免疫力を高めるにはどうしたらいい? 医師が免疫機能を上げる食事や生活習慣を紹介


「免疫力を高めるにはどうしたらいい? 医師が免疫機能を上げる食事や生活習慣を紹介

新型コロナウイルスの感染拡大以降、「免疫力」というワードを耳にすることが多くなりました。たしかに、健康を自分で守るためには免疫力を高めることが大切です。しかし、「一体、どうやって免疫力を高めたらいいの?」と疑問を感じている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、医師に免疫力を高める方法を具体的に解説していただきました。

免疫力とは? 体の健康に関わる免疫機能にはどんな役割があるの?

Q. そもそも、免疫力とはなんですか?

A. サイエンスでの定義は非自己、つまり「異物を排除するシステム」ということになります。もう少しわかりやすく言うと、免疫力の「疫」とは病気のことです。つまり、免疫力とは「病気」を「免れる」ために必要な力のことを言います。いわば、免疫は体にもともと備わっている自己防衛システムのことです。

Q. 免疫の仕組みについて教えてください。

A. 人間に備わっている免疫のシステムは、体内に侵入した病原菌や誤って体内で作られてしまったがん細胞をはじめとする異常な細胞を常に監視し、撃退する役割を担っています。免疫機能は2段構えで成り立っていて、「自然免疫」と「獲得免疫」にわけられます。

Q. それぞれの役割を教えてください。

A. まず、体内に病原体が侵入したとき、最初に働くのが「自然免疫」です。侵入した病原体に対して、いち早く反応して攻撃を仕掛けます。この自然免疫が病原体を攻撃して排除すると、自然免疫は病原体の情報を「獲得免疫」に伝えます。獲得免疫は、その病原体に対して専用の部隊を結成し、強力な抗体などを作って攻撃します。そして、一度侵入してきた病原体の情報を記憶します。そのため、再び病原体が体内へ侵入しようとしたとき、素早く排除できるようになるのです。

免疫力を上げるには何が大切?食べものや生活習慣など免疫力を高める方法をご紹介

Q. 免疫力を上げるためには、一体どうしたらいいのでしょうか?

A. よく眠る、よく笑う、規則正しい時間に寝起きする、適度な運動をする、ストレスを溜めないなど、免疫力を高めるには健康的な生活習慣が基本です。また、代謝を活発にして体温を上げることも、免疫力を高めるためには重要です。昔に比べて、現代人は普段の体温が低いと言われています。

Q. 体温を上げることも大事なのですね。

A. はい。体温を上げる身体作りをすることで、免疫力が高まると考えられます。そのため、適度に筋肉をつけたり、入浴したり、運動をしたりして代謝をよくし、体温を高めることが大切です。

Q. 免疫力を高めるには食事が大事とも聞きます。

A. そのとおりです。外部から身体に取り込むものは「空気」と「食べもの」の2つです。空気は同じ場所に住んでいる限り、特殊な方法以外で変えることは困難です。したがって、環境要因としては食事が重要となります。人間の体は食べたもので作られています。食べものを見直すことは、免疫力を高めるためにとても大切です。とくに気をつけたいのは、バランスの取れた食事をして腸内環境を整えることです。

Q. 腸内環境と免疫力には、どのような関係があるのですか?

A. 免疫に関わる免疫細胞は、約6~7割が腸内に存在しています。つまり、腸は食べものを取り込む場であり、体内と外部の境界となって、バリアが築かれているのです。そのため、腸内環境はとても大切なのです。腸内環境が整っていれば、免疫細胞は活発に活動することができます。

Q. 腸内環境について、もう少し詳しく教えてください。

A. 腸内には善玉菌や悪玉菌、日和見菌も生息しており、善玉菌は免疫細胞と協働し、悪玉菌の増殖を防いだり、有害物質を体外へ排出したりする役割を担っています。そのため、免疫力を上げるためには、腸内環境を改善することが大切です。

Q. 具体的に腸内環境を整えるためには、どのような食事が効果的ですか?

A. 善玉菌は、食物繊維やオリゴ糖、発酵食品をエサにしていますから、これらの食品を積極的に摂りましょう。また、ビタミンA、B、C、Eも免疫力をアップするのに欠かせない栄養素です。とくにA、C、Eは「抗酸化ビタミン」としても知られています。免疫が働いて病原菌を攻撃すると、そこには副産物として活性酸素が作られます。活性酸素は過剰になると、正常な細胞にもダメージを与えてしまいます。これを処理するのが抗酸化物質です。こうした栄養素を多く含む食品も、免疫力アップには大切です。

「免疫力低下で病気のリスクも……」免疫力を下げてしまうNG行為と対策

Q. 反対に、免疫力を低下させてしまう行為には、どのようなものがありますか?

A. 免疫力を低下させるものとして、代表的なものに加齢、偏った食生活、ストレス、睡眠不足、喫煙、運動不足などがあります。こうした生活を改め、健康的な生活習慣を身につけることが、免疫力を高めるためには重要です。

Q. 当たり前のように日常的におこなっていることが、免疫力を低下させる原因になっているのですね。

A. 免疫は自律神経の制御を受けており、強いストレスは交感神経を緊張させます。逆に、ワクワクする気持ちや安定した精神状態は副交感神経を優位にします。したがって、ストレスを溜めないことが大切です。

Q. ほかに大事なことはありますか?

A. ストレスを溜めないことに加えて、意外と大事なのは良質な睡眠です。睡眠中、体内では副交感神経が優位になりますが、そうすると、免疫力が活発になります。つまり、睡眠中はしっかり副交感神経を優位にすることが大事なのです。寝ている途中で目が覚めたり、日中に眠気を感じていたりする場合は、質の良い睡眠が取れていない証拠です。寝る前にテレビやスマートフォンを見ない、寝る直前に食べない、寝る2~3時間前に入浴を済ませるなど、習慣を見直してみましょう。

Q. 無自覚にストレスを溜めていたり、睡眠不足に陥っていたりして、知らないうちに免疫力を下げていることも多そうです。

A. 免疫力は、加齢によっても低下してしまいます。そのため、現在ではアンチエイジング(抗加齢)も注目されています。アンチエイジングとして、ホルモン補充療法、サプリメント、ヨガなどが代替医療としておこなわれています。

Q. アンチエイジングについての様々な医療も免疫力を上げるために役立つのですね。

A. はい。ただ、食生活を見直したり、ストレスを上手に発散したり、良質な睡眠をとったりすることは非常に重要で、それらを心がけることで免疫力を高めることは十分可能です。風邪を引きやすいなど、免疫力が低下していると思ったら、ぜひ自分の生活習慣を振り返ってみましょう。


後藤 重則 医師(瀬田クリニック東京)

新潟大学医学部卒業。その後、新潟県立がんセンター新潟病院、新潟大学医学部、帝京大学医学部、霞が関ビル診療所などで勤務。1999年、「瀬田クリニック(現・瀬田クリニック東京)」院長に就任。日本免疫治療学会理事、日本バイオ治療法学会監事、日本再生医療学会代議員。日本癌治療学会、日本癌学会、日本産科婦人科学会の各会員。順天堂大学健康総合科学先端研究機構(JARIHES)次世代細胞・免疫治療学プロジェクト(江川記念 SETAプロジェクト)客員教授。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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