若々しい歩き方とは?② 〜歩行の効率編〜 (歩幅とテンポと歩行比)



皆さんは、歩くときにどんなポイントに気を付けて歩いていますか?第1回目の歩行指標は、「歩行速度」でした。歩行速度が低下することで、要介護や死亡のリスクが上がる(※1)ことなど、健康寿命に重要であることは説明しましたが、歩行速度はどのように決定しているのでしょうか?
歩行速度低下の原因は筋力やバランス能力、視力や聴力などの感覚器の機能低下、または疾患と言われていますが、歩行速度を計算するのに必要な指標はたったの2つです。距離の指標である「歩幅」と時間の指標である「テンポ」です。本コラムでは、歩幅とテンポの理解、そしてその2つの指標からなる今回のメインテーマ、「歩行比」について理解していきましょう。

「歩幅」とは?

まず、歩幅については歩行中に片足が着いて、次のもう一方の足が着くまでの進行方向に対する直線距離を示します。性別や身長、年齢の影響を受けますが、約60cmが標準的な歩幅になります。一般的なマンホールの蓋が約60cmなので、外出した際に歩幅を確認してみてください。ちなみに、マンホールの蓋をまたげる必要はありません。歩幅を測る位置は、かかとで開始したら終了もかかと、つま先で開始したら終了もつま先です。そのため、マンホールにつま先を合わせて始めたら、そのつま先がマンホールの端を超えるかを見れば良いです。他に、横断歩道の白線は標準が45cmになりますのでこちらも試してみてください。

「テンポ」とは?

もう一方の指標は、テンポです。テンポは、様々な計算方法がありますが、ここでは1分間の歩数として考えましょう。テンポも個人差が大きいですが、普通歩行では、1分間に約100歩が標準的と言われています。テンポを確認するのは難しいですが、1分間のタイマーを使って自分のテンポを確認してみましょう。1分間に80歩でややゆっくり、120歩でやや速いテンポと言われています。

「歩幅」×「テンポ」=「歩行速度」

さて、歩幅は1歩で進む距離を示し、テンポは1分間の歩数を示しますので、この2つの指標を使って歩行速度が計算できます。例えば、歩幅60cmで1分間に100歩とすると、1分間で60m(6000cm)、時速に換算すると、60分x60mで時速3.6km(3600m)となります。時速3.6kmはフレイルやサルコペニアの基準であるというお話を第1回でしましたので、リスク回避には少なくとも、歩幅を大きくするか、テンポを速くするかで時速3.6 kmを少し上回る必要がありそうです。


『Walk Coordinator』技術により、本キャンペーンでは、スマホで歩幅とテンポを同時に簡単に確認することが出来ます(※2)。

では、歩幅とテンポ、どちらが重要なのでしょうか。実は、加齢による歩行速度の低下の主原因は歩幅の低下であり、テンポは加齢に伴って必ずしも低下しない、と言われています(※3)。歩幅を広げるには、脚を振り上げ支える筋力、片足で全身を支持するバランス能力、状況を見極める視力や聴力、それらを妨げる疾患がないことが必要であり、前述の歩行速度低下の原因と重なります。一方で、テンポは筋力などの歩行能力が足りず、歩幅を広くできない場合にテンポで速度を調節することが可能です。状況に応じて、筋力やバランス能力を補う役割を担うケースが存在します。それでは、歩幅とテンポの関係について深く考えてみましょう。

「歩行比」とは?


ここでやっと本日のメインテーマ、歩行比が登場します。歩行比は、歩幅をテンポで除した値、すなわち歩幅とテンポの関係(比)を示した指標になります。この指標は、個々の歩行能力に応じたエネルギー効率を示すと言われています。そのため、若者は歩幅が広いのでテンポを下げて、高齢者は歩幅が狭いのでテンポを上げてエネルギー効率を保つ戦略を取ります(※4)。歩行比は約0.006m/step/minが成人の標準値と言われており、幼児期や高齢期では低値、すなわちエネルギー効率の悪い歩き方をしていることが知られています(※5)。試しに先ほどの歩幅60cm(0.6 m)、テンポ100で計算すると、丁度0.006となります。速度の時速3.6kmにおけるエネルギー効率は良さそうですが、リスク予防に対しては歩幅を上げて、テンポを落とした上で、速度を少し上げる必要がありそうです。

さて「歩行比」について、いかがでしたでしょうか。まだまだ歩行年齢に影響される指標は存在しますので、簡単には改善しないかもしれませんが、確実に歩行の指標を学んでいっていると思います。第1 回でもお話しましたが、日常生活に近い条件でなるべく意識せずに歩き方を計測することで、本来の自分の歩き方を知る事が出来ます。それでは、歩行測定ミッションを通じて今回覚えた歩行比も確認し、歩行年齢が改善されるか確認してみましょう。

※歩行測定ミッションはキャンペーン期間内の毎週金曜日~日曜日に配信されますのでご留意ください。

執筆者の紹介

花王株式会社
ヒューマンヘルスケア研究所
須藤 元喜

2001年、花王入社、基礎研究部門を経て、商品開発部門に移り、ヘルスケア商品の開発に従事。今まで、メリーズ、リリーフ、Sooクールローション、リファインなどの商品開発に関わったほか、歩行基礎力測定、ホコタッチなどの歩行モニタリングサービス開発を手掛ける。

【参照・参考】
(※1)高齢者の歩行能力と病気の関連 | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp)
(※2)花王 | 関節の動きを解析する「歩行メカニクスモニタリング技術」を確立 スマホをお腹に抱えて8歩歩くだけで歩行の姿勢や癖を見える化 (kao.com)
(※3)高齢者の歩行障害 - 20. 老年医学 - MSDマニュアル プロフェッショナル版 (msdmanuals.com)
(※4)Risk of falls in older people during fast-walking--the TASCOG study - PubMed
(※5)Walking patterns and finger rhythm of older adults - PubMed (nih.gov)