姿勢はなぜ悪くなるのか 姿勢改善のトレーニングを理学療法士が解説
普段の立つ姿勢、歩く姿勢が気になっている方は多いと思います。最近ではコロナ禍の影響により在宅ワークが増え、デスクワークによる不良姿勢の影響から不調を感じる方も増えているでしょう。今回は不良姿勢の特徴や改善するトレーニング方法について解説します。
姿勢改善のため、まずは良くない姿勢の特徴を知ろう
Q. はじめに、良くない姿勢とはどのようなものか簡単に教えてください。
A. 特徴的な姿勢としては、猫背といわれる丸まった姿勢と、腰をよく反りお腹がポッコリ出た姿勢の2つがあります。姿勢には骨・筋肉が大きく影響しており、骨折や何らかの異常が無い場合は筋肉の影響が大きいと言えるでしょう。姿勢の悪い状態が習慣化してしまっている、または、その姿勢が楽なために気が付かない内に自然とその姿勢になってしまっていることもありますので、普段から気にかけておくことが大切です。
Q. 猫背になっている方の特徴について教えてください。
A. リュックなど重い荷物を持つ、長時間のデスクワーク、農作業などかがんで作業する方に多い傾向があります。普段の日常生活から猫背のように背中が丸まっていると、猫背になりやすい状況以外でも自然と猫背になってしまっているということがあります。背中の丸まり・猫背には、背骨の周りに付いている脊柱起立筋という背筋を伸ばす筋肉が影響しており、この筋肉が硬かったり、弱くなっていたりすることもありますね。
Q. 続いて、腰をよく反っている姿勢の方の特徴について教えてください。
A. 一見すると背筋が伸びているようですが、お腹、特に下腹部がポッコリ出てしまっているような姿勢の方ですね。この姿勢の方は、歩いている時も足は外に向いてしまいやすく、ガニ股のような歩き方になってしまうのが特徴です。また、この姿勢の方は、腹筋や股関節の前にある筋肉が弱いこともあり、腰をよく反ると下腹部がポッコリ出てしまうのですが、姿勢が安定しやすいためこのような姿勢になることがあります。
姿勢が悪くなる原因や習慣とは? 運動不足は影響するのか
Q. 姿勢が悪くなってしまう悪い習慣などありましたら、教えてください。
A. 先述したとおり、長時間のデスクワークや習慣的な作業、農作業、重い荷物を持つことなどが挙げられます。特に最近ではスマホを長時間同じ姿勢で見続けるといったことが習慣としてある方も多いと思いますが、このような場合も悪い姿勢を取り続けていることになりますので、影響は出てくると考えられます。
Q. 姿勢悪化の原因は、やはり運動不足にあるのでしょうか?
A. 筋力の低下や体が硬くなるストレッチ不足も姿勢悪化の要因の一つとして考えられるため、運動不足ということも十分に考えられます。普段の日常生活では同じような動きを多くおこなうため、同じような部分の筋肉しか使わないことがほとんどです。運動をすることで普段の日常生活では使わない動きをする、それによって様々な筋肉を動かし、筋肉の本来の働きを取り戻すことが大切だと言えます。
Q. 体が硬いことも関係しているのですね。
A. そうですね。筋力が低下しているだけでなく、筋肉が硬く凝り固まっている状態も姿勢への影響を及ぼします。体が硬く、筋肉が本来の働きのように伸び縮みしにくい状態では、筋力を発揮することが出来ないため、ウォーキングやランニング、ストレッチなど体を動かすことの習慣が大切です。
姿勢改善のためにやるべきトレーニング方法を理学療法士が解説
Q. 姿勢改善のため、まずはどのようなことから始めると良いのでしょうか?
A. まずは準備体操やストレッチなどをおこない、体の柔軟性を保つことが大切です。怪我の予防にもなりますし、本来の筋肉の働きや力を発揮してもらうためにも柔らかさのある体作りが姿勢改善の基本となります。
Q. なるほど。準備体操やストレッチをおこなった後は、何をすればいいのですか?
A. 最初は軽めの運動からはじめ、運動を習慣化させるようにしましょう。姿勢の悪化も普段の習慣的な不良姿勢からの影響ですので、改善にも習慣が必要です。ウォーキングや軽めのランニング、ストレッチなど苦痛にならない習慣作りから始めると良いでしょう。
Q. 運動の習慣化ができれば、いよいよトレーニングに移るわけですね。
A. そうですね。背中にある脊柱起立筋やお腹にある腹筋を鍛えるトレーニングを中心におこなっていきましょう。脊柱起立筋はうつ伏せになり、背中を仰け反るように体を上げるようにしましょう。あまりにもしんどかったり、腰が痛かったりする場合は、腕や手を付いて支えながら頭だけ上げてみる、少し手や腕で押してサポートするように体を上げてみることから始めてみましょう。
Q. 続いて、腹筋のトレーニング方法についても教えてください。
A. 腹筋は仰向けになり、体育座りのように膝を曲げ、その状態から体を曲げるように起こしていきます。体が持ち上がらない場合は、頭だけ上げておへそをみる、足が浮き上がらないように引っかけるようにすると楽に起こすことが出来ます。また両手の指先で曲げている膝の頂点を少し触るだけでも、繰り返すことで効果はありますので、試してみてください。最初は5~10回程度を2~3セットと軽めに行い、慣れてくれば徐々にセット数、回数を増やしていき、習慣化させましょう。
Q. トレーニング以外にできることがあれば教えてください。
A. 運動だけでなく、仕事や作業の合間に両手を挙げて伸びをしたり、背中を反るように腰を伸ばしたりすることで、筋肉や心身のリフレッシュを図ることも、姿勢の改善に役立ちます。立って仰け反ることも有効ですが、腰が痛い場合は椅子の背もたれにもたれながら伸びをすると、腰への負担も軽減できるのでおすすめです。仕事の合間に何度かしてみるだけでも姿勢や集中力にも良い効果をもたらすことでしょう。
岡田 彰一(理学療法士)
関西理学療法専門学校卒業。専門学校卒業後、京都の総合病院へ就職。地域密着型の病院へ転職し、理学療法士を10年経験した後に言語聴覚士を取得。理学療法士、言語聴覚士のダブルの知識、技術の下に脳血管障害、運動器疾患、年間500名以上の誤嚥性肺炎や摂食嚥下障害の患者に関わり、多岐にわたる疾患と背景をもつ患者のリハビリ、支援などサポートを行う。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
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