食物繊維が便秘に悪影響!? 便秘のあれこれを消化器内科専門医が解説


食物繊維が便秘に悪影響!? 便秘のあれこれを消化器内科専門医が解説

「便秘には食物繊維の摂取が有効」と一般的に信じられていますが、実は便秘にはいくつかのタイプがあり、タイプによっては食物繊維の摂取により症状が悪化してしまうケースがあるといいます。

食物繊維が便秘にいいと考えられている理由

Q. そもそも、なぜ食物繊維は便秘にいいと考えられているのですか?

A. 食物繊維の主な役割は「便のカサを増やすこと」と「腸内細菌のエサになり善玉菌を増やすこと」です(※1)。十分量の食物繊維を摂取することで、規則的な排便をするために、必要な便を腸内で作る材料になるとともに、腸内環境が改善されることで便秘が改善すると考えられています。
※1.参照:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「食物繊維の必要性と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html

Q. 十分量の食物繊維とは具体的にどのくらいの量になりますか?

A. 1日あたり女性で18g以上、男性で21g以上が目標とされています(※2)。食物繊維には「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」があり、主に「不溶性食物繊維」が便のカサを増やす役割を、「水溶性食物繊維」が腸内細菌のエサになり善玉菌を増やす役割をしています。1つの食品から偏って摂取せずに、様々な食品を組み合わせて2種類の食物繊維をバランスよく摂取することが効果的と考えられています。
※2.参照:厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

Q. 食物繊維は多く摂るほど良いのですか?

A. 実はそうではありません。食物繊維の摂取量が極端に少ない場合はもちろん便秘となりますが、便秘のタイプによっては食物繊維の過剰な摂取によって、かえって症状が悪化してしまうこともあるのです。自分がどのタイプの便秘なのかをきちんと見極めた上で、対処法を変える必要があると言えます。

3つの便秘のタイプ

Q. 便秘のタイプにはどんなものがありますか?

A. 便秘のタイプは大まかに「大腸通過正常型」「大腸通過遅延型」「機能性便排出障害」に分けられます。それぞれを簡単に説明すると「大腸通過正常型」は、大腸の動きは正常にも関わらず、ダイエットや偏った食生活などで便の材料が足りないために起こる便秘です。

Q. ほかの2つはどのような便秘なのでしょう?

A. 「大腸通過遅延型」は大腸の動きが悪く、腸の中にある便を肛門まで運べないために起こる便秘です。最後に「機能性便排出障害」は、便は肛門の近くまで来ているのにも関わらず、便意を感じなかったり、便をスルッと出せなかったりする事によって起こる便秘です。

Q. それぞれの便秘のタイプと、食物繊維との関係を教えてください。

A. 3つのタイプの中で、便秘解消に食物繊維の摂取が有効なのは「大腸通過正常型」のみです。残りの「大腸通過遅延型」や「機能性便排出障害」は、食物繊維の過剰な摂取をすると、かえってお腹が張って苦しくなってしまったり、便の出しづらさを感じたりしてしまう可能性があります。摂取するとしても、「不溶性食物繊維」は避けて「水溶性食物繊維」を選ぶと良いでしょう。

Q. 水溶性食物繊維はどんな食品から摂ることができますか?

A. 一般的に「食物繊維が豊富」というイメージの強いキャベツ・レタスなどの葉物の野菜は主に不溶性食物繊維です。水溶性の食物繊維は海藻類やコンニャクから多く摂ることができます。ほかに、2種類の食物繊維がバランスよく含まれる食品としてはバナナやキウイフルーツも代表的です。特にキウイフルーツは、食物繊維以外にも「アクチニジン」と呼ばれる蛋白分解酵素が含まれており、この成分も便秘に対して有効なのではないかと考えられています。

便秘に良い生活習慣

Q. 食物繊維のほかに、ヨーグルトも便秘にいいイメージがありますがどうですか?

A. ヨーグルトに含まれる乳酸菌は「善玉菌」の代表格の一種で、食物繊維によって症状が悪化するタイプの便秘症の方にも有効な場合があります。また、善玉菌のエサとなる「オリゴ糖(プレバイオティクス)」と組み合わせることで、より効果が高まると考えられています。但し、注意点が3つほどあります。

Q. ヨーグルトを摂取する際の注意点について教えてください。

A. 1つ目は、「乳酸菌」の中にも様々な種類の菌種があり、身体に合うものと、そうでないものに個人差があることです。2週間~1ヶ月程度摂取してみて効果が感じられない場合は、違う菌種を試してみましょう。2つ目は、「乳糖不耐症」の方が一定の割合でいることです。乳製品が体質的に合わないと感じる場合は、菌体のみを摂取できるプロバイオティクス製剤がドラッグストアでも購入可能なので、活用してみると良いでしょう。

Q. 3つ目の注意点はなんでしょう?

A. 3つ目は、食物繊維と同様にヨーグルトでもお腹のハリが悪化する場合があることです。ヨーグルトに含まれる「乳糖」や、プレバイオティクスとして紹介した「オリゴ糖」は、近年注目されている「FODMAP」と呼ばれる「腸内で発酵しやすい糖類」の一種です。お腹のハリが強く出る場合も、食品からではなくプロバイオティクス製剤を試してみると良いかもしれません。

Q. 食べ物のほかに、便秘を改善する方法はありますか?

A. 十分な睡眠・運動・腸壁マッサージが便秘改善に有効であると言われています。特に腸壁マッサージは1日15分程度で有効とされていますので、ライフスタイルを大きく変化させずに気軽に導入しやすいと思います。軽症の便秘の方には特に実践してもらいたいですね。

Q. 便秘で病院を受診した方がいいのは、どんな場合でしょうか?

A. 体重減少を伴う場合や、血便がみられる場合、50歳以上で発症した便秘、大腸疾患の既往歴や家族歴がある場合は、大腸がんなどの心配な病気が隠れている可能性が高いので、一度病院を受診して精密検査を受けることをお勧めします。その他、自己判断で下剤や漢方薬、サプリメントなどを長期間内服している場合は、大腸が薬に対する「慣れ」を起こしてしまい効果が薄れてきていたり、腸の動きが悪くなっていたりする場合があります。適切な便秘薬への切り替えについて、一度専門医に相談してみると良いでしょう。


石岡 充彬(品川胃腸肛門内視鏡クリニック)

2011年秋田大学卒。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研究会有明病院の内視鏡診療部にて研鑽を積み、2021年同院健診センター・下部消化管内科兼任副医長。2022年より品川胃腸肛門内視鏡クリニックの院長に就任。日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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