「高血圧を放置すると全身に影響が出る」防ぐためにはどうしたらいい?


「高血圧を放置すると全身に影響が出る」防ぐためにはどうしたらいい?

健康診断などで「数値」を指摘されても、具体的な自覚症状に乏しい「高血圧」。たかだか血液の圧力の話だと受け止めてはいないでしょうか。はたして、どんな不具合が、いつ生じてくるのでしょうか。

高血圧とは?

Q. 高血圧は、心臓のプレッシャーが強まる病態なのですよね?

A. 具体的な弊害に注目するなら、心臓の病気というより「全身疾患」ですね。血液の高い圧力によって体中の血管が傷み、動脈硬化や各臓器の機能低下をもたらします。どの箇所、どの部位に機能低下が出るのかは個人差があり、それこそ脳からつま先まで様々です。

Q. 血圧が高くなると、むしろ血流はよくなるイメージです。

A. いいえ。高血圧が長く続くと、例えるなら「堤防の決壊による洪水」や「土砂崩れ」のような状態が、血管の内部に生じることもあります。血管で言えば、詰まったり出血したりする状況です。そうなると、血流は悪化して、より高い圧力をかけないと流れなくなってきます。そして、血管が詰まった先の臓器が悪くなります。通常、洪水を防ぐためには普段から堤防を強化すると思います。それと同じように、もし今は自覚がないとしても、高血圧を予防・治療をした方がいいということです。さらに、中年以降の高血圧は認知症との関連も言われています。脳卒中や認知症になったら怖いですよね。

Q. 症状がないから「何もしなくていい」では“ない”ということですか?

A. そうですね。ぜひ、無自覚のうちから高血圧対策をしていきましょう。例えば、腎臓に関して申し上げますと、腎臓が悪くなると最終的に血液透析が必要となります。透析というと糖尿病によるものというイメージをもたれているかもしれませんが、昨今「腎硬化症」といって、高血圧などによる動脈硬化が原因の透析患者さんが急激に増加傾向にあります。高血圧は症状のないうちからじわじわと体を蝕んでいくため、「サイレント・キラー(静かなる殺し屋)」とも言われています。したがって、症状がないから何もしなくてもいいというわけでは決してないのです。

Q. 高血圧対策に関連して、塩分摂取量の話題を耳にします。

A. 日本人の高血圧の大きな要因が「塩分のとりすぎ」です。高くなった血中の塩分濃度を水分で薄めようとしますから、血流量は増加します。その結果、血圧が高くなるということです。具体的には「1日6g以下にしましょう」と言われていますが、いきなり減塩を意識しすぎると味が薄く感じますので、ほんの少しずつ塩分量を減らしていくことをおすすめしています。

血圧値の正しい見方

Q. ところで、高血圧とみなされる血圧値はどれくらいなのでしょうか?

A. 診察室などでは、高い側の血圧値で140以上、低い側の血圧値で90以上です。そして、片方でも基準値を超えれば高血圧とみなします。なお、リラックスできるご自宅で計測する場合は、さらに「5」を引いてください。高い方で135以上、低い方で85以上です。

Q. 実際、血圧値134と135の差に意味はあるのでしょうか?

A. ないように思います。総じて、血圧値の高い方が130を超えたら要注意という印象ですね。ガイドラインによると、家庭血圧で上の血圧が「125-134」の場合は高値血圧、「115-124」で正常高値血圧といういわゆるグレーゾーンとなります。ただし、治療は家庭血圧「135-85」以上、診察室ですと「140-90」以上となります。家庭血圧が上がってくるようでしたら、ぜひ我々医師にご相談をください。

Q. 血圧は、高齢になると自然に高くなると聞きます。

A. たしかに、血管の老化が原因で誰にでも起こり得ます。ただし、喫煙などの好ましくない生活習慣などが背後にある場合は、まずはそちらから是正していくとよろしいかと思います。最近はお元気なご高齢の方も増えてきています。そのような方は積極的に治療をおすすめしています。ただし、ご高齢の方は様々な合併症をお持ちのことがあり、色々な薬を内服されてる場合が多いので、ほかの薬との“飲み合わせ”も考えながら治療をしていきます。

Q. 他方で、喫煙や塩分過多などによる高血圧であれば、見逃せないと?

A. はい。先ほど申し上げましたとおり、是正する点があれば、血圧が正常値のうちから是正すべきだと思います。一般に、高い方の血圧が160くらいまでなら、まずは生活環境の改善や運動療法で様子を見ます。それでも改善しない、あるいは最初から160を超えてくるようなら、薬も併用していきましょう。なお、投薬期間は患者さんの背景によります。血圧の数値だけで判断せず、例えば脳卒中後や心臓病、腎臓病のような持病、背景にあわせて血圧の治療もしていきます。

自宅計測の必要性

Q. 先ほど、自宅計測では「5」を引くという話がありました。もう少し詳しく説明をお願いします。

A. はい。できれば、自宅での血圧計測を習慣化していただきたいです。医師は、診察室でしか血圧の状態を調べられません。しかも、血圧は運動や代謝、ストレスなどの影響により、1日の中で変動します。ですから、健康診断を受けた瞬間の「たまたまの血圧値」だけでは、判断材料に乏しいですよね。

Q. 血圧を測るとしたら、1日のどのタイミングが適切でしょうか?

A. できれば1日2回が好ましいです。血圧が安定しているのは「就寝前」なので、このタイミングの血圧値をベースに置きます。いわば「血圧値の底を知っておく」イメージですね。一方、いわゆる「早朝高血圧」の有無を知っておきたいので、「起床後1時間以内、朝食前、服薬前」に計測してみてください。この就寝前と起床直後の“幅”を連続して追えると理想的です。どちらか1回であれば、「早朝血圧測定」でしょうか。血圧計のタイプとしては、心臓の位置に近い状態で計測できる「腕に巻くタイプ」を推奨します。

Q. そして、血圧が130近くになったら、測定データを持参して受診するわけですか?

A. そうしていただけると、非常に助かります。血圧は本来、時系列変化で見るべきです。例え、そのときの血圧が135だったとしても、全体で下降カーブになっていれば問題ありません。その意味でも、家庭血圧測定は非常に大切です。診察室で年に1回だけ測る血圧は、あくまでも断片情報ですからね。


宮田 和幸(宮田医院)

名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学病院第一内科ほか、各医療機関で循環器内科や総合内科の診療経験を積む。2013年、愛知県名古屋市に位置する「宮田医院」をリニューアル継承。内科全般を通じた地域医療・予防医療に努めている。日本内科学会認定内科医、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本糖尿病協会認定糖尿病認定医。日本心臓リハビリテーション学会、日本糖尿病学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本小児科学会、日本アレルギー学会の各会員。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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