整形外科医が伝授する「日常でできる腰痛予防」 腰の痛みの原因・対処法も解説!
高齢化が進むにつれて、腰痛を訴える人は増えています。何をしても良くならないと嘆いている人も多いのではないでしょうか。今回は、日常生活でできる腰痛の予防法について整形外科医に伺いました。
腰痛の原因
Q. 一体なぜ、腰痛が起きるのですか?
A. 腰痛の原因は、多岐にわたります。例えば、腰椎椎間板ヘルニアなどの疾患が原因になることもありますし、中腰や猫背などの姿勢を長時間続けたことが原因かもしれません。そのほか、細菌感染やがん、内臓疾患などが原因で腰痛になることもあります。
Q. 様々な原因が考えられるのですね。
A. そうですね。腰痛といっても、痛む場所は人それぞれで、肋骨の下あたりが痛む人もいれば、お尻の下あたりが痛む人もいます。また、腰には様々な組織や神経が通っているので「腰が痛いと思っていても、じつはお尻から痛みが生じていた」というケースもあり、原因を見つけるのが困難な場合もあります。
Q. 腰痛に悩まされているときは、どうしたらいいですか?
A. 急な腰痛が起きたときは安静にするよりも、ある程度の活動性を維持することが推奨されています。ただし、長期間痛みが持続する場合には、整形外科を受診しましょう。
Q. 腰痛はとても一般的な疾患で、「わざわざ受診するなんて」と思う人も多いかもしれません。
A. たしかにそうかもしれませんね。しかし、もしかしたら気づかないうちに圧迫骨折が起きているかもしれませんし、内臓の疾患が原因で腰痛が起きている可能性もあります。また、腰痛に加えて、足の痺れなどの神経症状が出ている場合にも、早めに受診することをおすすめします。
腰痛の治療法
Q. 腰痛を予防することはできるのでしょうか?
A. 原因にもよりますが、腰痛を予防することはできます。ただし、そのためには検査をおこない、腰痛の原因を明確にすることが大切です。
Q. どのような検査が必要ですか?
A. レントゲン検査やMRI検査などをおこないます。特に、しびれや麻痺などの神経症状がみられる場合はMRI検査をおこない、神経の状態を確認する必要があります。そのほか、骨の評価が必要な場合にはCT検査もおこないます。
Q. 様々な検査が必要なのですね。
A. それから、圧迫骨折が起きている場合には骨粗しょう症の有無を調べるため、骨密度を測定することもあります。また、場合によっては骨シンチグラフィや、血液・尿検査などの検査をおこなうこともあります。
Q. 原因がわかったら、それに応じた治療をおこなうのですね。
A. はい。腰痛を引き起こす脊椎の疾患には腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎分離症・すべり症、椎間関節症、変形性腰椎症、脊椎側弯症など様々ありますが、基本的にこれらの疾患を治療することで腰痛の改善が期待できます。
Q. 検査の結果、原因が見つかることが多いのですか?
A. いいえ。現実的にはこうした病気がないにもかかわらず腰痛が起きている、いわゆる慢性腰痛のケースが大半です。そのようなときには、検査をおこなっても原因を特定することは困難です。その場合、薬物療法や運動療法などで症状の改善を目指す治療がおこなわれます。
Q. 薬物療法や運動療法のほかに、どのような治療法がありますか?
A. 患部を温めたり、電気刺激を加えたり、牽引したりする物理療法がおこなわれることもあります。また、コルセットなどの装具を着用する治療法もあります。
整形外科医が実践している腰痛の予防法
Q. 慢性腰痛の場合、どのようにしたら腰痛を予防することができますか?
A. まず大事なのは、姿勢に気をつけるということです。特に座っているときの姿勢が悪いと、腰に負担となることが多くなります。また、腰への負担を軽減するため、「中腰の姿勢を長く取らない」「ハイヒールを履かない」といった心がけも重要です。
Q. そのほか、腰痛予防のために必要なことはありますか?
A. 腰痛はストレスとも関連があり、心理的ストレスが強いと腰痛の症状も悪化することが判明しています。これは、ストレスが脳に与える影響が原因と考えられています。ストレスが溜まりがちな場合には、上手に発散する方法を見つけてストレスを溜めないように気をつけましょう。また、適度に運動したり、ストレッチしたりすることも腰痛の予防には必要です。
Q. 身体のプロである先生は、どのようにして腰痛を予防しているのですか?
A. 私自身は、診察中でも1時間に1回は立ち上がって、腰を伸ばすということを日頃から心がけています。これだけでも腰の疲労が取れ、腰回りの筋肉がストレッチされます。
Q. ほかにはありますか?
A. 毎朝、クリニックまで徒歩で通勤しているのですが、そのときに腹筋を意識した歩き方をしています。現代人はどうしても骨盤が後傾し、腹圧が抜けがちです。しかし、腰の安定性を保ったり、腰の負担を軽減したりするためには、腹筋が必要です。そのため、歩いているときから自然と腹圧を意識することが、腰痛予防につながると考えています。
稲田 大悟(入船整形外科リハビリテーションクリニック)
琉球大学医学部卒業。その後、千葉大学医学部附属病院、川鉄千葉病院(現・千葉メディカルセンター)、君津中央病院、聖隷佐倉市民病院に勤務、千葉県救急医療センター(現・千葉県総合救急災害医療センター)整形外科部長を務める。2023年、千葉県浦安市に「入船整形外科リハビリテーションクリニック」を開院。医学博士。日本整形外科学会専門医・認定脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会指導医、日本リハビリテーション医学会専門医・指導医。
引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より
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