歯科医が教える「歯周病を予防するセルフケア術」 健康な歯を保つための習慣づくりを解説!

歯周病は、日本人が歯を失う原因の第1位で「30代以上になると約8割がかかる」というデータもあります。その歯周病を予防するためには、毎日のケアや生活習慣を見直すことが重要です。
毎日のケアが決め手! プロがおすすめする歯周病予防のためのケア
Q. 歯周病予防における「歯磨き」の重要性について教えてください。
A. 歯磨きは歯周病予防において最も効果的な方法で、むし歯予防以上に効果が高いことが様々な研究で明らかになっています。とくに重要なのは「歯と歯ぐきの境目」の汚れを落とすことと、歯ぐきをマッサージして血流を改善することです。適切な歯磨きをすることで、歯周病の予防になるだけでなく、軽度の歯周病の進行を抑えることもできます。
Q. 具体的な磨き方のコツを教えていただけますか?
A. 歯ぐきへのマッサージを目的とするならば、歯ブラシの毛先を歯面に対して45度の角度で当て、小刻みに動かす「バス法」がおすすめです。また、奥歯など磨きにくい部分はヘッドが大きすぎると毛先が届きにくいため、その人のお口にあった小さめのヘッドの歯ブラシを選ぶことが大切です。さらに、歯ブラシの持ち方も重要で、強く握りすぎると歯ぐきを傷つけてしまう恐れがあります。「ペングリップ(鉛筆持ち)」を意識し、優しく丁寧に磨くようにしましょう。慣れないうちは、鏡を見ながら練習するのがおすすめです。
Q. 歯磨きの適切な頻度とタイミングについて教えてください。
A. 1日最低2~3回の歯磨きをおすすめしています。間食をする場合は、その都度歯磨きをしてください。加えて、1日のなかでも「就寝前」の歯磨きは、とくに念入りにおこなうことが重要です。就寝中は唾液の分泌量が減るため、口腔内に細菌が繁殖してむし歯や歯周病が進行しやすくなります。歯周病は夜間に進行することが多く、それが起床時の口臭の原因になることもあります。そのため、就寝前にしっかりと汚れ(プラーク)を落とすことで細菌の増殖を抑え、口腔内の健康を保つことが大切です。もちろん、起きた後も夜間に増殖した細菌を除去することが大事です。
Q. デンタルフロスや歯間ブラシは歯周病予防において必要ですか?
A. どちらも必要です。歯ブラシのみの清掃ではプラークの除去率が6割程度にとどまりますが、歯間ブラシやデンタルフロスを併用すると除去率は8~9割まで向上します。歯と歯の間の汚れを放置すると、部分的な骨の欠損や歯のぐらつきの原因となるため、これらの歯間清掃具の使用は歯周病予防において必須だと考えています。デンタルフロスは歯と歯の間が狭い人に有用で、接触部にフロスを通すことで歯ブラシでは除去できないプラークが除去できます。一方で歯間ブラシは、歯間部がやや広くなった状態の人に有用で、ブリッジのダミーの部分や場合によっては矯正器具の清掃も可能です。可能であれば用途に応じて、使い分けや併用してみてください。
Q. 使用時の注意点を教えてください。
A. デンタルフロスは、ワックスの有無や太さなど様々な種類があるので、歯間のサイズに合ったものを選びましょう。デンタルフロスを使用する際は、歯に添わせながら汚れをかき出すのがポイントです。歯間ブラシも同様に、自身の歯間サイズに合ったものを使用するようにしてください。歯間ブラシは歯ぐきを傷つけないように、歯の生え方に沿って斜め上向きに入れるのがポイントです。これらの正しい使用法については、必ず歯科医院で指導を受けることをおすすめしています。
歯周病予防には「生活習慣」も重要! 歯科医に学ぶ、健康な歯のための習慣づくり
Q. 歯周病予防のために気をつけたい生活習慣を教えてください。
A. 歯周病予防において最も重要なのは「規則正しい生活リズム」で、とくに睡眠と食事が非常に重要です。歯や歯周組織には修復の時間が必要ですが、不規則な食事や口内が汚れた状態が長く続くと、この修復の機会を奪ってしまいます。また、睡眠不足や疲労による免疫力の低下も、歯周病の進行や悪化につながってしまいます。以上のことは歯周病予防に限らず、全身の健康維持や体全体の免疫力を保つうえでも非常に重要です。
