「首下がり症候群」をご存じですか?高齢女性に多い頭が前方に垂れ下がる疾患


「首下がり症候群」をご存じですか?高齢女性に多い頭が前方に垂れ下がる疾患

「首下がり症候群」という名称を聞いたことがあるでしょうか? 1992年に命名された、まだ広く認知されていない疾患ですが、高齢女性に多くみられ、患者さんが年々増えてきているそうです。症状や原因、治療法などについて医師に伺いました。

首下がり症候群とは? 医師が解説

Q. 「首下がり症候群」について教えてください。

A. 首下がり症候群は、首または背中が前方に折れ曲がり、頭が前方に垂れ下がる姿勢となってしまう疾患です。首を後ろへ反らす筋肉が、重度の機能不全となってしまう一連の症候群が首下がり症候群です。

Q. これまでに聞いたことがありませんでした。

A. そうですね。首下がり症候群は1992年に正式に命名されており、まだ比較的に世間の認知が高くない疾患です。

Q. どんな特徴がありますか?

A. 一般的に、70歳代以上の高齢女性に多いのが特徴で、頭が垂れ下がっているために前方を見ることができない「前方注視障害」という症状を呈します。また、常に首下がりの状態であることはまれで、たとえば朝方は全く問題なく、午後から首下がりが生じたり、歩行する時のみ次第に首下がりになって、座って休むと頭が上がるようになったりする患者さんがいます。

どうして首下がり症候群になるの? 症状は?

Q. どうして首下がり症候群になってしまうのですか?

A. 首下がり症候群の原因はさまざまで、外傷によるもの、頚椎の手術後におきる医原性のもの、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症、脳梗塞などの脳神経内科疾患によるもの、甲状腺機能低下症、うつ病、関節リウマチなどの自己免疫疾患によるものがあります。しかし、原因のわからない特発性の首下がり症候群がとても多いのが実際のところです。

Q. 首下がり症候群の症状について教えてください。

A. 私が診てきた経験では、先ほどの「前方注視障害」のほか、首こり(頚部痛)、肩こり、首下がりによる歩行障害などが見られることが多いです。ほかには、首が曲がっていることで嚥下障害となったり、首下がりにより顎が胸部にくっつき、口を大きく開く事ができない開口障害となったりします。

Q. 首下がり症候群はどのように診断されるのですか?

A. 診断のためには、問診・診察、特殊レントゲン撮影、CT撮影、MRI撮影、血液検査などをおこないます。なかでも問診と診察は特に重要です。レントゲン撮影は、とくに首から背中のどこで背骨が折れ曲がっているかなどを確認することができます。

首下がり症候群の治療法は?

Q. 首下がり症候群の治療にはどんなものがありますか?

A. 大きく分けると、装具療法やリハビリテーションなどの保存療法と、手術療法に分けられます。基本的には、まずは保存療法が選択されます。首をまっすぐ前を向いた状態に保持する装具を作成したり、首まわりの筋力トレーニングや首を含む背骨の柔軟性改善運動などのリハビリテーションをしたりするのが効果的です。たとえば当院では、首下がり症候群に特異的に有効なリハビリプログラムを開発し、実践しています。

Q. 手術療法についても教えてください。

A. 経過観察や保存療法を行っても改善が見込めず、通常の生活に大きな支障がある場合には手術が検討されます。一般的には首の後ろを切開して、首の骨(頸椎)にインプラントを設置し、矯正固定をします。


石井 賢(New Spine クリニック東京)

慶應義塾大学医学部卒業。アメリカ ジョージタウン大学とハーバード大学に留学後、慶應義塾大学整形外科専任講師と国際医療福祉大学整形外科初代主任教授、同大三田病院・成田病院副院長・脊椎センター長、慶應義塾大学整形外科特任教授を経て、2023年より現職。日本専門医機構整形外科専門医、日本整形外科学会(JOA) 日本整形外科専門医・脊椎脊髄病医・脊椎内視鏡下手術・技術認定医・リウマチ専門医、日本脊椎脊髄病学会(JSSR)脊椎脊髄外科専門医・脊椎脊髄外科指導医、臨床修練指導医、難病指定医。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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