便秘薬の選び方を医師が解説 下剤の種類・成分や即効性・市販薬で改善しないときにおすすめの対処法は?
便秘で苦しいとき、便秘薬を頼りにする人も多いのでは? しかし、市販の便秘薬には色々な種類があり、どれを選んだらいいのか迷う人も多いと思います。市販の便秘薬の選び方や頑固な便秘の対処法について解説します。
つらい便秘解消の便秘薬はどうやって選べばいい? 酸化マグネシウム・非刺激性など便秘薬の種類や成分、効果・即効性を医師が紹介
Q. 市販の便秘薬は種類が多く、どれを選んだらいいか迷います。
A. 市販されている便秘薬は大きく分けて、2種類あります。1つが「刺激性便秘薬」で、腸を直接刺激して蠕動(ぜんどう)運動を起こし、便を排出させる薬です。もう1つは「非刺激性便秘薬」で、便の量を増やしたり腸に水分を集めて便を柔らかくしたりすることで便を排出させる薬です。そのほかに、「座薬」や「浣腸」もあります。
Q. それぞれ、含まれている成分も違うのですか?
A. はい。例えば、刺激性便秘薬は「ビサコジル」「センナ」「センノシド」「ダイオウ」などを主成分としています。一方、非刺激性便秘薬は「酸化マグネシウム」などが含まれています。
Q. どのように使い分ければいいのでしょうか?
A.
便秘の原因やタイプに合わせて選びましょう。一般的に、便秘は以下のタイプに分類されます。
・弛緩性便秘:腸の蠕動運動が弱いために便を排出できない
・直腸性便秘:便意を催さず、直腸に便が溜まってしまう
・痙攣性便秘:大腸が過緊張の状態となり、腸が痙攣を起こしている
・器質性便秘:胃、小腸、大腸、肛門などになんらかの疾患がある
Q. それらの原因に対して、どのように選べばいいのですか?
A. 日本人に最も多い弛緩性便秘の場合は、どの種類の便秘薬でも大丈夫です。他方、直腸性便秘の場合には、まず刺激性便秘薬か、あるいは浣腸や座薬などで一度すっきりさせてから、非刺激性の便秘薬を使いましょう。ただし、直腸性便秘は難治性のことが多く、市販の薬では埒が開かないことも少なくありません。その場合は1人で悩まず、医師に相談することをおすすめします。
Q. そのほかのタイプについてはいかがでしょうか?
A. 痙攣性便秘の場合、刺激性便秘薬を使うと癖になりやすく、ますます悪化しまうことがあります。この場合は便秘薬よりも、整腸剤や乳酸菌などを服用した方がいいでしょう。
便秘薬を選ぶ際の注意点 正しい飲み方・タイミング・頻度は? 便秘がひどい人は薬を毎日飲んでも大丈夫?
Q. 便秘薬を選ぶ際の注意点について、もう少し詳しく教えてください。
A. 便秘薬の中で最も一般的かつ、種類が多いのは刺激性便秘薬です。即効性があるものが多く、効き目を実感しやすいというメリットがありますが、その反面、お腹が痛くなることがあります。また、ずっと使い続けることで、ますます腸の働きが鈍って便秘がひどくなることもあります。その結果、どんどん薬の使用量が増えてしまいがちです。
Q. 非刺激性便秘薬には、どのような注意点がありますか?
A. 酸化マグネシウムなどマグネシウムを含む下剤はお腹が痛くなりにくく、癖になりにくいというメリットがあります。しかし、その一方で効き目が出るまでに時間がかかるというのがデメリットと言えるでしょう。
Q. それでは、刺激性と非刺激性はどのように使い分ければいいのですか?
A. 刺激性は、いざという時のレスキューのようなもので、決して毎日使用するものではありません。反対に、非刺激性は毎日服用することで、自然に近い形で便秘を解消する薬です。そのように使い分けるのがいいと思います。
Q. お腹が痛くならないよう、ハーブや漢方薬などを使うことはできますか?
A. ハーブや漢方薬だからといって、お腹が痛くならないというわけではありません。例えば、「大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)」や「センナ」は天然成分から抽出された便秘薬ですが、刺激性下剤に該当し、服用することでお腹が痛くなることもあります。
Q. 「ハーブや漢方薬だから安心できる」というわけではないのですね。
A. はい。「キャンドルブッシュ」もその一例です。現在、キャンドルブッシュを原材料として含む健康茶が多数市販されていますが、キャンドルブッシュにはセンナと同様、下剤の作用がある「センノシド」という成分が含まれているとの報告があります。国民生活センターは、「キャンドルブッシュを含む健康茶は、人によっては激しい下痢を起こす可能性がある」と注意喚起しています。キャンドルブッシュは「カッシア・アラタ」という名称でも知られたハーブですが、ハーブなど天然の植物だからといって、決して安心できません。
市販の便秘薬・下剤・整腸剤を飲んでも便秘が改善しないときの対処法 お通じの悩みは何科の病院を受診すればいい?
Q. 便秘がひどい場合は、ずっと飲み続けてもいいのでしょうか?
A. 刺激性便秘薬の場合は用法を守らなかったり、規定以上の用量を服用したりすると、かえって便秘が悪化するリスクもあります。一方、非刺激性便秘薬の場合は慢性的に使用しても安全とされていますが、稀に高齢者や心臓・腎臓に持病がある人は高マグネシウム血症を発症することがあるので、詳しくは医師にご相談ください。
Q. 便秘が改善しない場合にはどうしたらいいですか?
A. 薬に頼るだけでなく、こまめに水分を取ったり、食物繊維や発酵食品を積極的に摂取したり、適度な運動をしたりして生活習慣を改善しましょう。
Q. 生活習慣を見直すことも必要なのですね。
A. はい。1日3食しっかり食べることも大切です。そのほか、オオバコ科の植物の「プランタゴ・オバタ」や、難消化性デキストリンやイヌリンなど水溶性食物繊維を積極的に摂ることも、便秘の解消に役立ちます。
Q. 食事を見直したり、サプリメントを使用したりすることもいいのですね。
A. それから、朝一番にトイレに座るなどの習慣をつけることも、便秘の改善に役立つかもしれません。それでも便秘が改善しない場合は、早めに医師に相談しましょう。
Q. 便秘を放置すると、どのようなリスクがあるのですか?
A. 腸には免疫を司る機能があります。しかし、便秘で腸内環境が悪化すると免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなる恐れがあります。また、便秘で固くなった便を無理に排出しようとするとき、いぼ痔や切れ痔になることもあります。
Q. 様々なリスクもあるのですね。
A. さらに、自分では単なる便秘と思っていても、じつは大腸がんだったということもあります。特に、便秘治療をおこなってもなかなか改善しない人や、50歳以上になって初めて便秘になった人などは、大腸がんなどの警告症状かもしれませんから、早めに診察を受けることをおすすめします。
宮田 雅弘(天白宮田クリニック)
藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)医学部卒業。名古屋掖済会病院、春日井市民病院で勤務した後、藤田保健衛生大学消化管内科助教および同大学医学部客員助教就任。2016年、愛知県名古屋市に「天白宮田クリニック」を開院。苦痛の少ない内視鏡を得意とし、胃腸のトラブル、生活習慣病、切り傷の治療など、幅広い症状に対応。地域住民のかかりつけ医として、地域医療に幅広く貢献している。日本消化器病学会専門医、日本外科学会専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本医師会認定産業医。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
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