曇りや雨の日も「熱中症対策」が必要な理由をご存知ですか? 気温以外に注意すべき点を医師が解説

夏の暑さが厳しくなってくると熱中症のリスクも高まります。めまいや立ちくらみなど、初期症状を見逃さないことが重症化予防には大切です。また、雨の日や屋内でも熱中症になる可能性があるため、準備と対策が必要であると専門家は言います。今回は、熱中症の原因や応急処置の方法、予防方法について、国際医療福祉大学救急医学講座の教授に詳しく解説していただきました。
熱中症の基本を知る
Q. 改めて、「熱中症」とは体がどのような状態になることなのか教えてください。
A. 環境温度が35℃・湿度が75%を超えるような状況では、環境温度が体温とほぼ変わらず汗の蒸発も難しくなります。そのような状態では、熱が体の中にこもっていってしまい、体の不調が起こります。また、気温が高くなくても、汗が蒸発しにくい衣服を着て慣れない長時間の運動をすることや、塩分の少ない飲みものだけで長時間の運動をすることでも熱中症となるリスクがあります。
Q. 「熱中症」と「日射病」「熱射病」は何が違うのですか?
A. 熱中症は、日光による環境温度の上昇だけを指すのではなく、屋内で起こる場合も含みます。日射病は、一般的に日光による環境温度の上昇のもと、運動や作業をしているときに起こるものを指すと考えることが一般的です。熱射病は、熱中症で最も重症なもの(Ⅲ度)に相当するもので肝臓、腎臓、凝固機能など重症のために臓器の障害が起こります。また、脳の障害も起こるため、意識がない、体のけいれん、呼びかけに対する返事がおかしい、まっすぐ歩けないなどの症状が現れます。
Q. 熱中症の初期症状はどのようなものですか?
A. 熱中症の重症度は3段階に分類されているのですが、そのうちでは「I度」と呼ばれる状態にあたります。めまいや失神、立ちくらみの症状が現れます。“熱失神”と呼ぶこともありますね。大量の発汗がある、筋肉痛・筋肉の硬直、筋肉のこむら返りを起こす場合もあります。これらは、発汗に伴い体内の塩分(ナトリウムなど)が減少することにより生じます。意識障害は見られないことが一般的です。
曇り・雨の日でも熱中症に注意が必要?
Q. 熱中症はどのような原因で発症しますか?
A. 熱中症は、熱吸収の増加(気温が高い、外での運動・作業、エアコンのない屋内で過ごす)と熱放出の低下(湿度が高くて汗が蒸発しにくい、病気や薬で汗が出にくい、服装が熱のこもる厚着でぴったりした物や、換気の悪い物など)がいくらか組み合わさることで引き起こされます。
Q. 夜間、屋内にいても熱中症対策は必要ですか?
A. もちろん必要です。実は熱中症は屋内での発症が半数近くなっています。特に、湿度や気温が高い場合には、汗を出したり蒸発したりするのが難しくなるため、注意が必要です。
Q. 曇りの日や雨の日でも熱中症のリスクはありますか?
A. あります。曇りや雨の日は湿度が高くなりますので、注意が必要です。太陽が出ているか出ていないかだけではなく、気温や湿度が高ければ、体の中に熱がこもってしまいます。そこで、どんどん体に熱がこもってしまって調子が悪くなっていきます。汗が出にくい場合でも少しずつ出ていくので、徐々に脱水になり、ますます体や臓器の調子が悪くなるサイクルが進んでいきます。
熱中症を予防するための方法とは?
Q. 熱中症の初期症状が見られた場合に取るべき行動を教えてください。
A. まずは、日陰やクーラーのあるところに移動しましょう。水分を取れるなら、経口補水液やスポーツドリンクを飲んでください。話せない、歩けない、水分が取れない場合は、回復体位をとって救急車を呼ぶ必要があると考えましょう。体温が非常に高い場合には、水風呂に何人かで入れる、屋外のスポーツイベントには、簡易式プールを用意することを推奨します。そのような設備が無ければタープ法(ビニールシートの真ん中に人を乗せて左右から持ち、人のところに水と氷がたまるようにしてシートを動かして冷却する方法)を用いて体を冷やすことが推奨されます。
Q. 熱中症になりやすい人の特徴はありますか?
A. 子どもや高齢者、持病がある、肥満体型、普段運動しない、お酒やカフェインを摂る、水分や塩分を摂らない、疲れている、睡眠不足、二日酔い、朝食を摂らない方など、これらの特徴に当てはまる人は健康な人に比べて熱中症になりやすいと言えます。
Q. 自分自身でできる熱中症予防にはどのような方法がありますか?
A. 暑熱馴化(しょねつじゅんか)といい、暑い環境に体を慣れさせておくことで、熱中症の予防につながります。シーズン始めは1日30分程度の屋外活動から始めることがおすすめです。その後1日あたり30分〜1時間程度活動時間を伸ばしていきましょう。暑い日は屋外での活動や作業を控える事も熱中症を防ぐ方法の1つです。どうしても活動する場合は、2人1組で15〜20分に一度水分(経口補水液やスポーツドリンク)を補給しましょう。また、屋内ではクーラーをつける、家族は高齢者を定期的に訪問や電話で確認する、自動車に子どもや高齢者を置き去りにしない事も大変重要です。

志賀 隆(国際医療福祉大学救急医学講座 教授)
2001年千葉大学医学部卒業。学生時代から総合診療・救急を志し、東京医療センター初期研修後、在沖米国海軍病院,浦添総合病院救急部での勤務を経て渡米。米国メイヨー・クリニックでの救急研修後、ハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医として勤務。2011年東京ベイ・浦安市川医療センター救急科部長就任。2017年7月から国際医療福祉大学医学部救急医学講座准教授/同大学三田病院救急部長。2020年6月より現職。安全な救急医療体制の構築、国際競争力を産み出す人材育成、ヘルスリテラシーの向上を重視し日々活動している。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
※記事内容は執筆時点のものです。
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