歯の詰め物(インレー)が取れる原因・対処法はご存じですか? 放置のリスクや注意点も歯科医が解説!
![歯の詰め物(インレー)が取れる原因・対処法はご存じですか? 放置のリスクや注意点も歯科医が解説!](https://cms.static.dhealthcare.net/7217/2464/1462/column_0820_img_1.png)
食事中に「ガリッ」と異音を感じ、鏡をみたら詰め物が取れていた…。こんな経験はありませんか? 今回は、詰め物が取れた直後の対処法や取れたまま放置するリスク、再セットのプロセスなどを医師に伺いました。
歯の詰め物(インレー)が取れた直後の対処法 取れた詰め物は持っていくべき? すぐに受診できないときはどうしたらいい?
Q. 歯の詰め物が取れたら、すぐに歯医者さんを受診した方がいいのでしょうか?
A. 時間が取れるようでしたら、早めの受診をおすすめします。その際、取れた詰め物が手元にあれば、捨てずにそのまま持参してください。
Q. 取れた詰め物は捨てずに持っていく方がいいのですね。その際、適切な保管法はありますか?
A. 詰め物に付着した食べかすを綺麗に落としてから、小さいチャック袋に入れて保管してください。ティッシュに包んで持参する人もいらっしゃいますが、詰め物にティッシュがくっついてしまうと除去に時間がかかってしまいます。また、ゴミと間違えて捨ててしまうこともあるので、できればチャックのついた袋か、もしくは小さな容器に入れて保管するようにしましょう。
Q. 旅行中や仕事が忙しいなどの理由で、すぐに歯医者さんを受診できない場合はどうしたらいいですか?
A. 詰め物が取れているところは歯が薄くなっている場合があるので、硬いものを噛むと欠けたり割れたりしてしまいます。歯が割れてしまうと今の詰め物が再利用できなくなるほか、最悪の場合、自身の歯が残せなくなる可能性もあるため、その歯ではできるだけ噛まないようにしてください。
Q. そのほかに、歯科医院を受診するまでに「やってはいけないこと」はありますか?
A. 稀に市販の瞬間接着剤を使って、自分でつけ直して来院する患者さんもいますが、これは絶対にやめた方がいいです。ご自身で詰め物を入れてもきちんとはまることはありませんし、浮いた状態でつけてしまうと受診までの間、ずっと噛み合わせが高い状態で噛むことになります。歯への負担が大きくなり、痛みが出る場合もありますし、取れたものを再利用するのが困難になります。
詰め物(インレー)が外れてしまう原因と取れたまま放置するリスク
Q. そもそもなぜ、詰め物が取れてしまうのでしょうか?
A. 保険の銀歯を例に挙げると、主に2つの原因があります。1つは接着剤の劣化です。市販のテープや接着剤と同様に、詰め物を歯につける接着剤(セメント)も時間が経つと劣化して、詰め物が取れやすくなります。2つ目の原因は、詰め物と自分の歯の境目にできるむし歯(二次むし歯)です。目では確認できない詰め物と歯の境目の段差や隙間からむし歯が発生して、中へ進行することで詰め物が取れてしまいます。
Q. 「接着剤の劣化」と「むし歯」のほかにも原因はありますか?
A. 噛む力も、詰め物が取れる要因の1つです。歯ぎしりや食いしばりなどで、接着剤の能力を超えるような過剰な力が加わると、詰め物が取れることもあります。また、過剰な力は詰め物が破損する原因になり得ます。さらに、詰め物は長年使い続けると徐々にすり減って薄くなることがあり、これも詰め物が取れたり、破損したりする原因となります。
Q. 外れても「痛くない」という理由でそのまま放置した場合、どのようなリスクがありますか?
A. 先述した「歯が欠ける・割れる」というほかに、「歯が動く」というリスクがあります。詰め物が取れたことで、隣の歯や噛み合う歯の間にすき間ができてしまうと、歯はそのすき間を埋めるように寄ったり傾いたりしてきます。そうすると、取れた詰め物を元には戻せませんし、歯が大きく動いてしまうと矯正治療が必要になることもあるため注意が必要です。
Q. 詰め物が取れたら早く受診した方がいいのは、「歯が動く」という理由もあるからなのですね。
A. 歯が動く現象は詰め物が取れてから徐々に進み、人によっては1週間ほどで取れた詰め物を元に戻せなくなってしまうため、できるだけ早い段階で受診しましょう。痛みがないからといって、放置するのはやめてください。放置した結果、歯が動き、治療に時間や費用がかかってしまうケースも少なくありません。したがって、治療を簡単に、短期間で済ませるためにも、時間を置かずに受診することをおすすめします。
詰め物が取れた時の治療法 詰め物が再利用できるケースとできないケース
Q. 詰め物が取れてすぐに受診したら、取れた詰め物をそのまま再利用できますか?
A. 接着剤の劣化だけが原因で歯にむし歯がなく、歯や詰め物が欠けたり変形したりしていなければ、基本的に再装着が可能です。また、むし歯がある場合でも、むし歯を取り除いた後に詰め物を戻して、歯との間にすき間がなければ再装着できることもあります。ただし、樹脂の詰め物の場合、多くのケースで欠けたり劣化していたりするため、再利用ができません。
Q. では、以上に当てはまらない場合は詰め物のやり直しが必要なわけですね。
A. そうですね。「歯にむし歯や欠けがあって、詰め物を戻してもすき間が空いてしまう」「詰め物に欠けや変形がある」「歯が動いて詰め物が元に戻せない」「樹脂が劣化している」などのケースに関しては、新しく詰め物を作り直す必要があります。
Q. その場合、治療はどのように進められるのでしょうか?
A. いずれのケースも基本的にはもう一度歯を削ってから型取りをして、新しいものを作っていきます。むし歯がある場合はむし歯を取ってから、むし歯がない場合は古い接着剤などを除去してから歯の形を整えて、歯型を取る流れです。
Q. 治療回数はどのぐらいかかりますか?
A. だいたい2~3回が目安です。来院当日に歯を削って型取りまでできれば、通常は2回の治療で新しい詰め物が入ります。ただし、予約状況によっては当日に仮詰めのみの応急処置となる場合もあるため、その場合は3回の通院が必要です。また、歯が大きく欠けたり、むし歯が奥深くまで進行したりしている場合は、これよりもさらに回数や時間がかかる場合があります。
![](https://cms.static.dhealthcare.net/8317/1766/0245/column_sv_img_125.png)
中牟田 晃博(ヒロ歯科クリニック)
明海大学歯学部卒業。2000年、東京都三鷹市に「ヒロ歯科クリニック」を開院。患者とのコミュニケーションを大切にし、本当に求めている治療計画を立案して、その計画に沿って可能な限り痛みの少ない治療を心がけている。日本歯科医師会所属。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
※記事内容は執筆時点のものです。
免責事項(Medical DOCサイトへ)
このコラムを読んだ方におすすめのアプリ
![](https://cms.static.dhealthcare.net/2116/6676/0393/firstcall.png)
アクセスランキング- RANKING -
![](https://cms.static.dhealthcare.net/3915/9775/4627/column_side_title01.png)