「緑内障」を眼科医が基礎から解説 白内障との違いは? 症状・治療・手術について知る


「緑内障」を眼科医が基礎から解説 白内障との違いは? 症状・治療・手術について知る

「見づらくなった」「ぼやけてはっきり見えなくなった」のは、歳のせい以外に病気の可能性もあります。もし病気があれば適切な治療を受けることで、症状が改善したり、進行を遅らせたりすることができます。

緑内障とはどんな症状が出る目の病気? 「眼圧が高い」人が発症する疾患なの?

Q. 「緑内障」とはどんな病気ですか?

A. 目の中の網膜に写った映像は、視神経から脳に伝えられることで、私たちはそれを視認しています。緑内障はその視神経が傷つくことにより視野(見える範囲)が狭くなっていく病気です。

Q. どんな症状が出るのですか?

A. 隅角(ぐうかく/角膜の内側と虹彩で囲まれた部分)が広い「原発開放隅角緑内障」、眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障では早期~中期にかけては自覚症状がほとんどありません。なぜなら脳には、視野が欠けてもその部分を補う機能があるからです。また両方の目で見ているので、片目の視野が欠けても、もう片方の目で補ってしまいますし、見えない部分があっても目を動かせば見えてしまいます。しかも緑内障は基本的にゆっくり進んでいくので変化がわかりにくく、かなり悪くなるまで発見しにくいのです。

Q. 発見が遅れるとどうなるのですか?

A. 隅角が狭い原発閉塞隅角緑内障やその前駆病変(病気になる前に表れる異常)では、眼圧が急激に上昇する急性緑内障発作を起こすことがあります。この場合は眼痛、頭痛、視力低下、霧視(ぼやけて見える)、虹視症(光の周囲に虹が見える)、充血、悪心、嘔吐などの症状があり、適切な治療をしないと数日でかなり視神経が障害されてしまいます。

Q. なるほど。単なる見え方の問題では済まないのですね。

A. はい。ほかの目の病気や全身の病気、薬物が原因となって眼圧が上昇する「続発緑内障」も、進行が速いことも多いため、早期に原因を診断し、原疾患を治療する必要があります。そのほか、目の発達異常や小児期に発症した病気が原因となる「小児緑内障」もあります。角膜(黒目)径の拡大、角膜の濁りがあれば眼科受診が必要です。

Q. 緑内障の原因はなんですか?

A. 目の中は、房水という液体の流れ具合により一定の圧が保たれています。これを「眼圧」といい、日本人の平均眼圧は14.5mmHgで正常範囲は10~20mmHgです。眼圧が高いと視神経が圧迫されて傷つくため、視神経が減少し緑内障になります。さらに、眼圧が正常範囲でも視神経が弱いと緑内障になります。実は、日本人ではこの「正常眼圧緑内障」が、一番多いのです。

Q. どんな人が緑内障になりやすいのでしょうか?

A. 40歳以上の日本人の17人に1人が緑内障と言われていて、この割合は年齢が上がるとさらに増加していきます。あとは、近視の方や家族に緑内障の方がいらっしゃる場合も、緑内障にかかりやすいです。

Q. 似た名前ですが、白内障とは違うのですか?

A. 目の中のレンズ(水晶体)が、主に加齢によって濁る状態が白内障です。水晶体が濁ることで、まぶしさを強く感じたり、ピントが合いづらくなったり(視力低下)します。白内障は老化によって出てきますので、人により早い・遅いはありますが、誰もがかかります。しかし、緑内障と違って白内障はある程度進行しても、手術により視力を回復させることができます。

緑内障は治る? 眼圧を下げるレーザー手術や点眼薬で治療するって本当?

Q. 緑内障には、どんな治療法があるのですか?

A. 先述の通り、狭くなった視野を元に戻したり、視力を改善したりなど、緑内障自体を完治させることはできません。眼圧を下げて視力や視野を維持することが目標となります。あくまでも治療は、緑内障の進行を遅らせるためのものです。治療法は薬物治療、レーザー治療、手術治療の3つがあります。

Q. 薬物治療はどのようなものですか?

A. まずは「房水の排出を促す」目薬や、「房水の産生を抑える」目薬などを使います。点眼回数は1日1~2回ですが、1つの点眼薬で十分に眼圧が下がらない場合は、複数を組み合わせて点眼していただきます。

Q. 点眼薬に副作用はありますか?

A. 点眼薬の眼圧下降効果や副作用ともにかなり個人差がありますので、様子を見ながら一剤ずつ慎重に投与していく必要があります。

Q. では、レーザー治療について教えてください。

A. 眼圧をコントロールしている房水は隅角から目の外に排出されるのですが、この隅角が狭くなって房水が排出されにくくなり、眼圧が上昇する閉塞隅角緑内障と、隅角は広いが排水路の目詰まりが原因で眼圧が上昇する開放隅角緑内障があります。閉塞隅角緑内障は、隅角を広げるために虹彩の根もとにレーザーで小さな穴をあける治療(レーザー虹彩切開術)を行ったり、ほかには早めに白内障の手術をしたりします。

Q. 開放隅角緑内障のレーザー治療は?

A. 開放隅角緑内障は房水の排水路にあたる線維柱帯というところにレーザーを当てて目詰まりを取り、房水の排出をスムーズにして眼圧を下げる治療(隅角光凝固術)をします。隅角光凝固術は昔から行われていますが、最近では目詰まりを起こしているところだけに作用するSLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)が使われるようになり、治療成績が向上しています。点眼薬が目に合わない方や毎日点眼するのが困難な方、薬物治療だけでは十分眼圧が下がらない方、妊娠をご希望の方にお勧めです。

Q. レーザー治療はどのような流れで行われるのですか?

A. 点眼麻酔を行い、治療専用のコンタクトレンズを目に装着してもらって行います。所要時間は10分ほどで、痛みもなく終了します。

緑内障手術はどんなことをするの? 入院の必要はある?

Q. では、手術治療はどうですか?

A. 手術療法は、薬物療法やレーザー治療で十分眼圧が下降しない場合、ある程度眼圧は下降していても視野が悪化してしまう場合に行われます。手術方法としては2種類あり、(1)隅角の「線維柱帯」を切開して房水が排出しやすくする手術、(2)房水を結膜下へ流す排出路を作る手術があります。入院での手術が多いですが、日帰りで行っている医療機関もあります。

※公益財団法人日本眼科学会「緑内障治療」
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/treatment/item05.html


南野 麻美(神楽坂みなみの眼科)

日本医科大学卒業後、同大学付属病院眼科、東京警察病院、二本松眼科病院、日本医科大学付属病院 眼科非常勤講師を経て、2012年5月、神楽坂みなみの眼科を開院、院長となる。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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