「うつ病」と「自律神経失調症」の違いはご存じですか? 特徴的な症状・予防法も医師が解説


「うつ病」と「自律神経失調症」の違いはご存じですか? 特徴的な症状・予防法も医師が解説

「うつ病」も「自律神経失調症」も、働く人に多くみられる疾患です。しかし、発症のメカニズムや治療法などには違いがあり、診断基準も異なります。一体、どのような違いがあるのか、医師に解説していただきました。

うつ病と自律神経失調症の特徴

Q. うつ病と自律神経失調症の違いについて教えてください。

A. まずは、症状が異なります。うつ病の場合にはイライラ、不安、焦り、感情の喪失などの意欲の変化を主とした精神症状や、不眠、食欲低下、頭痛、疲労感などの身体症状がみられます。自律神経失調症は精神科の病名には該当しないのですが、同様の症状がみられます。ただし、自律神経失調症と比べてうつ病の場合は、精神症状が極度に強いという特徴があります。

Q. どういうことでしょうか?

A. うつ病の場合、「2週間以上、気分の落ち込みや絶望を感じる」「前ほど趣味を楽しめなくなったり、興味がなくなったりする」といった精神症状が、非常に重度になることがあります。自律神経失調症の場合には精神症状がみられても、うつ病ほど強くはありません。

Q. 自律神経失調症よりも、精神症状が強く出るのがうつ病ということですか?

A. はい、簡単に言うとそうなります。反対に、自律神経失調症に多くみられる症状としては、動悸やほてり、耳鳴りといった身体症状が挙げられます。うつ病でもこれらの症状がみられることがありますが、それほど強くはありません。

Q. それはなぜでしょうか?

A. 自律神経失調症は文字通り、自律神経が乱れることによって起きる疾患です。心臓の拍動や体温調節などは自律神経の働きによるものなので、この神経が乱れることでそうした症状が出現しやすくなります。

Q. 自律神経が乱れる原因はなんですか?

A. 様々なことが考えられます。仕事や経済的な事情からくる精神的ストレスが原因になることもありますし、生活習慣の乱れやホルモンバランスの変化なども関係しています。

うつ病と自律神経失調症では発症のメカニズムが違う

Q. うつ病を発症するのはなぜですか?

A. 自律神経失調症と同様、うつ病の場合も複数の要因が重なって発症すると考えられています。うつ病を発症する原因は明らかにされていませんが、精神的ストレスやもともとの性格、遺伝的要因などが発症に関係しているとされています。

Q. どちらもストレスを原因として発症するのですね。

A. ただし、発症の機序が異なります。自律神経失調症の場合には、ストレスがかかることによって交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、自律神経が乱れて発症します。一方、うつ病の場合にはストレスなどにより、セロトニンやドーパミンなど、脳内の神経伝達物質が少なくなることが原因で発症すると考えられています。

Q. 症状は似ているけれど、体内で起きていることが違うのですね。

A. はい。そのため、自律神経失調症とうつ病では基本となる治療法が異なります。自律神経失調症の場合には「睡眠時間をしっかりとる」「運動習慣を身につける」など、生活習慣の改善を中心にして、必要に応じて薬物療法や心理療法などをおこないます。心理療法とは認知行動療法など、心理的なアプローチでストレスの軽減を目指す治療法を指します。

Q. うつ病はどうやって治療するのですか?

A. うつ病の治療は、多角的にアプローチすることが大事です。抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などを用いた薬物療法をおこなうほか、認知行動療法などの心理療法も取り入れます。あわせて、生活習慣を改善したり、場合によっては休職したりするといった環境調整も必要です。

Q. どちらが治りにくいなど、違いはあるのですか?

A. 両方とも重度の場合には治療が長引くこともあるため、どちらの治療が難しいかは一概に言えません。早期に発見し、適切な時期に治療を開始することで早期回復が期待できるので、おかしいなと思った時点で早めに受診することが大切です。

うつ病と自律神経失調症の予防法

Q. うつ病や自律神経失調症の治療では、早期発見が大事なのですね。

A. はい。どちらも良くなったり悪くなったりを繰り返す疾患で、再発率も高いと言われています。また、場合によってはうつ病と自律神経失調症を併発することもあります。例えば、うつ症状を呈してから自律神経失調症を併発することもありますし、反対に自律神経失調症の症状が長引くとうつ病に進行したり併発したりすることもあります。そうした事態を防ぐためにも、早期発見が大切なのです。

Q. どのように予防すればいいのでしょうか?

A. どちらにも共通しているのは、ストレスが発症のきっかけになっているということです。そのため、日頃からストレスを発散する手段を身につけたり、ストレスを溜めないよう工夫したりすることはとても大切です。加えて、生活リズムを整え、3食バランスよくとったり、良質な睡眠を意識したりすることも重要です。

Q. ほかにも、予防法はありますか?

A. 湯船にしっかり浸かる、日中に30分でもいいので散歩をするなど、小さな事柄の積み重ねがストレスを緩和し、予防に役立ちます。また、最近では在宅ワークをしている人が多く、オンとオフの切り替えが難しくなっており、それが原因でうつ病や自律神経失調症を発症している人も増えています。そのため、意識してオンとオフを切り替え、仕事と自由時間のメリハリをきちんとつけるということも、予防のためには重要です。


副島 正紀(シモキタよあけ心療内科)

東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。その後、大森赤十字病院、東京都立松沢病院、東京都立小児総合医療センター、稲城台病院などで経験を積む。2024年、東京都世田谷区に「シモキタよあけ心療内科」を開院。日本精神神経学会専門医・指導医・認知症診療医。精神保健指定医。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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