろな症状があるのですね。

A. そうなのです。ほかにも「家事や趣味など、今まで普通にできていた作業が難しくなった」「怒りっぽくなった」、逆に「おとなしく、無気力になった」という場合など、一見認知症とはわかりにくい症状もあります。

Q. 確かに、症状によっては気づきにくいもしれません。

A. 特に当事者本人は、初期の段階では気がつかないことがほとんどです。しかし、認知症は早期に発見し、早期に対応することで進行を遅らせたり、症状を出現させにくくしたりすることが期待できますので、周りの方が早い段階で「今までとちょっと違うな」と気がつき、早期に対応できると良いのです。

家族や友人が認知症になったらどうしたら良い?

Q. 家族や友人が認知症になったと感じたら、どうしたら良いでしょうか?

A. まずは、専門医に相談することが大事です。進行を遅らせる治療が可能なこともありますし、生活習慣や関わり方などについてアドバイスをもらえたり、周りがしてあげられるサポートについても教えてもらえたりすると思います。

Q. 例えばどんなサポートの仕方が良いでしょうか?

A. 私はよく「二人称で話してみて」とお伝えしています。例えば、相手が理解できない言動をとったとしても「私だったらそんなことしない(一人称)」とか、「徘徊」「帰宅願望」などといった三人称的表現で語るのではなく、患者さんが何故そのような行動をとったのかを理解しようと試みてほしいのです。

Q. コミュニケーションの注意点などもあれば教えてください。

A. 患者さんが事実と思っていることを否定しないということも大事です。例えば認知症の方が施設入所した直後や、娘や息子の家に引き取られた時などに、「家に帰らなきゃ」と出て行こうとしてしまうという悩みをよく聞きます。そんな時は「いや、ここが家ですよ」と言うのではなく「じゃあ一緒に帰りましょう」と、まず一緒に外に出てあげ、暫く一緒に歩いてから、「それじゃあ、そろそろ家に帰りましょう」と言って、新しい住処に帰って下さい。新しい住居に移った時は、そこに帰宅するという習慣づけをしてほしいのです。


岩田 誠(メディカルクリニック柿の木坂)

1967年、東京大学医学部医学科を卒業後、 東京大学神経内科学教室助教授、東京女子医科大学脳神経内科主任教授、東京女子医科大学医学部長、東京女子医科大学名誉教授などを経て、2009年にメディカルクリニック 柿の木坂を設立、院長となる。医学博士、日本神経学会認定神経内科専門医、日本神経心理学会名誉会員、日本頭痛学会認定専門医、日本高次脳機能障害学会名誉会員。著書「臨床医が語る 認知症と生きるということ」(日本評論社 2015)


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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