胃カメラ・バリウム・ABC検診の違いをご存じですか? メリット・デメリットも解説


胃カメラ・バリウム・ABC検診の違いをご存じですか? メリット・デメリットも解説

「胃カメラ(上部消化管内視鏡)」「バリウム」「ABC検診」の違いや各種検査のメリットとデメリットを、医師に伺いました。

胃部検査にはどんな種類がある?違いは?

Q. 胃の検査には、どんなものがありますか?

A. 一般的に「胃の検査」というと、胃カメラとバリウム検査が良く知られていると思います。

Q. それぞれについて教えてください。

A. 「胃カメラ」というのは通称で、正式には「上部消化管内視鏡検査」といいます。食道から胃・十二指腸までの粘膜を、小型カメラで直接観察することができます。

Q. どんな病気がわかるのですか?

A. 逆流性食道炎や食道がん、胃潰瘍、胃ポリープ、胃がん、十二指腸潰瘍などの病気を発見することができます。わかりづらい小さな病変も見つけやすく、その場で組織を採取して生検ができることも大きな特徴です。

Q. では、バリウム検査は?

A. バリウム検査は、正式名「上部消化管造影検査」というもので、バリウムを含む造影剤と発泡剤を飲み込んだあと、検査台で体を上下左右に動かすことで、胃の状態を撮影して検査するものです。

Q. どんなことがわかるのですか?

A. この検査では、基本的に胃の粘膜に付着させたバリウムを観察することで、胃の粘膜の荒れや潰瘍、胃がんなどによっておこる変化を見つけたり胃全体の形を観察したりすることができます。また、実際に造影剤が口から食道、胃から十二指腸へと流れていく様子を見ることができるのも大きな特徴です。

胃カメラとバリウム検査、それぞれのメリット・デメリットを教えて!

Q. それぞれのメリット・デメリットを教えてください。

A. 胃カメラは胃の粘膜表面の状態を詳しく見ることができ、確定診断や治療にも使えるという利点があります。一方で、検査に一定の苦痛を伴う可能性があり、人によってはのどの反射が強く、カメラの挿入がとても苦しいということもあります。ただし、こちらは麻酔を使うことで負担を軽減することが可能です。

Q. では、バリウム検査のメリット・デメリットは?

A. バリウムの検査は、胃の形全体などを俯瞰することができることや、胃カメラと比べると検査に伴う苦痛が少ないというメリットがあります。しかし、粘膜の表面の観察や確定診断、治療という点では、胃カメラのほうが優れていると言えるでしょう。また、バリウムによって便秘になったり、アレルギー症状が出たりする場合があります。

Q. 胃がんの早期発見のためにはどちらを受けたら良いのでしょうか?

A. 難しい質問ですね。胃がんにも種類があり、多くの場合はまず粘膜面に異常を来しますが、中にはスキルス胃がんといって、粘膜面にあまり変化がおこらずに胃の壁全体を這うようにがん細胞が広がるタイプのものもあります。「どちらを受けたら良い」ということはなく、主治医と相談しながらうまく組み合わせて受けていただきたいです。もうひとつ、胃がんの新しい検査方法として、「ABC検診」というのもあります。

血液検査で胃がんのリスクがわかる「ABC検診」を医師が解説

Q. 「ABC検診」とはなんですか?

A. 血液検査による胃がんのリスクスクリーニングのことです。胃がんそのものを見つけ出す検査ではありません。胃がんには「ヘリコバクター・ピロリ」の感染と、それに伴う胃粘膜の萎縮が強く関与しているものがあることがわかっているため、それらに着目することで胃がんのリスクをクラス分けしようというものです。

Q. もう少し詳しく教えてください。

A. まず、「ヘリコバクター・ピロリ」が検出されなかった場合(陰性)は、胃がんのリスクが最も少ない「A群」とし、「ヘリコバクター・ピロリ」は陽性で、胃粘膜の状態を表す「血中ペプシノゲン値」が正常である場合は「B群」となります。

Q. アルファベットのクラス分けにはどういう意味があるのですか?

A. AからDまでの階層があり、順に胃がんのリスクが高くなっていきます。

Q. さらにリスクが進むとどうなるのですか?

A. ピロリ菌が陽性、「血中ペプシノゲン値」が一定以下・胃粘膜の状態が「中等度萎縮」とみなされた場合がC群となり、「血中ペプシノゲン値」にて胃粘膜の状態が「高度萎縮」とされた場合は、最もリスクの高い「D群」となります。「D群」になると、ピロリ菌が胃粘膜に住めなくなるため、「ヘリコバクター・ピロリ」は陰性になります。

Q. 「ABC検診」ではそのようにして自分の胃がんリスクがわかるわけですね。

A. はい。もしハイリスク群に診断されれば、より積極的に胃内視鏡検査を受けていただくことが必要と判断できます。また、ピロリ菌に感染していた場合、除菌することにより、胃がんのリスクを下げることも可能です。また、低リスクと診断されたとしても、完全に胃がんのリスクがないわけではないので注意が必要です。


松井 太吾(まつい内科医院)

2008年に東邦大学医学部医学科卒業後、JA秋田厚生連 仙北組合総合病院(現・大曲厚生医療センター)にて初期研修医として勤務。 東邦大学医療センター大森病院消化器内科に入局、社会保険中央総合病院(現・JCHO 東京山手メディカルセンター)や日産厚生会玉川病院消化器内科への出向を経て、2019年から日産厚生会玉川病院 消化器内科にて勤務、現在はまつい内科医院副院長。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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