走りすぎ? 歩きすぎ? 足の裏・かかとが痛いときの対処法 原因は「足底腱膜炎」かも


走りすぎ? 歩きすぎ? 足の裏・かかとが痛いときの対処法 原因は「足底腱膜炎」かも

普段、あまり運動をしない人が長時間歩いたり、走ったりすると、足の裏やかかとが痛くなることがあります。これはいったいなぜなのでしょうか?

「歩きすぎたり走りすぎたりすると、足の裏やかかとが痛い」なにが考えられる?

Q. 長時間歩いた時など、足の裏やかかとが痛むことがあります。これはなぜですか?

A. もしかしたら、それは「足底腱膜炎」が原因かもしれません。足底腱膜炎とは、わかりやすく言うと、足の裏にある腱膜が炎症を起こしている状態のこと。足の裏には、かかとの骨から足指の付け根にかけて、繊維状をした腱が膜のように広がっています。これが歩きすぎにより、伸張性が低下したり、炎症を起こしたりしているのです。

Q. そもそも足底腱膜とはなんですか?

A. 足の裏はアーチ構造になっていて、土踏まずの部分が高く引き上がっています。この部分を引き上げる働きをしているのが、足底腱膜です。足底腱膜は土踏まずを引き上げることにより、足の親指側の付け根、小指側の付け根、かかと付近の3点でしっかり着地することができ、歩く・走るなどの動作の安定性が高まります。

Q. そのほか、足底腱膜にはどのような働きがあるのですか?

A. 足底腱膜には、歩行やランニング時の衝撃を吸収する働きがあります。日常生活において足底腱膜には「足を蹴りだすときに引っ張られる力(牽引力)」と、「足の裏にかかる体重や、足を着けたときの衝撃(圧迫力)」という2つの力がかかります。長時間歩いたり走ったりすると、足の裏に痛みが生じるのはこのためです。つまり、足の底が着地すると足底腱膜が伸ばされる状態になるため、足底腱膜がダメージを受け、痛みを発することがあるのです。

Q. どんな人が足底腱膜炎になりやすいのですか?

A. 日頃運動習慣のない人が、いきなり長時間歩いたり走ったりした時に発症しやすくなります。また、長時間立ち仕事をしたり、足に合っていない靴を履いたり、硬いアスファルトの上でトレーニングをしたりすることも原因となりますし、そのほか、足の筋肉が低下していることも原因になる時があります。

Q. 足底腱膜炎になると、どのような症状がありますか。

A. 一般的に、「長時間立ったり歩いたりしたあと、歩きはじめに痛みを感じる」「歩き始めは痛いが、10歩くらい歩いていると痛みは軽くなる。ただし、足の疲れが出てくると再び痛くなる」「ランニング開始時に痛みがあるが、運動を続けていると痛みは軽くなる。ただし、長時間走っていると、再び痛みが現れる」「かかとの内側の前を押してみると、痛みがある」といった症状が見られます。

症状を正しく見分けるために

Q. 同じような痛みで、ほかにはどのような病気の可能性がありますか?

A. もっとも一般的なのは足底腱膜炎ですが、そのほかにはアキレス腱付着部症の可能性もあります。アキレス腱は、ふくらはぎからかかとまでつながっていて、歩いたり走ったりする時に、ふくらはぎにある筋肉の力をかかとへ伝える役割を果たしています。そのため、長時間歩いたり、走ったりするとその部分に繰り返し力が加わることになり、アキレス腱とかかとの付着部分に痛みを生じてしまうことがあるのです。

Q. 先ほどの足底腱膜炎とアキレス腱付着部症は、どのように見分ければ良いのですか?

A. 一般に、足の裏のかかと周辺が痛くなるのは足底腱膜炎、ふくらはぎの下の、かかとの周辺が痛くなるのはアキレス腱付着部症と考えれば良いでしょう。ただし適切な治療を行うためには、医師による適切な診断を受けることが必要です。痛みや違和感を感じたら、早めに医師の診察を受けましょう。

足の裏やかかとが痛い時の対処法

Q. 足底腱膜炎やアキレス腱付着部症は、どのように治療するのですか?

A. まず大事なことは、原因を正しく追求することです。同じ時間、歩いたり立ったりしても、足が痛くなる人と痛くならない人がいるのは、一人ひとり、足の形や歩き方、立ち方、履いている靴が違うからです。そのためまずは問診や視診、触診などによって歩き方を見たり、可動域を見たり、筋肉の強さを調べたりして、原因を正しく追求することが必要です。

Q. そのあとは、どのような治療が行われるのですか?

A. まずは、足の裏にかかる負荷を軽減することが必要なので、運動を休養することをお勧めします。また、土踏まずをサポートするインソールを使うことも大切です。それから、体外衝撃波などによる治療が功を奏す場合があります。痛みがひどい場合は、ステロイド注射薬や抗炎症剤など、痛み止めの治療薬を使用することもあります。

Q. そのまま放置すると、どうなるのですか?

A. 足底腱膜炎も、アキレス腱付着部症も放置すると慢性化することがあり、何もしていなくても痛みを生じるようになってしまうことがあります。早めに整形外科で診察を受けることをお勧めします。

Q. 痛みを予防するためには、どうしたら良いのですか?

A. オーバーワークにならないようにしたり、練習量などをコントロールしたりすることが大切です。もちろん、足にしっかり合う靴を履くことも大事です。それから、足の柔軟性をあげたり、筋力を高めたりすることも、痛みの予防につながります。日頃から、足の裏やアキレス腱の周囲をストレッチするなど、柔軟性を保つようにしましょう。


前田 真吾(六本木整形外科内科クリニック 院長)

2008年聖マリアンナ医科大学卒業。聖マリアンナ医科大学病院整形外科学講座入局。同病院勤務、横浜市スポーツ医科学センターにて研鑽を積む。2018年より東京ひざ関節症クリニック銀座院勤務を経て2020年に六本木整形外科・内科クリニックを開院。自身のケガの経験から、「痛みでスポーツをあきらめる人を一人でもなくしたい」という強い信念をもち、「ありがとう」「来てよかった」と言われるクリニックをめざす。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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