繰り返す原因不明の顔や手足の腫れ・腹痛……遺伝性血管性浮腫かもしれません
遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema:HAE)という病気をご存知ですか。患者数が少なく、あまり知られていない病気の1つです。そのため、診断されるまでに多くの時間が費やされ、適切な治療を受けることができずにHAE患者が苦しむことが少なくありません。今回はHAEという病気について解説します。
HAEってどんな病気ですか?
遺伝性血管性浮腫(HAE)は遺伝子の変異が原因で体のいたる所に腫れやむくみを繰り返す病気です。主にC1インヒビターという血液の中にある物質の産生低下またはその機能低下により症状が引き起こされます。初めて症状が発現するのは10代から20代といわれています。HAEは珍しい病気のため希少疾患に該当し5万人に1人の頻度で罹患しているという報告があり、日本でも約2,500人の患者さんがいると考えられています。しかし診断率は20%と低く、治療を受けたことがある人は約450 人で、初発から診断までに平均15.6年要すると報告されています。
HAEにはどのような症状がありますか?
全身に繰り返す腫れやむくみが特徴で、皮膚と消化管に多く起こります。消化管に腫れやむくみが生じた場合、腹痛などの消化器症状が現れます。症状の多くは発症してから24時間程度でピークを迎え、数日で自然に消失します。
【HAEの主な症状】
皮膚:顔面やくちびるの腫れ、手足、腕、足の腫れ など
腹部:激しい腹痛、腹部膨満感、吐き気・嘔吐、下痢 など
咽頭:嚥下困難、声が変わる、声がかれる、発声困難、呼吸困難感や息苦しさ など
HAEかも……どのような検査がありますか?
HAEの診断では症状や問診からHAEが疑われる場合に血液検査が行われます。
医師の問診に答える際には、ご自身の腫れやむくみ、腹痛についての特徴を把握しておくとよいでしょう。こちらのセルフチェックシートで自分の症状と照らし合わせてみてください。
HAEには遺伝的な要因があり、すべての患者さんに当てはまるわけではないですが、家族に同じような症状を経験した人がいる可能性もあるので、受診の際には家族の症状についても事前に確認しましょう。また抜歯や歯科治療、生理、妊娠や出産も発作を引き起こす可能性があるので、思い当たる症状があれば主治医に相談しましょう。
HAEの治療は?
いま出ている症状を抑えるための治療(急性発作時の治療)と発作が起きないように予防的に行う治療があります。現状HAEそのものを治す治療はありませんが、正しい治療を受けることで、普段と変わらない生活を送ることが可能です。自身の病気がHAEだと正しく診断を受けられるようにHAEの相談が可能な病院へ受診することをお勧めします。
HAEと診断されずに症状に悩まされている方々に対して、正しい診断をして適切な治療に導くことで苦しみを救いたい、そんな思いを共有する医療従事者、学会、患者団体、製薬企業、IT企業などが協働し、それぞれの専門性や創造性を通じて、日本における適切な早期診断および診断率の向上を目指しているのが「一般社団法人 遺伝性血管性浮腫診断コンソシアーム(DISCOVERY)」です。
HAEについて詳しく知りたいと思われたら、「HAE-info」をご覧ください。
記事監修医師:広島大学病院皮膚科 教授 田中 暁生先生
2000年広島大学医学部卒業。2005年に同博士課程を修了し、同大学院皮膚科にて、かゆみが起こるメカニズムについて研究を行う。
アトピー性皮膚炎の診療では、患者さんへの適切な外用の方法や日常生活の工夫についてアドバイスを行い、日常生活で困っている多くの患者さんを救っている。
体のいたる所に腫れやむくみを繰り返す「遺伝性血管性浮腫(HAE)」の早期発見を目指し疾患啓発を行う「一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(DISCOVERY)」に所属し、未診断患者向けの疾患啓発を行うワーキンググループの統括リーダーとしてメディア活動を多数行っている。
記事提供:「一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム (DISCOVERY)」
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「一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム (DISCOVERY)」
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