「緑内障手術」を受ける前に知っておきたいポイント・注意点を眼科医が伝授


「緑内障手術」を受ける前に知っておきたいポイント・注意点を眼科医が伝授

眼圧を下げることで症状の改善を目指す「緑内障手術」。多くの眼科でおこなわれている一般的な治療法ですが、手術を受ける前に眼科医に確認すべきことがあります。手術を成功へ導くためには、どのような点に注意しなければならないのでしょうか。

緑内障の治療法

Q. 緑内障には、どのような治療法があるのですか?

A. 一般的には、目薬や内服薬などの薬物療法やレーザー治療、手術などをおこないます。

Q. 手術をすることによって緑内障は治るのですか?

A. いいえ、残念ながら現在の医療では緑内障を完治させることはできません。そもそも、緑内障は網膜の中にある神経節細胞が障害を受け、視野欠損が生じる疾患です。一度生じた視野欠損を元に戻すことはできません。ただし、治療をすることによって眼圧を下げ、症状がそれ以上進行しないようにしたり、進行を遅らせたりすることはできます。

Q. 手術が適応になるケースについて教えてください。

A. 多くの場合、まずは薬物療法が基本となります。現在では様々な点眼薬が開発されており、緑内障のタイプや重症度などを考慮しながら処方されます。しかし、点眼薬でも眼圧が下がらなかったり、症状の進行を食い止めることが難しかったりする場合には、レーザー治療や手術を検討します。眼圧値や緑内障の進行程度によっては、最初の治療としてレーザー治療や手術治療を提案することもあります。

Q. レーザー治療と手術の違いは?

A. レーザー治療とは、目を切らずにレーザーを照射することによって眼圧を下げる治療を指します。その一方、手術は目にメスを入れることで眼圧を下げます。レーザー治療の方がメスを入れなくて済む分、回復が早く、体への負担が少ないというメリットがありますが、手術の方が、眼圧を大幅に低下させる効果が期待できます。

緑内障の手術とは?

Q. 緑内障の手術は、どのようにしておこなうのですか?

A. 様々な術式があります。例えば当院でおこなっている「MIGS」という方法があります。日本語に訳すと低侵襲緑内障手術となり、その名の通り、体に負担が少ない緑内障手術です。

Q. 体に負担が少ないというのはいいですね。

A. MIGSは点眼麻酔のみでおこなうことができ、手術の所要時間も5~10分程度で済みます。術後の視力低下期間も短縮され、重篤な合併症の頻度も従来と比べて少ないというメリットがあります。しかしその反面、従来の手術と比べて眼圧を下げる効果は低いというデメリットがあります。ただし、点眼薬を併用することで眼圧を目標値へ近づけることは可能です。

Q. ほかには、どのような術式があるのですか?

A.線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)」という術式もあります。眼圧が高い、もしくは眼圧は高くないが視野障害が進行する、ほかの治療では改善できないといった場合におこなわれます。線維柱帯切除術は幅広い種類の緑内障に有効とされていますが、術後の視力低下、白内障の進行、前房消失、悪性緑内障、濾過胞からの感染などの合併症リスクがあります。

Q. ほかにもありますか?

A.インプラント手術(エクスプレス・プリザーフロ・アーメド・バルベルト)」は、ほかの治療法では期待した効果が得られない場合や、過去に目の手術をしたことがあるといった難症例に対して用いられる手術です。インプラント素材は、この10年間で続々と登場してきましたが、各デバイスによって特徴は異なります。緑内障の病型や進行具合を確認しながらデバイスを選択する必要があります。高度な技術と知識を必要とするため、手術が可能な施設は限られています。

緑内障手術の前に確認すべきことや注意点

Q. 緑内障の手術を受けるにあたり、気をつけることはありますか?

A. まずは、合併症について確認しておきましょう。術式によっても異なりますが、手術には多少なりとも合併症のリスクが伴います。例えば、術後感染や駆逐性出血などは、発症する確率は低いものの、失明に至る重篤な合併症です。どのようなリスクがあるのか、事前に確認しておくようにしましょう。

Q. 手術後の注意点もあれば教えてください。

A. 手術後は、出血や炎症などによって眼圧が上がることもあります。反対に、眼圧が下がりすぎる場合もあり、手術後は眼圧が変動しやすくなっています。そのため、眼圧が安定するまでは経過観察のために通院が必要になります。また、必要に応じてレーザー照射や眼内の処置をおこなうこともあるので、そうした可能性についても確認しておきましょう。

Q. そのほか、気をつけることはありますか?

A. 術後、おこなってはいけないことがあります。例えば、術後早期は手術の傷口が完全には閉鎖されていないため、強い刺激を受けると傷口が開いて回復が遅れたり、感染リスクが高くなったりすることがあります。また、術後1週間は保護メガネを装用する、車やバイクの運転は医師の許可が出るまで控えるなど日常生活での注意点があるため、必ず術前に確認しましょう。


庄司 拓平(小江戸眼科内科 白内障・緑内障・糖尿病クリニック)

防衛医科大学校卒業。その後、防衛医科大学校病院専門研修医、行定病院眼科医長、埼玉医科大学眼科准教授などで経験を積む。2022年、埼玉県川越市に「小江戸眼科内科 白内障・緑内障・糖尿病クリニック」を開院。医学博士。日本眼科学会専門医、日本緑内障学会評議員、日本視野画像学会評議員、日本レーザー医学会評議員、日本眼科手術学会学術委員。日本網膜硝子体学会、日本眼光学学会、米国眼科学会(AAO)、米国緑内障学会(AGS)の各会員。埼玉医科大学眼科客員教授。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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