Q. 歯周病を予防するために控えたい習慣はありますか?
A. 「タバコ」は要注意です。タバコには、ニコチンをはじめとする数百種類もの有害物質が含まれており、喫煙によってこれらがお口の中に直接触れると、細胞を傷つけることが知られています。そのため、たとえニコチンが含まれない製品でも、口腔環境を悪化させる要因となるため注意が必要です。さらに、ニコチンを含む製品は末梢の血管を収縮させるため、血行が悪くなって組織の再生力を妨げてしまいます。また、過度な飲酒も血行を悪くする要因となるため、適量を心がけることが大切です。
Q. そのほかに、歯周病予防において意識したい生活習慣はありますか?
A. 歯周病予防において、ストレス管理も重要です。ストレスがたまると免疫機能が低下するほか、唾液の分泌量が極端に減少したり、唾液が酸性に傾いたりして歯周病のリスクを高める要因になります。そのため、適度なリラックスタイムを設けるなど、ストレス解消法を持つことも大切です。
歯科医が教える! 診療室でしか聞けない歯周病予防のポイント
Q. 普段の診療で心がけている歯周病予防のポイントは何ですか?
A. 患者さん一人ひとりのお口の状態は異なるので、まずはその人の汚れやすい場所や磨き残しの多い場所を評価し、それを患者さんにお伝えすることを大切にしています。実際に、プラークを染めだす薬剤を使って汚れた部分を可視化し、「ここが磨けていません」と具体的に示すことで、患者さんの意識が大きく変わることがあります。さらに、実際に歯磨きをしていただきながらその人に合わせたアドバイスをおこなうなど、具体的な指導を心がけています。
Q. 歯周病予防において、やはり歯科の定期健診は重要なのでしょうか?
A. そうですね。歯周病予防において、定期健診でのプロフェッショナルケアは必須です。その重要性は日本と北欧の比較からも明確で、とくに80歳時点での残存歯数にその差が大きく表れています。日本人の場合、80歳時点の平均残存歯数は平均14本であるのに対し、北欧では26本ほど残っています。この違いの最大の要因は、定期健診の受診率です。北欧では国民の9割が定期的に歯科健診を受けているのに対して、日本では3割程度にとどまっています。
Q. 歯科定期健診は、将来的に維持できる歯の本数にも関わってくるのですね。
A. 実際のところ、歯科定期健診を受けている人はほとんどの歯が残るのに対し、受けていない人は大幅に減少するという二極化が日本では起こっています。とくに歯周病の場合、歯ブラシでは届かない歯周ポケット内の汚れは、プロによる歯石除去や歯面清掃が不可欠です。したがって、一般的に3~6カ月に1回程度の頻度で、歯科定期健診を受けることを推奨しています。
Q. そのほかに、普段の診療で患者さんに伝えているアドバイスがあれば教えてください。
A. 近年、お口の健康と全身の健康との関連性が注目されています。とくに、糖尿病は歯周病との相関性が高く、歯周病が改善すれば血糖値も改善し、血糖値が良くなれば歯周病も改善しやすいという関係があります。そのほかも、歯周病は心筋梗塞や脳梗塞、認知症との関連性も指摘されています。「お口の健康を守ることは、全身の健康を守ることにも大きく関わっている」という点を、患者さんに丁寧に説明するよう心がけています。

溝口 久勝(ブランデンタルクリニック)
福岡歯科大学卒業。その後、広島大学病院研修医課程修了、複数の歯科医院で勤務医として経験を積む。2024年、広島県広島市に「ブランデンタルクリニック」を開院。患者さんの背景やニーズに寄り添い、痛みを抑えた治療とむし歯・歯周病の予防を重視する地域密着型の歯科医療を提供する。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
※記事内容は執筆時点のものです。
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