高血圧による受診の判断は、そのときの数値よりも普段の様子を! そのために欠かせないのが「自己測定」という結論


高血圧による受診の判断は、そのときの数値よりも普段の様子を! そのために欠かせないのが「自己測定」という結論

年を取ると避けられない「高血圧」。血管の硬化と関係しているため、加齢による劣化が自ずと生じてしまうからです。そこで気になるのが、どのレベルになったら医療に頼るべきなのかという疑問です。高血圧になったときの上手な医療機関との関わり方を解説します。

高血圧とみなされるラインは?

Q. 「血圧が高くなった」と自分で気づくのは困難ですよね?

A. そうですね。高血圧の自覚症状はわかりにくいので、健康診断などをきっかけにするしかないと思います。飲酒や慣れない運動でドキドキするのは、高血圧そのものというよりも、交感神経が優位になると生じるアドレナリンなどのせいでしょう。もちろん、ベースとなる血圧が高ければ、強いドキドキ感を覚えるはずです。血圧コントロールには、こうした「ベースとなる血圧」と「上昇幅」の双方をウォッチしていくことが欠かせません。

Q. 「ベースとなる血圧」のコントロールは、なんとなくイメージできます。

A. そうかもしれませんね。「ベースとなる血圧」は血管の硬さで決まります。血管が柔軟なほど、心臓によるプレッシャーを受け止めてくれるからです。そして、動脈硬化の防止には、運動が効果的とされています。運動をすることで血流量が増加され、血管の柔軟性を保つとともに、動脈硬化の原因物質を流し去ってくれます。

Q. 他方の「上昇幅」のコントロールは、見当が付きません。

A. 「上昇幅」は血管の硬さに加えて、“自律神経の乱れ”で決まります。自動車のアクセルが交感神経で、ブレーキが副交感神経だとすると、「ブレーキの効きをよくする」必要があるということです。これに関連して昨今、注目されているのが、「肩こりと副交感神経」の関係です。副交感神経の通り道には肩や首の筋肉があるため、肩こりによって副交感神経を圧迫すると考えられています。

Q. ちなみに「高血圧」とされる数値は、いくつからなのですか?

A. 医療機関で測定した場合「最高血圧が140、最低血圧が90mmHg」以上とされていて、どちらか一方でも上回っていたら高血圧とみなされます。なお、ご家庭で計測できる場合は、「最高血圧135、最低血圧85mmHg」を目安としましょう。普段と異なった環境の医療機関では緊張されるかもしれないので、「プラス5」の上振れ幅を見込んでいます。

Q. その一方で、正常とされる血圧の数値はいくつですか?

A. 同じく診察室血圧で「最高血圧120、最低血圧80mmHg」未満、家庭血圧で「最高血圧115、最低血圧75mmHg」未満です。家庭血圧を測定する場合、起床後すぐか就寝直前がおすすめです。日中の血圧は、それまで何をしていたかによって上下します。

血圧対策のポイント

Q. そこで本題です。高血圧とされる数値が出てから受診すべきでしょうか?

A. それだと、すでに高血圧になってしまっていますよね。ご相談だけであれば、血圧の数値にかかわらず、いつでもいらしてください。そして、将来的な予防や自宅での計測が必要なのかどうかを話し合いましょう。もちろん、「今までどおりの生活で問題ありません」となる場合もあります。

Q. とはいえ、「そろそろ、血圧対策をはじめてみようかな」というきっかけが知りたいです。

A. 血圧を測る機会がないと、なかなかその気になれないと思います。その意味で、やはり企業健診や特定健診の結果が身近なきっかけになるのでしょう。また、血圧計は病院や役所などにも設置されていますので、見かけたら計測してみてください。とにかく血圧測定の機会を増やさないと、なかなか意識できないと思います。

Q. 血圧計を自分で買うのも手ですか?

A. もし、ご自身で購入されるとしたら、標準的な「腕に通すタイプ」を推奨します。指先で計るタイプの場合、指先が心臓より高い位置にあると低く出ますし、低い位置なら高く出ます。その点、上腕部は心臓の位置とほぼ同じ高さですから、正確に測定できるのです。また、最近では、アプリと連動できる血圧計も登場しているようです。

Q. 少なくとも、正常なうちに計測していれば対策もできますよね。

A. はい。そして、血圧のカーブが上がりはじめたら、早めにご相談しにきてください。診療所で計る血圧だけを断片的に診ても、そこまでの経過がわからないので、日々の計測結果をグラフに落とし込んでいただければ医師としても助かります。何が言いたいのかというと、ご家庭での生のデータ自体が貴重な判断材料になるということです。

普段から血圧を測るべき理由

Q. その一方で、「健診結果だけで様子を見よう」という人もいますよね?

A. はい。ですが、仮に健康診断が1年おきだとして、問われるのはその間の血圧です。1年の間に上回っている人もいらっしゃれば、下回っている人もいらっしゃるはずで、その区別が医師には追いきれません。

Q. 知らないうちに高血圧ラインをオーバーしている可能性もありそうですね。

A. そうですね。ただし、高血圧ラインをオーバーしたからといって、突然何かが起こるわけではありません。血圧が「高め」であることも、純然たるリスクです。なおかつ、「高め」である頻度も問われます。その意味で、「健診結果だけで様子を見る」のは不確実です。

Q. 健康診断の結果は「お墨付き」を与えてくれないということですか?

A. はい。断片的な情報が記載されているだけに過ぎません。「健康診断の数値を一喜一憂することに意味はない」と言われているのも、そのためでしょう。やはり、健康診断の間の1年を見ていただきたいです。


福本 淳(福本医院 院長)

神戸大学医学部医学科卒業。大学病院や民間医療機関で主に循環器外科の診療を積んだ後の2020年、大阪府大阪市に「福本医院」を開院。満足を重視した「質の高い医療サービス」の提供に務めている。医学博士。心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科修練指導者、日本外科学会外科専門医、日本循環器学会専門医。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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