「高齢者の血圧管理」日常生活で気をつけたい7つのポイントを介護福祉士に聞く

高齢者になると高血圧になる傾向にあります。高血圧自体によって、重篤な症状を起こすことは少ないですが、放置していると心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる疾患のリスクが高まります。健康な生活を送るために、日々の血圧管理はとても大切。そこで今回は、高齢者の日常生活で気をつけたい血圧管理のポイントについて、介護福祉士を取材しました。
「高齢者」と「高血圧」の関係とは? なぜ血圧は上がる?
Q. 高齢者になると高血圧になる傾向があります。なぜでしょうか?
A. 人間は加齢により様々な機能が低下していきます。血管もその一つで、高齢になるに従って血管の弾力性が低下する傾向にあり、これを「動脈硬化」と言います。動脈硬化により血流が悪くなると、心臓から強い力で血液を送り出す必要があるため、血管壁にかかる収縮期圧力が高くなってしまうのです。また、自律神経の働きが低下し、血圧変動のリズムが乱れ、血液がスムーズに流れなくなります。
Q. 老人性高血圧の特徴はどのようなものですか?
A. 血圧には「最高血圧」と「最低血圧」があります。最高血圧は心臓が血液を送り出すために、心臓の筋肉を収縮させた時の圧力ことで、収縮期の血圧、最大血圧とも言います。他方、最低血圧とは心臓の筋肉が最も広がった時の圧力のことで、拡張期の血圧、最小血圧とも言います。高齢者の場合、動脈硬化により最高血圧が高くなりがちですが、最低血圧の変化が少ないため、その差が大きくなることが特徴です。
Q. 高血圧になったらどうなりますか?
A. 多くの場合、自覚症状はありません。血圧が高いことで、頭痛やめまい、鼻血、肩こりなどの症状がみられることもあります。しかし、高血圧以外の理由でこのような症状となる場合があります。いつもより体調がすぐれない場合、まずは血圧測定をしたり、かかりつけ医へ相談したりするようにしましょう。
Q. 高血圧を放置していると、どのようなリスクがあるのですか?
A. 血管は体を構成する大切な組織の一つ。各臓器の働きと密接な関係性にあります。しかし、高血圧は目立った自覚症状がないため、つい治療を放置されがちです。その結果、いつの間にか心臓病(狭心症、心筋梗塞、心不全など)、脳卒中(脳梗塞、脳出血など)、腎臓病(腎不全など)、眼底出血(視力低下など)と、様々な疾患の原因となっている場合があるのです。発症を予防するため、まずは御自身の血圧値を知り、異常があれば治療して正常化することが大切です。
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Q. 高血圧の原因は何ですか?
A. 高血圧には次の本態性高血圧と二次性高血圧の2つがあります。本態性高血圧は遺伝的要素や生活習慣が因子とされており、高血圧は主にこのタイプです。主な原因としては、肥満やストレス、運動不足、喫煙、野菜、果物(カリウム、ミネラル)不足、塩分の過剰摂取、過食、自律神経の乱れなどです。二次性高血圧は血圧上昇の原因となる特定の因子があるものとされています。腎臓病や内分泌の病気などが該当します。
Q. 高血圧を防ぐためのポイントは何ですか?
A. 毎日の血圧測定と記録を習慣にしましょう。高血圧予防のためには、まずはご自身の血圧値を知ることが大切です。毎日、血圧測定と記録をしてみましょう。血圧計は市販されていますので、ご自宅でも毎日測定できます。ノートやパソコンへの記録を習慣化すれば、数値変化が分かり、大切なデータとしてかかりつけ医に見ていただくこともできます。
Q. 普段の生活で気をつけることについても教えてください。
A. ありきたりですが、「食事」「運動」「睡眠」ですね。日々の良好な食生活は高血圧予防に繋がります。塩分、脂質の多い食品、お酒の過剰摂取は動脈硬化を促進させますので注意が必要です。適度な運動は高血圧予防に必要です。ウォーキング、スロージョギング、ランニングなどの有酸素運動をややきついという程度に行うことが推奨されています。万歩計での計測など、無理なく楽しみながら始めてみましょう。また、良質な睡眠は高血圧へのリスクを下げ、全身状態の安定に繋がります。寝不足が続くと血圧が上がりやすくなりますので注意しましょう。
Q. その他、生活の注意点はありますか?
A. ストレスは高血圧、精神疾患など、様々な病気の原因の一つです。自分は何にストレスを感じ、どう対処したらいいのか考えてみましょう。病気の症状が出る前に、心療内科でカウンセリングを受ける方法もあります。普段から薬を服用している人は、かかりつけ医へ相談し、処方された薬は医師の指示通りに服用しましょう。飲み忘れを防ぐために、お薬カレンダー使用や手帳に記入するなどの方法があります。他者からのサポートが受けられるのであれば、都度チェックしてもらうと良いでしょう。悪い生活習慣は、高血圧をはじめ様々な病気の原因となります。食生活の乱れや運動不足、喫煙、過剰な飲酒、睡眠不足には気をつけましょう。
Q. 一人暮らしの高齢者の方が増えていると思いますが、高血圧について誰に相談したらよいのでしょうか?
A. 高齢者の一人暮らしでは病気に関する情報が入りにくく、症状進行が心配されます。かかりつけ医や訪問看護師、ケアマネジャー(医療と連携)などへ相談する方法があります。一人で抱え込まずに、まずは相談するようにしましょう。
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Q. 高齢者の高血圧の正常値はいくつですか?
A. 高齢者の血圧正常値は125~139/65~85mmHgと言われています。高齢者では収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧60mmHg未満に低下させると、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしやすくなるという報告があるので、注意しましょう。
Q. 高齢者の高血圧は放っておいても大丈夫なのでしょうか?
A. 高齢になると高血圧になる傾向にあります。しかし、放っておくと脳出血や脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、腎不全などを発症するリスクが高まります。血圧は1日の中でも変動しますので、日々のこまめな血圧測定が大切。データをかかりつけ医へ報告し、ほかの病気を発症させないよう心がけましょう。

大野 喜久弥(介護福祉士)
介護、福祉、医療特化ライター。在宅、施設、病院での介護現場と相談員業務を20年以上経験。介護支援専門員、介護福祉士、福祉用具専門相談員などの資格を有する。現在は介護や福祉、医療情報を分かりやすく伝えるライターとして活動中。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
※記事内容は執筆時点のものです。
免責事項(Medical DOCサイトへ)
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