白内障手術にかかる費用は? 保険適用と自己負担額の実際を解説

高齢化が進むにつれて、白内障を発症する人の数も増加しています。白内障の治療では手術を行うのが一般的ですが、手術といっても保険適用になるものとならないものがあり、金額もさまざまです。実際、白内障手術にはどれくらいのお金がかかるのでしょうか?
白内障とは?
Q. 白内障の手術とはどのようなものですか?
A. 白内障を発症すると、目の中の「水晶体」と呼ばれる部分が濁ってしまいます。手術では白く濁った水晶体を取り出して、人工レンズを挿入します。
Q. なぜ、水晶体が濁ってしまうのですか?
A. 白内障の主な原因は加齢です。つまり、加齢に伴って水晶体のタンパク質が変性し、白く濁ってしまうのです。そのほかにも糖尿病やアトピー性皮膚炎、紫外線、ステロイド薬の長期使用、外傷、生まれつきといったことが原因になることもあります。
Q. 白内障になるとどのような症状が見られるのですか?
A. 水晶体はカメラでいうレンズに相当するもの。白内障になるとこのレンズが濁るため、視界が「かすんで見える」「見えにくい」「まぶしい」といった症状が表れます。放置することによって失明に至るケースは稀ですが、治療をせずにいると視力がどんどん低下するほか、急性緑内障発作などの合併症を引き起こすこともあります。
Q. 手術以外に治療法はないのですか?
A. 白内障の治療方法は、点眼治療と手術に分けられます。仕事や生活に支障が出ていない場合は点眼治療を行いますが、これは白内障の進行を予防するために行うものであり、水晶体を元の透明に戻す効果はありません。そのため白内障により、仕事や日常生活に支障が出てきた場合の治療は、手術を受けてもらうことになります。
白内障の手術とは?
Q. 具体的に、どのようにして手術が行われるのですか?
A. 角膜を2mm前後切開し、超音波を発生する吸引器具を眼の中に挿入します。そして眼の中に水を灌流(かんりゅう/流すこと)しながら混濁した水晶体の中身を吸引し、水晶体の薄い膜の中に眼内レンズを挿入します。手術は局所麻酔で行い、多くの場合入院の必要はありません。
Q. 白内障は一度手術を受けたら再発することはないのですか?
A. 眼内レンズは人工のレンズであり、水晶体の濁りは手術で完全に除去します。そのため、加齢に伴って再び白濁することはありません。ただし、なかには後発白内障を発症する人もいます。
Q. 後発白内障とはなんですか?
A. 手術の際には水晶体の薄い膜を残し、そのなかに眼内レンズを入れますが、その薄い膜が濁ってきてしまう場合があるのです。ただしこの濁りはレーザー治療で解消することができ、治療時間も約1分程度で済むので、それほど心配はいりません。
Q. 手術を受けることでどのような効果が得られますか?
A. 白内障によるかすみや眩しさが改善され、視力の回復が期待できます。白内障はゆっくりと進行するため、自分では気づかないうちに発症していることも少なくありません。そのため手術を受けたあと、視界が明るくなることに感動して「もっと早く手術を受ければ良かった」と話す人はとても多く見受けられます。
白内障手術にかかる費用について
Q. 白内障手術の費用はどれくらいですか?
A. 白内障手術の費用は、どんなレンズを選択するかによって大きく異なります。レンズによっては保険適用になるものもありますし、自費になるものもあるからです。たとえば現在最も多く使用されているのは、単焦点眼内レンズです。これは保険適用となるレンズで、近方・遠方・中間距離など、患者さんのご要望に沿ってどこか1か所の距離に焦点を合わせたものになります。合わせた焦点距離以外をしっかり見たい場合には、眼鏡が必要になります。
Q. そのほかにはどのようなレンズがあるのですか?
A. 多焦点眼内レンズといって、2か所以上の距離に焦点を当てたレンズで、近方・遠方・中間距離のうち2か所にピントが合うもの(2焦点)、3か所にピントが合うもの(3焦点)、ピントが合う範囲を少し拡張したもの(焦点拡張型)、近方・遠方・近中・遠中・中間の5箇所にピントが合うもの(5焦点)があります。多焦点レンズは選定医療または全額自己負担となりますが、選定医療であれば費用を抑えることができます。
Q. 選定医療とはなんですか?
A. 治療全体の費用のうち、一部のみ保険が適用になるもののことをいいます。白内障の手術における選定医療では、手術費用が健康保険の適用となりますが、レンズ費用と追加検査費用は自己負担となります。ただし国内で販売されている多焦点眼内レンズのみ、選定医療となり、外国から個人輸入するレンズはすべて自由診療になります。
Q. 全額自己負担の多焦点レンズにはどのようなメリットがあるのですか?
A. 国内で販売されている多焦点眼内レンズにはない、付加価値が得られるということです。たとえば5焦点レンズと3焦点レンズの違いを考えると、3焦点レンズの場合には距離が1〜2mの範囲はぼけることがありますが、5焦点レンズの場合にはそうしたリスクがありません。しかし3焦点レンズは国内で販売されていますが、5焦点レンズを使いたいと思った場合、海外から個人輸入するしかありません。このように、国内で販売されているレンズにはない付加価値を求めたいと思ったら、個人輸入のレンズを選択することになります。
Q. 海外から個人輸入したレンズの方が、最新ということですか?
A. はい。現在日本で販売されている多焦点レンズの大部分は、もとは海外で販売されていたものであり、日本で販売されるようになるまで数年間かかっています。そうしたタイムラグなく、最新の外国産レンズを使いたいという場合には、自費診療ということになります。
Q. それぞれ費用はどれくらいかかるのですか?
A. 保険適用の単焦点眼内レンズの場合、3割負担であれば片眼で約4万5000円になります。しかし自由診療の多焦点眼内レンズは使用するレンズや医療機関によって大きな差があります。目安として片目30〜100万円と考えると良いと思います。ただし、医療機関によって大きく異なるため、それぞれのレンズのメリットやデメリットなどを確認しながら医師に相談するようにしましょう。

湯田 健太郎(きくな湯田眼科)
2006年浜松医科大学医学部医学科卒業。2012年東京大学大学院 医学系研究科外科学専攻博士課程修了。2014~2018年横浜南共済病院 医長、2018~2019年横浜市立大学附属病院眼科 特任講師、2019~2021年ハーバード医科大学リサーチフェロー、2021年きくな湯田眼科 副院長、横浜市立大学附属病院眼科 客員講師。2023年日本大学医学部附属板橋病院眼科兼任講師。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
※記事内容は執筆時点のものです。
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