疲労骨折って普通の骨折と何が違うの? 原因や対策について教えて!


疲労骨折って普通の骨折と何が違うの? 原因や対策について教えて!

「疲労骨折」という言葉はよく耳にしますが、日常生活で疲労骨折が起こることはあるのでしょうか。また普通の骨折と何が違うのでしょうか。疲労骨折の原因や発生のメカニズム、予防方法について解説します。

疲労骨折は負荷の蓄積によるもの

Q. 疲労骨折は普通の骨折と何が違うのでしょうか?

A. 普通の骨折は、強い衝撃が骨に加わることで起きますが、疲労骨折の場合は、運動などで骨に軽い負荷が繰り返し加わることで起きます。例えば、ゼムクリップや針金を繰り返し曲げると金属疲労によって折れますが、これと同じような原理です。折れるような負荷が何度もかかることによって骨が耐えきれなくなり、最終的に折れてしまいます。

Q. 疲労骨折になりやすいのはどんな人ですか?

A. 主に日々運動を行うスポーツ選手、また高校生や大学生など部活で激しい運動習慣のある人に疲労骨折は多くみられます。あらゆるスポーツで疲労骨折は起こっていますが、特に陸上の長距離、サッカー、バスケットボールなどは練習がハードになりやすく、疲労骨折になる人が多い傾向にあります。

Q. 疲労骨折は激しい運動をしない人でもなりますか?

A. スポーツをしていない人でも疲労骨折になる可能性はあります。身近な例としては、長期間の風邪などで咳を繰り返ししていると、肋骨への軽い衝撃が積み重なり疲労骨折を起こすことがあります。また、中高年の方は過度な長距離ウォーキングを繰り返していると、中足骨が疲労骨折をしてしまう危険性があるので注意が必要です。

疲労骨折は身体的要因と環境的要因で起きる

Q. 疲労骨折が起きる原因にはどのようなものがありますか?

A. 疲労骨折の原因には大きく分けて身体的要因と環境的要因があります。身体的要因は柔軟性の低さや筋力不足、非効率な身体の使い方、エストロゲンの分泌量減少による骨密度の低下などがあげられます。環境的要因は、指導者の方針によるオーバートレーニングやスポーツを行なっている地面の硬さや摩擦力、また自分に合っていない靴を履いていることなどが考えられます。

Q. 疲労骨折の発生率に男女で差はありますか?

A. 疲労骨折の発生率は男女差が激しく、男性より女性の方が3~8倍も多い傾向にあります。女性は激しいトレーニングによって月経不順、または無月経になることがあり、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少することで、疲労骨折が起こりやすくなっていると考えられています。エストロゲンの分泌量減少は骨の強さにつながる骨密度を下げ、骨の中をスカスカにしてしまうのです。このため女性の方が男性に比べ、疲労骨折しやすいとされています。

Q. 疲労骨折はどのように診断されますか?

A. 疲労骨折は痛みが出た直後に、レントゲンを撮っても病変は分からないことが多いですね。痛み始めの時期は骨の損傷も軽微なので、レントゲンに写るほど変化していないためです。しかし、レントゲンの診断で問題がないからと運動を続けてしまうと、症状を悪化させてしまいます。疲労骨折は早期発見、早期治療がとても大切です。診てもらう時には整形外科を受診した方がいいでしょう。レントゲン検査で骨折の診断がなくても痛みが長く続くようであれば、MRIやCT、骨シンチグラフィの設備がある病院を受診するようにしてください。

休んだだけではダメ! 疲労骨折しない身体づくりが大切

Q. 疲労骨折で手術することはありますか?

A. 疲労骨折は手術せずに自然治癒する症例も多くありますが、時には手術が必要です。痛みが出てから長期間たっていたり、「偽関節」といって疲労骨折部が癒合しない状態になっていたり、また統計的に完治しにくい部位の場合は手術することもあります。治療が長期にわたることも多く、適切なリハビリが必要となります。

Q. 手術を受けない場合、安静にしていれば治りますか?

A. 安静にしていれば骨折部に負担がかからなくなり、一時的に症状は改善されますが、スポーツを再開すれば、また同じように痛みが出てしまう場合が多いですね。そのため安静にしているだけではなく、疲労骨折した部分に負荷が集中してしまう原因を取り除く必要があります。まずは、靴などの環境的要因を見直し、身体的要因についても考えてみましょう。また、しっかり診断と治療をうけて、疲労骨折の完治を確認することが大切です。

Q. 身体的要因を改善するためにできることはありますか?

A. 身体的要因を改善していく過程の中で、特に大切なことは疲労骨折の原因となった動作や練習を分析して、骨に負荷が集中しない効率的な動き方を獲得していくことです。単純に柔軟性や筋力を改善したとしても、最終的な動作が変わっていなければ、けっきょく同じ負荷が身体にかかることになってしまいますので、総合的に身体的要因を改善していく必要があるのです。その他にも、丈夫な骨を作るためのカルシウムやタンパク質、ビタミン、女性ならエストロゲンの働きを助ける大豆食品などを多く取り入れたたバランスの良い食事をすることも大切です。こうした身体づくりは、疲労骨折の治療・予防だけでなく、復帰した後のパフォーマンスの向上にもつながるので、積極的に行なうことをおすすめします。


吉川 信人(理学療法士)

関西医療学園専門学校理学療法学科卒業。卒業後、京都の病院に就職。病院でのリハビリテーションを行う傍ら、女子サッカーチームのチーフトレーナーとしても活動。その後、ホッケー女子日本代表とホッケー男子日本代表のトレーナーとして海外遠征の帯同を歴任。現在は理学療法士やトレーナーとしての経験を活かして医療ライターとして活動中。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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