摂食障害の初期症状と行動パターン、心理的な兆候を医師が解説


摂食障害の初期症状と行動パターン、心理的な兆候を医師が解説

摂食障害は、現代社会における健康問題の一つです。拒食症(神経性無食欲症)と過食症(神経性大食症)、またそれらを繰り返すタイプがあり、食事や体重に対する極端な考え方や行動によって、心身の健康に深刻な影響を及ぼします。

摂食障害ってなに? 精神科医が解説

Q. 摂食障害について教えてください。

A. 摂食障害は、食事や体重、体型に対する極端な考え方や行動が特徴で、拒食症(神経性無食欲症)と過食症(神経性大食症)の2つの主要なタイプと、さらにはこの2つを繰り返すケースなどがあります。これらの障害は、身体的・精神的に深刻な影響を及ぼすことがあり、適切な治療と支援が必要になります。

Q. 摂食障害の初期にはどのような症状があるのですか?

A. 過食・拒食どちらのタイプなのかは個人差もありますが、ごく初期であれば食べ物や体型・体重についての関心が徐々に強くなってくるほか、対人関係の変化、疲労感や睡眠の変化など、一見摂食障害とは無関係のような症状がみられることも多くあります。

Q. それぞれのタイプの症状や行動パターンも教えてください。

A. 拒食の場合は、急激に食事の量を減らしたり、特定の食べ物を避けたりするほか、食べたあとで過剰に運動しようとしたり、食べたもののカロリーを細かく把握しようとしたり、他人との食事を避けたりするといった傾向があります。加えて、自分の体重や体型に対して過剰な心配や不満を抱いたり、自分の価値を体重や体型に結びつけたりすることなどで、結果的に気分の落ち込みやイライラも増えてきます。さらには、体重が極端に落ちているのに「自分は太っている」と言い張るなどの特徴的な行動がみられるようになります。

Q. 過食の場合はどうですか?

A. 字のごとく食べる量が増えてきます。特に、短期間に大量の食べ物を一気に食べることが増えたり、その後に嘔吐や下剤の使用、過度な運動を行ったりするようになってきます。家族と同居している人は、食べ物を隠しておいて、家族が寝静まるなど、誰にも見られない時間に食べるようになったり、食事時間がまちまちになり、1日に何度も食事をするようになったりします。

どうして摂食障害になるの?

Q. どうして摂食障害になるのですか?

A. 現時点ではそこがよくわかっていません。摂食障害は、明確に原因を断定できるものではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症します。しかし、まず知っておいてもらいたいのは、摂食障害は「ただの大食い」や「極端な少食」とは全く異なる概念だということです。

Q. いくつかの要因には、例えばどんなものがありますか?

A. ストレスなどにより、セロトニンやドーパミンなど脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで起こりやすくなります。ほかには、思春期の女性に特に発症しやすいとも言われていますし、遺伝的要因もあるといわれています。とくに、繰り返しダイエットを行うことで、摂食障害の発症リスクは上がると言われています。

Q. そうなのですね。

A. はい。さらには、家庭環境や対人関係、社会的なプレッシャーなどがきっかけで発症する方もいます。モデルやバレリーナといった、体型や体重が重要視される職業に就いている方にも見受けられます。

「もしかして…?」摂食障害のサイン

Q. 摂食障害になりやすい人というのはいますか?

A. 「意思が強い人」や「美的な意識が高い人」などは、少し注意が必要です。私はよく「成功したダイエットは過食症の第一歩」と伝えることがあるのですが、「食べたい欲求を必死に我慢したらダイエットに成功した」といった成功体験が、摂食障害を引き起こすこともあるのです。

Q. 摂食障害を周りが早期に気づいてあげるにはどうしたら良いですか?

A. 急激な体重の変化や先述の症状がみられた場合はもちろんですが、トイレの回数の増加、歯の形の変化(歯のエナメル質減少による)、冷えや生理不順の訴えなども摂食障害のサインの可能性があります。

Q. 摂食障害が疑われた場合、どうすれば良いのでしょうか?

A. 現時点では明確な効果が立証されている治療法は確立されていない状態ですが、それでも程度にかかわらず、可能であれば一度専門家に相談することをお勧めします。過食症については、効果があるとされているお薬がいくつかありますが、いずれも日本では認可されておらず、扱っている医療機関はごくわずかです。過食症に悩んでいる人は、それでも探してみる価値はあると思います。


酒井 和夫(ストレスケア日比谷クリニック)

東京大学文学部、筑波大学医学群医学類を卒業後、長谷川病院を経て平成8年にストレスケア日比谷クリニックを開業。現在に至るまで、院長として精神科の一般臨床に携わる。精神医学、心理学に関する著書も多く、独協大学・筑波大学など、数か所の大学においても非常勤講師として精神保健一般についての講義を行っている。医学博士、日本精神神経学会精神科専門医・指導医、日本医師会認定産業医。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
免責事項(Medical DOCサイトへ)

医師への24時間相談サービス 詳しくは「first call」へ

このコラムを読んだ方におすすめのアプリ

医師への24時間相談サービス

相談し放題になる、「dヘルスケア」有料利用についてはこちら

健康に関するちょっとした相談にも、医師が丁寧に回答。チャットで24時間気軽に医師に相談できます。