「大腸がん」の前兆 リスクを高める大腸ポリープの正体! 良性・悪性の違いとは?


「大腸がん」の前兆 リスクを高める大腸ポリープの正体! 良性・悪性の違いとは?

前駆病変とは、ある病気の前兆として見られる異常な症状のことをいいます。実は、大腸がんには特異的な前駆病変があり、大腸カメラ検査で発見できることも多いのです。

大腸がんの前駆病変とは?

Q. 前駆病変とはなんですか?

A. 前駆病変とは、ある疾患が発症する前に前兆として見られる異常のことです。簡単に言えば、前触れのことになります。がんの種類によっては前駆病変があり、本格的ながんが発生する前にある特異的な所見が見られることがあります。前駆病変があると、がんの発生リスクが高いと判断されます。

Q. 大腸がんにも前駆病変があるのですか?

A. はい、最も一般的なものに大腸ポリープが挙げられます。

Q. 大腸ポリープとはなんですか?

A. ポリープとは大腸の粘膜が突出した組織のことです。簡単に言うと粘膜が隆起してイボのようになった組織のことです。

Q. 大腸ポリープがあると、がんを発症するリスクが高いということですか?

A. 大腸ポリープにはさまざまな種類があるため、一概にポリープがあるからといってがんを発症するリスクが高いとは言えません。そもそもポリープは組織や構造の違いによって分類されますが、そのうち、腫瘍性ポリープと呼ばれるものはがん化する可能性があります。

Q. 腫瘍性ポリープがあるとがんになるのですか?

A. 細かく言うと、腫瘍性ポリープは悪性腫瘍(がん)と良性腫瘍(腺腫)に分類され、悪性腫瘍の場合にはがんと診断されます。一方、良性腫瘍の場合には、現在は良性であってもいずれがん化するリスクがあるとされています。

大腸ポリープの原因や特徴

Q. 良性腫瘍なのにがん化する可能性があるのですね。

A. はい。良性腫瘍(腺腫)は大腸の粘膜上皮にある腺細胞という細胞が異常を起こし、増殖することで発生します。大腸に見られるポリープのうち、最も頻度が高いものであり、基本的に良性とされています。しかし、少しずつ大きくなるなど、成長しているものはいずれがん化するリスクがあることがわかっています。

Q. ポリープが大きくなって、がんになるというイメージですか?

A. 大腸がんの作られ方はさまざまで、ポリープを経ず、突然発症するタイプのものもあります。しかし、一般的なのは、良性ポリープが大きくなるなかでがん化するというタイプのものです。腺腫の成分ががん化するまでは、一般に数年かかるとされていて、特にサイズが大きいものや形が変形しているものは、がんを発症するリスクが高くなることがわかっています。

Q. 良性腫瘍(腺腫)があると、どのような症状が見られるのですか?

A. 基本的には症状がないことがほとんどです。特にポリープが小さかったり、凹凸がなく平坦であったりする場合にはほとんど自覚症状がなく、大腸カメラなどの検査を受けなければ気づけないかもしれません。しかし、ポリープが大きくなったり、肛門の近くにポリープができたりすると血便が出たり、粘液が混ざった便が出たりして気がつくこともあります。

Q. 症状がなくてもポリープができていることがあるのですね。

A. はい。そのため「何も症状がないから大丈夫」と考えず、症状がなくても定期的に大腸カメラ検査を受け、ポリープなどの異常がないか確認することが重要です。

Q. 大腸カメラで腺腫が見つかったら、どうしたら良いのでしょうか?

A. 研究により、腺腫を切除すると大腸がんの発症リスクが低下することがわかっています。そのため大腸カメラなどの検査で腺腫が見つかったら切除することが望ましいです。

Q. 小さくても切除した方が良いのですか?

A. はい。大きなものほどがん化のリスクがありますが、小さなものでも将来的ながん化のリスクを考え、積極的に切除するのが一般的です。ポリープを切除して病理検査を行い、どのようなポリープか判断し、今後の大腸がんの予防に役立てたり、検査間隔を考慮したりするのに活用します。

大腸ポリープを治療・予防するには?

Q. 大腸ポリープを切除するには内視鏡を使うのですか?

A. 現在では内視鏡を使った治療が一般的です。近年では大腸カメラで検査を行っている最中、大腸ポリープが見つかった場合には、病変の一部を採取して病理検査に出したり、その場でポリープを切除したりすることもできます。

Q. 大腸ポリープは一度切除したら、再発することはないのでしょうか?

A. いいえ。ポリープは一度切除しても、そのほかの部位に発生する可能性があります。そのため、定期的に便潜血検査や大腸カメラ検査などを受け、新しくポリープが作られていないか確認することが必要です。定期検査を受けることで、新たな病気の発見につながることもあります。また、大腸はひだ状になっているためポリープの種類によっては見えづらいこともあります。そのため、繰り返し検査を受けることで発見の確率が高まります。

Q. 大腸ポリープを予防するにはどうしたら良いのでしょうか?

A. 完全な予防法はないので、検査を受けるなどして早期発見に努めることが重要になります。ただし大腸ポリープの発症には、食生活、運動習慣、遺伝的要因が深く関与しています。食事でいえば、高脂肪、高タンパク、低繊維の食事を続けると大腸ポリープが作られやすくなり、また、過度の飲酒や肥満、喫煙なども大腸ポリープの危険因子となります。そのほか運動不足も要注意です。

Q. 生活習慣を見直すことも必要ですね。

A. はい。それから遺伝的要因も重要です。大腸がんは親子間で遺伝する可能性があることがわかっています。親子兄弟などの血縁関係者に大腸ポリープや大腸がんと診断された人がいる場合には、大腸がんになるリスクは3倍程度とされています。そのような場合には、定期的に大腸カメラの検査を受け、ポリープの早期発見に努めると良いでしょう。


柏木 宏幸(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院)

埼玉医科大学 医学部医学科 卒業。東京女子医科大学病院 消化器病センター、独立行政法人国立病院機構横浜医療センター 消化器内科 (東京女子医科大学消化器病センター医療練士)、社会福祉法人恩賜財団済生会支部 埼玉県済生会栗橋病院(現・埼玉県済生会加須病院)消化器内科、東京女子医科大学病院 大腸・IBDセンター、医療法人八重瀬会 同仁病院 消化器内科 (東京女子医科大学消化器内科助教)、医療法人財団中山会 八王子消化器病院 (東京女子医科大学消化器内科助教)、医療法人財団青空ホームクリニック くじら在宅クリニックなどを経て現職。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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