「むくみ」の原因は“塩分摂りすぎ?” 医師が教える浮腫解消法やおすすめ食生活
「むくみ」は医療用語で「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれ、何かの病気の症状であるケースもあるそうです。また、塩分の摂りすぎに原因があると聞くこともあります。今回はむくみの解消法や食生活について医師に話を聞きました。
体のむくみはなぜ起こる? 足や顔などがむくんで腫れる原因・メカニズムとは?
Q. むくみとは何ですか?
むくみというのは、何らかの原因によって血管やリンパ管から水分が周囲の組織に染み出し、皮膚や皮下組織に余分な水分が溜まった状態です。医療用語では「浮腫」と呼ばれます。病気ではなくても浮腫となることもありますが、病気の症状として浮腫が現れる場合もあります。
Q. 病気ではないむくみの原因は何ですか?
A. 病気が原因ではない生理的なむくみは、純粋に「水分の摂りすぎで翌日むくんでしまった」というケースもありますが、ほかにも運動不足や立ちっぱなし、座りっぱなしなどの生活習慣、女性だと月経周期に伴って起こるなどの原因が考えられます。また、「塩分の摂りすぎ」もむくみの原因になります。
Q. 塩分も原因になるのですか?
A. はい。私たちの体には、体内の塩分濃度を一定に保とうとする働きがあります。塩分を過剰に摂取すると、体内の塩分濃度を薄めようとして体が水分を溜め込んでしまうため、むくみにつながるのです。
Q. もう少し詳しく教えてください。
A. 体内の血液の塩分濃度が高いと、浸透圧などの関係で、排泄されるべき水分が排泄されずに血管内に多く貯留され、毛細血管が拡張し、血管外の組織に多く漏れ出します。これがむくみとなります。ほかにも運動不足や同じ姿勢を長くとることで、静脈から心臓へ戻る血液の流れが悪くなり、末梢の毛細血管から同じように血管外に漏れ出すケースもあります。
足や顔のむくみや腫れを解消するにはどうすればいい? 食事の塩分を減らす? 医師に聞く浮腫対策・食生活
Q. むくみを改善・解消するためにはどうしたら良いですか?
A. 例えば運動不足によるむくみは、軽い運動やストレッチを行うことで血液の循環が促進されて徐々に改善されます。それぞれむくみの原因を取り除くことが大事です。市販のグッズ、例えばドラッグストアなどで販売されているむくみ予防の靴下なども効果的です。
Q. 塩分の摂りすぎによるむくみはどうしたら良いですか?
A. 塩分の摂りすぎによるむくみには、単純に塩の摂取量を控えることが必要です。また、塩を使う場合でも、精製塩ではなく天然塩を選ぶことをお勧めします。天然塩だと、カリウムなどのミネラルも摂れますし、ミネラルが含まれていることで純粋な塩分である「塩化ナトリウム」の含有量が下がるため、塩分の摂取量も減らせるからです。
Q. カリウムなどのミネラルは、どのような食材に含まれていますか?
A. 緑黄色野菜や果物、芋類・豆類に多く含まれています。むくみが気になる方は、塩分を控えると同時に、生の野菜や果物を意識して摂ることをお勧めしています。
Q. 塩分を控えるポイントはありますか?
A. 例えば、外食やお惣菜は塩分量も多いので、機会を減らすことを心がけるのは有効です。外食やお惣菜を利用するときは、麺類であれば汁・スープを残す、ソースや醤油などの後がけの調味料は使わない、既にかかっているときは外すなどで塩分摂取量は減らせます。特に汁物は、思っている以上に塩分が多いため、昼食の時などは汁物でなく温かいお茶にするなどで塩分を減らすことができます。
減塩してもむくみが解消しない場合、病院で腎臓やリンパ節などを診てもらえる? どんな治療があるの?
Q. 減塩や運動不足などを解消しても、むくみが変わらない場合はどうしたら良いですか?
A. 先ほども述べたように、何かの病気が隠れている可能性がありますので、病院で検査してもらうことをお勧めします。放っておくと、病気の発見や治療が遅れてしまうリスクがありますし、むくみの強い皮膚は、血流が悪くなるためうっ滞性皮膚炎を起こしたり、小さなケガが治りにくくなるため、大きなトラブルになったりすることもあります。
Q. どのようなむくみだと、早めの受診をした方が良いですか?
A. 夕方だけ足だけむくむ、塩辛い食事や飲酒が多かった翌日にのみむくむなどの場合、病気ではない可能性が高いですね。朝から浮腫があり、一日中続いている場合や片足だけの浮腫が続く場合などは早めの受診をお勧めします。また、高齢の方で、息苦しさやだるさ、食欲低下なども一緒にある場合は早めに受診してください。
Q. むくみで受診した場合、どのような検査をするのですか?
A. 若い方であれば、甲状腺機能を見るための血液検査、また腎臓の機能を見るための尿検査、血液検査、肝臓の機能を見るための血液検査などがあります。また心臓からの浮腫を疑う場合は、胸部レントゲン、血液検査なども行います。
Q. 病気からのむくみだった場合、どのような治療をするのですか?
A. 原因となっている病気の治療が優先されます。例えば甲状腺機能低下症があれば、さらに原因を特定するための血液検査や甲状腺エコーなどを行い、甲状腺ホルモンの内服という治療をすることが多いです。腎臓や肝臓からの浮腫の場合は、ほかの検査などから確定診断を行い、それに合わせて治療が選択されます。心不全の場合も、心エコーなどで心臓の評価をし、結果にあった治療をします。浮腫そのものは、利尿剤を使って、尿量を増やせば確実に減りますが、その治療が必要な場合と、むしろ脱水を起こすような危険性がある場合もあり、単純に利尿剤だけを使うということはあまりありません。
安達 晴己(すみれが丘そよかぜクリニック)
佐賀医科大学(現・佐賀大学医学部)卒業後、佐賀医科大学総合診療部(現・佐賀大学医学部附属病院総合診療部)総合診療部や流山中央病院内科、千鳥橋病院附属城浜診療所内科、在宅科などで、内科を中心にプライマリ・ケア、いわゆるかかりつけ医として診療所の外来や訪問診療で経験を積み、2022年11月から現職。日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
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