「更年期障害」に市販薬やサプリメントは有効? 原因や対処法を医師が解説


「更年期障害」に市販薬やサプリメントは有効? 原因や対処法を医師が解説

更年期による様々な症状に対する市販薬やサプリメントが数多く販売されていますが、医師の目からみて、効果は期待できるのでしょうか。

更年期障害とは? 症状や原因を解説

Q. まず、「更年期」とはいつくらいの時期を言うのですか?

A. 更年期は、閉経の前後5年間くらいの時期を指します。閉経の平均年齢は50歳と言われていますので、45歳~55歳がいわゆる更年期ということになりますね。ただし、閉経の年齢には個人差がありますので、40代前半で更年期が始まる人や、60歳近くなってもまだ更年期が続いているという人もいます。

Q. その時期に不調になりやすい原因は何かあるのですか?

A. そうですね。閉経にともない、女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の分泌が急激に減少します。このとき、エストロゲンの急激な減少に体がついていけず、心身の不調が起こりやすくなるのです。

Q. 「更年期障害」には、どのような症状がありますか?

A. 更年期障害には様々な症状があります。「ホットフラッシュ」と呼ばれるほてり、のぼせ、発汗のほかにも、冷え、動悸、肩こり、疲労感、めまい、イライラ、不眠など、人によって異なる症状があり、生活に影響を及ぼします。

更年期障害は市販薬やサプリメントで改善する?

Q. それだけ多くの症状があると、治療法も様々なのでしょうか?

A. はい。対処法がいくつかあります。医療機関での治療はもちろんのこと、市販薬やサプリメントなども数多く販売されています。

Q. 市販薬も色々と種類があるようですが、購入する際の注意点などはありますか?

A. 漢方薬を中心に、ドラッグストアなどで1000円前後から購入できるものがあります。パッケージには、「効能」が書かれていますので、更年期障害の症状であるイライラや倦怠感など、目的に応じたものを選んで服用されてみるのもいいでしょう。その際は、ドラッグストアにも薬剤師さんがいますので、きちんと相談したうえで購入することをおすすめします。また、服用後に気分が悪くなったり副作用が出たりした場合は、すぐに服用を中止してください。

Q. サプリメントについてはいかがですか?

A. ビタミンEや大豆イソフラボンなど、更年期障害における様々な症状の改善が期待される栄養素はいくつかあり、それらを補うためのサプリメントは数多く販売されています。効果が期待されている栄養素を補うので、理論上は症状の改善が期待できると言えるでしょう。また、サプリメントは「足りない栄養素を補う」というだけではありません。例えば、大豆イソフラボンを摂取したときに「エクオール」という物質に変換されて体内に吸収されるのですが、変換ができるのは日本人の2人に1人だけと言われています。つまり、この変換ができない人は、大豆イソフラボンを摂っても吸収されないのです。そのような人は、エクオールのサプリメントを摂った方がいいですね。なお、サプリメントは「医薬品」ではなく「食品」に分類されています。医学的に効果が証明されているわけではなく、人によっては効かない場合があるので注意が必要ですが、実際にサプリメントを処方している医療機関もありますので、気になる人は医師に相談してみましょう。

更年期障害の治療・予防法

Q. では、医療機関での治療法にはどのようなものがありますか?

A. 更年期障害に対する治療法は、大きく分けて3つあります。まずは、先ほど説明したエストロゲンを補充する「ホルモン補充療法(HRT)」です。減少したエストロゲンを補充するのに加え、子宮を有する場合には、黄体ホルモン(プロゲステロン)も一緒に投与します。これは、子宮体がんのリスクを下げるためです。

Q. 具体的にどのように投与するのですか?

A. 投与方法としては「経口剤」、いわゆる飲み薬と、「経皮吸収型製剤」というジェル状の塗り薬や、テープのような貼り薬で皮膚から成分を吸収させる方法があります。当院では、消化器に負担がかかりにくい「経皮吸収型製剤」を主に処方していますが、かぶれが出る場合などは飲み薬でも対応しています。ホルモン補充療法(HRT)は、更年期障害の治療法として最もスタンダードであり、効果が期待されています。

Q. ほかの2つはどのような治療法ですか?

A. ホルモン補充療法(HRT)以外の選択肢として、「漢方薬による治療」もあります。当院では、ほてりやのぼせなど、血管系の症状が強い場合はHRTを選択しますが、精神的な乱れが目立つ場合には漢方から処方することもあります。また、ホルモン補充療法(HRT)があまり効かなかった場合や、身体の症状よりも「うつ」や「不安」といった特定の不調がある場合には、「抗うつ薬」や「抗不安薬」を併用することもあります。

Q. これらの治療法に保険は適用されますか?

A. はい。一部の漢方薬は保険適用ではなく自費となるものもありますが、ほとんどの治療には保険が適用されます。また、「プラセンタ注射」も保険診療として厚生労働省から認可がおりました。45~59歳という年齢制限はありますが、保険適用なので1回500円、週に2回まで受けられます。


井野 奈央(江戸川橋レディースクリニック)

聖マリアンナ医科大学卒業。これまでに国立病院機構東京医療センター、慶應義塾大学産婦人科学教室、国立成育医療研究センター不妊診療科、杉山産婦人科生殖医療科などに勤務。日本産科婦人科学会、日本生殖医学会、日本受精着床学会などに所属。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、日本生殖医学会認定生殖医療専門医の資格を持つ。不妊治療だけでなく、更年期や生理の異常など、女性に特有の諸症状まで幅広く治療にあたる。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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