「いつもと違うむくみ」は腎臓病のサインかも 今すぐ受診すべき症状とは? 内科医が解説
腎機能の低下は特徴的な自覚症状がほとんどないですが、初期症状としてむくみや倦怠感などの症状が出ることがあります。 腎臓病の早期発見のための初期症状の見定め方について医師に伺いました。
体・手足のむくみが気になる? どんな状態がむくみ? 症状や原因について
Q. 「むくみ」とは、どのような症状のことを言いますか?
A. 簡単にいえば、血管に吸収されなかった水分が皮膚の下に溜まっている状態のことをいいます。「浮腫(ふしゅ)」とも呼ばれ、顔や手足に生じやすいとされています。
Q. 夕方になると靴がきつくなったり靴下の跡がくっきり付いたりするのも、むくみのためですか?
A. はい、それもむくみの影響です。特に座りっぱなしの人の場合は重力の影響で足に血液が下がりやすく、血流が悪くなって足がむくみやすくなります。
Q. むくみの原因はなんですか?
A. むくみの原因にはさまざまなものがあります。例えば病気が原因となるものとして、深部静脈血栓症や静脈瘤など血管の疾患や、腎臓、心臓、肝臓、甲状腺など内科的疾患が考えられます。そのほか、病気ではない原因として長時間同じ姿勢でいることや、運動不足、冷えなどもむくみと関係します。またアルコールや塩分の取りすぎでもむくみが起きることがあります。
足や顔がむくむ・むくみやすい原因は腎臓病? 内臓疾患がむくみを招く可能性もある?
Q. では、むくみにはどのようなタイプがあるのですか?
A. むくみのタイプにはさまざまあります。まずむくみがどこにあらわれるのかという観点でいえば「全身がむくむ」ということもありますし、「顔や手足など、体の一部がむくむ」ということもあります。それから、むくみの持続時間の観点でいえば、「一時的にむくむ(指で押せばすぐに戻る)」こともあれば、「指で押しても戻らない」ということもあります。
Q. 気をつけたいのはどのようなむくみの場合ですか?
A. 注意したいのは、全身にむくみが出る場合です。静脈瘤や深部静脈血栓症のような血管の疾患の場合は、むくみがあらわれるのは下半身だけなど局所的であったり、また右足だけや左足だけなど片側的であることがほとんどです。しかし、心臓、肝臓、腎臓、甲状腺などに原因がある場合は顔、手、足など全身がむくむことが多いのです。それから、指で押してもなかなか元に戻らないといった状態も内科的疾患の可能性があるので、注意が必要です。
Q. 具体的に、どのような疾患が考えられるのですか?
A. 心臓であれば心不全、腎臓であれば腎不全、肝臓であれば肝機能の低下が考えられます。また、甲状腺機能の低下が原因でむくみを起こすことも少なくありません。
Q. そのなかで特に注意したい疾患は何ですか?
A. むくみの原因疾患として多いのは腎臓病です。なぜ腎機能が低下するとむくみが生じるのかというと、腎機能が衰えると血液をろ過して尿として排出することができなくなるためです。全身にむくみを生じさせやすく、肺や心臓に水が溜まることもあります。
気になるむくみの症状と病院受診のタイミングとは?
腎臓病の疑いがある場合どんな検査を受ける?
Q. どのような症状が見られたら病院を受診した方が良いでしょうか?
A.
全身のむくみに加え、以下のような症状が見られる場合には早めに受診することをおすすめします。
・尿量の変化(尿量が増えた、あるいは減った)
・夜間頻尿
・全身倦怠感、だるさ
・貧血
・体重の増加
Q. そのような症状は、初期にも見られるのですか?
A. いえ、このような症状が見られるのは、ある程度病気が進んでからになります。ただし、体重の増加と尿量の変化は初期でも見られることがあるので、注意すると良いと思います。
Q. 腎臓病の疑いがある場合にはどのような検査が行われるのですか?
A. 既往歴や家族歴を尋ね、発熱や咽頭炎などの先行症状がないか、問診で確認します。その後、血圧、浮腫、血管雑音などの身体所見をチェックしたり、採血・検尿を行ったりします。必要によって腎生検などを行う場合もあります。
Q. 腎臓病だった場合、放置するとどうなるのですか?
A. むくみを引き起こす腎臓の疾患にはネフローゼ症候群や慢性糸球体腎炎、慢性腎臓病(CKD)などがありますが、これらを放置するとどんどん腎機能が低下して、腎不全の状態に至ります。そうなると人工透析や腎移植が必要になる場合もあるので、早めに適切な治療を開始することが必要です。
Q. むくみが見られたら、何科を受診したら良いのですか?
A. 下肢静脈瘤など、明らかに血管の異常であるとわかる場合には、血管外科などを受診しても良いと思いますが、「なぜむくんでいるのかわからない」という場合には、腎臓内科と内科を両方標榜している医療機関を受診することをお勧めします。
Q. 腎臓内科を標榜しているところが良いのですね。
A. はい、腎臓内科はむくみを扱うことが多く、腎臓が原因でなかったとしても適切な医療機関を紹介できます。
Q. どれくらいむくみが続いたら受診した方が良いのでしょうか?
A. むくみの原因によります。内科的疾患が原因のむくみは長く続くことがあり、特にネフローゼ症候群は急速に病気が進行していき、発症後1〜2週間で肺に水が溜まることも少なくありません。ネフローゼ症候群を発症すると、両手両足や顔にむくみが出て一般的なものとは明らかに違うむくみ方をします。そのためおかしいと思ったら早めに受診することが必要です。
木村 庄吾(東池袋きむら内科クリニック)
2004年金沢医科大学医学部卒業。2011年2011年金沢医科大学医学部大学院医学研究科修了。社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院内科医長、JA岐阜厚生連中濃厚生病院腎臓内科部長、武蔵野総合クリニック練馬副院長、両国駅前内科・透析クリニック院長、順天堂大学腎臓内科非常勤講師、湘南内科クリニック六本木院院長などを経て2021年4月東池袋きむら内科クリニック開院。医学博士、日本内科学会認定内科医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
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