「完全栄養食」とは?栄養士が教えるカシコイ活用法
パンや麺、ドリンクなどさまざまな商品が販売されており、手軽に栄養を摂れるとして注目されている「完全栄養食」。「完全」という名前だけに、これだけ食べていればよいというイメージを持つかもしれませんが、実際どうなのでしょうか?
完全栄養食とは?
一般的に完全栄養食とは、厚生労働省「日本人の食事摂取基準」で示されている栄養素の摂取基準にもとづき、ビタミンやミネラル、食物繊維、タンパク質などをすべて摂取できるものを指しています。
サプリメントやほかの健康食品は一部の栄養素や成分が強化されているのに対し、完全栄養食はすべてのビタミン・ミネラルなどの栄養素を補給できるのが特徴です。
また多くの商品は、1食分をとることで1日に必要な1/3の栄養素を摂取できるとしています。
パン、パスタやラーメンなどの麺類、グミやクッキーなどの菓子類、ドリンクなど、商品のタイプはさまざまです。
完全栄養食だけ食べていればよいの?
結論からいうと、毎日・毎食、完全栄養食だけを食べるのはすすめられません。
「栄養面は完全なのでは?」「それだけ食べていれば大丈夫なのでは?」と考えてしまうかもしれませんが、健康へのデメリットがいくつか懸念されます。
・咀嚼回数が減ることで影響が起きる可能性がある(口まわりの筋肉の衰え、唾液減少による口腔内トラブル、満腹感を得られにくいなど)
・脂質の量が抑えられているものもあり、脂質不足による影響(皮膚炎など)を起こすことがある
・エネルギー不足となれば、筋肉量の減少、やせを招くことがある
また私たちは日本人の食事摂取基準に定められている栄養素以外にも、ポリフェノールや乳酸菌など、さまざまな機能性成分を食べ物から摂取しており、完全栄養食だけではその摂取機会も失われてしまいます。
「完全」とはいえ、頼りすぎるのは控えたほうがよいといえるでしょう。
完全栄養食のカシコイ活用法
「完全栄養食だけ」はすすめられないとはいえ、さまざまな栄養素が摂れる面を魅力に思う方も多いはずです。
完全栄養食を利用したい場合の活用法の例について、いくつかご紹介します。
食事の1品として
食事の1品として取り入れることで、先ほどあげたデメリットを避けられます。
たとえばパンや麺類を利用するのであれば主食として取り入れ、野菜やきのこなどの噛んで食べられるメニューや乳製品などと組み合わせるとよいでしょう。
手軽な朝食として
完全栄養食を手軽な朝食として活用するのもよいでしょう。食欲がない、また時間がないときに重宝します。
また朝食をとる習慣のない方でも、パンのタイプを選ぶと食べやすいでしょう。
遅い夕食のドカ食い防止に
夕食が遅くなる場合、空腹感からつい食べすぎてしまう方もいるのではないでしょうか?遅い時間に食べると太りやすいことが知られており、さらにドカ食いすることでカロリーオーバーの恐れがあります。
手軽に食べられるパン、クッキー、スムージーなどの完全栄養食を夕方ごろの「補食」として取り入れれば、夕食のドカ食い防止に役立ってくれるでしょう。
「バランスのよい食生活」は難しく感じるかもしれませんが、ひとつの食べ物に偏らず、さまざまな食べ物を取り入れることで実現しやすくなります。栄養不足が心配だからと完全栄養食に頼り切る前に、まずはできることからはじめてみませんか?
【参考・参照】
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
管理栄養士 / 広田 千尋
【執筆者】
これまでに500件以上の指導経験があり、ダイエットや生活習慣病対策はもちろん、妊婦から高齢者まで幅広い指導を経験。栄養指導、レシピ制作、栄養教室や料理教室開催などのスキルと知識を生かし、あすけんではコラム執筆やオンラインカウンセリングを担当。
引用:あすけん「ダイエットの知識」より