医師が明かす「花粉症」の市販薬の選び方 「第一世代」と「第二世代」はどっちがいい?

日本では花粉症に悩まされる人の数が年々、増加しています。ドラッグストアにはさまざまな薬剤が売られていますが、どれを選べば良いかわからないという人も多いと思います。そこで今回は、花粉症の市販薬の選び方について医師に伺いました。
花粉症の市販薬はどう選べば良いのか?
Q. 花粉症に悩まされている人が、市販薬に頼ることも多いと思います。どのようにして薬を選べば良いのでしょうか?
A. まずは、自分の症状に合った市販薬を選ぶことが大切です。たとえば花粉症の症状として目のかゆみが強く出るなら、アレルギー点眼薬を使うことをお勧めします。内服剤を使用するのに比べて局所的であるため、副作用を抑えられるというメリットがあります。
Q. 鼻の症状は、どのような薬を選べば良いのでしょうか?
A. くしゃみと鼻づまりが主症状であれば、抗ヒスタミン薬を使うのが一般的です。ヒスタミンとはアレルギー症状を引き起こす化学物質のこと。抗ヒスタミン薬は体内でヒスタミンの作用をおさえることで、アレルギー症状を抑制するという効果があります。
Q. 抗ヒスタミン薬にはどのようなものがありますか?
A. 第一世代と第二世代があり、現在多く用いられているのは第二世代です。第二世代の抗ヒスタミン薬は副作用が少なく、特に眠気を引き起こしにくいという特徴があります。
Q. 第二世代の抗ヒスタミン薬にはどのようなものがあるのですか?
A. 成分としては、エピナスチン、フェキソフェナジン、ベポタスチン、ロラタジンなどが挙げられ、これらの成分を含んだ市販薬も多数登場しています。ただし、市販薬のパッケージに「第二世代」と書かれているわけではないので、気になる場合は薬剤師などに聞いてみると良いでしょう。
第一世代のメリットとデメリット
Q. 第一世代の抗ヒスタミン薬にはどのような特徴があるのですか?
A. 第二世代に比べて効果を実感しやすい、というのが特徴です。ドラッグストアでもd-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ヒドロキシジンなどを含む市販薬が売られていますが、これらはすべて第一世代の抗ヒスタミン薬です。
Q. 第一世代にはどのような副作用があるのですか?
A. 第一世代の抗ヒスタミン薬は効果を実感しやすいものの、脳への影響が大きいので眠気が強かったり、認知機能を低下させたりするといったデメリットが挙げられます。そのためドライバーなど、職業によっては服用に注意が必要なケースもあります。また薬の持続期間が短いので、1日に何回も服用しなければならないというのもデメリットです。
Q. いろいろなデメリットがあるのですね。
A. そのほか、第一世代の薬は抗コリン作用といって、眠気や便秘、口渇などを引き起こす作用も強く出てしまいます。しかし、第二世代に比べて抗ヒスタミン作用は強いため、「第二世代の市販薬を使ったけれど、あまり効果が得られなかった」「眠気が出てもいいので、すぐに症状を止めたい」という場合には、第一世代が有効だと思います。
Q. まずは第二世代を使ってみて、あまり効かないようなら第二世代のほかの薬に変える、あるいは第一世代に変える、というのが良いのですね。
A. はい。第一世代は眠気が強く出るといっても個人差が大きく、人によってはまったく眠くならないこともあります。薬との相性を考え、自分に一番合うものを選ぶことが大切です。
Q. 内服薬以外にも選択肢はありますか?
A. はい、点鼻薬も市販されています。病院で処方される点鼻薬はステロイドを含むものが多く、くしゃみや鼻水だけでなく鼻づまりにも有効です。一方、市販の点鼻薬は第2世代抗ヒスタミン薬がメインです。一部は血管収縮剤といって、血管を収縮させることで鼻づまりの症状を軽減させるタイプのものもあります。これを長期で使うとかえって症状が悪化することもあるので、市販の点鼻薬を使用するときには血管収縮剤が含まれていないものを選ぶことをお勧めします。
Q. 点鼻薬と内服薬はどのように使い分ければ良いでしょうか?
A. 気になる症状が鼻だけであれば、点鼻薬だけでも良いと思います。しかし、目のかゆみや喉の違和感など、ほかの部位にも症状が及ぶようであれば、内服薬を服用すると良いでしょう。もちろん、内服薬や点鼻薬だけで効果が不十分であれば併用しても構いません。
市販薬と処方薬はどう違うのか?
Q. 市販薬と、病院で処方される薬はどう違うのですか?
A. 一般に、市販薬の場合には処方薬に比べて薬効成分量が少ないという違いがあります。なぜなら、市販薬の場合には誰でも安全に使うことができるよう、薬効成分を低めに抑えていることが多いためです。しかし、花粉症の市販薬のなかには、処方薬と同じ成分量を含むものもあります。
Q. ほかに、市販薬と処方薬の違いはありますか?
A. 処方薬は一つの薬に含まれる薬効成分はひとつだけ、というのが基本です。しかし、市販薬の場合には複数の薬効成分が配合されたものもあります。
Q. 市販薬は効かないというイメージがありますが…。
A. 市販薬は処方薬と違って、誰でも医師の診察を受けずに手軽に購入できるというメリットがあります。その一方、処方薬は医師が一人ひとりの症状や重症度を調べ、個々に最適な薬を選択しています。そのため、「市販薬は種類が多くて、自分にはどの薬がいいのかわからない」という場合は病院を受診し、自分に適した薬を選んでもらうのが良いでしょう。

小松崎 敏光(目黒本町耳鼻咽喉科)
2010年昭和大学医学部 卒業、2014年昭和大学大学院医学研究科修了、2014年昭和大学病院耳鼻咽喉科 助教、2016年東京都保健医療公社荏原病院(現・東京都立荏原病院)医員、2017年昭和大学横浜市北部病院耳鼻咽喉科 助教、2019年昭和大学横浜市北部病院耳鼻咽喉科 講師。医学博士、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定耳鼻咽喉科専門医・専門医研修指導医、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定補聴器相談医、日本めまい平衡医学会めまい相談医、身体障害者福祉法15条指定医。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
※記事内容は執筆時点のものです。
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