若々しい歩き方とは?③ 〜バランス編〜 (つま先角度、歩行角度)



若々しい歩き方に関するコラムでは、第1回目は、歩行の速度の重要性、第2回目は、歩行の効率である歩行比について、特に歩幅の大切さをお伝えしました。歩行速度や歩行比は歩幅とテンポで決まります。ただし、歩行の安定性には、別の考え方が必要です。そこで第3回目のコラムは、バランスについてお話しします。
今までのコラムは目的地に速く到達するための歩行速度、エネルギーを使わずに歩くための歩行比でしたが、無事に目的にたどり着くことは最も大切です。本日はそのためのバランスについて「つま先角度」と「歩行角度」の2つの指標から迫ってみようと思います。

「つま先角度」とは?


まず、つま先角度について説明します。本コラムで扱う、つま先角度は立った時に、足が前を向いているか、外側を向いているか、内側を向いているかを示す角度のことを示します。つま先角度には、もう1つ、足をついたときに足の裏がどのくらい見えるかを示す、つま先を上げられるか、かかとを上げられるかという上下方向の立体的なつま先の角度がありますが、今回は、そちらではないので注意してください。
さて、皆さんは歩いている時に自分の足が外側を向いているか、内側を向いているかご存じでしょうか?実は、簡単な確認方法があります。靴の裏を見ていただいて、かかとのどの部分がすり減っているかで分かります。かかとの外側がすり減っていれば、つま先角度は外向き、内側がすり減っていればつま先角度は内向きです。平均的なつま先角度はやや外向きなので、外側がすり減っていると標準的なつま先角度と言えそうです。

「支持基底面積」


では、つま先角度が外向きになるとバランスにどのような影響があるでしょうか。ひとことで言うと、支持基底面が増えて、動きが安定します。支持基底面についてもう少し説明します。支持基底面は地面についている最も外側の場所を結んで出来る面積になります。両足で地面についている場合は、右足のつま先とかかとの外側と、左足のつま先とかかとの外側で囲まれた面積がおおよその支持基底面になります。カラダの重さを1点で表す重心が、この支持基底面に入っている時、ヒトは倒れません、つまり安定している状態になります。
では、つま先がまっすぐの支持基底面とつま先が外側を向く支持基底面、かかとの位置を同じとすると、どちらのほうが支持基底面は大きいでしょうか?そうです、つま先を外側にしたほうが大きいのです。つまり、つま先の角度は外側のほうが安定することが分かり、バランス能力の低下した高齢者になるほど安定した歩行が必要となるため、つま先は外側を向くことが知られています。(※1)

「歩行角度」とは?

つま先角度と支持基底面のお話をしましたが、もう1つの指標、歩行角度についてもお話しします。本コラムで取り扱う歩行角度は、歩幅と歩隔(ほかく)で計算される左右の足の位置を表す角度になります。歩隔は、歩幅と比べることで理解しやすいです。片方の足が着いて、次のもう片方の足が着いた場所の2点の進行方向に対する直線距離が歩幅でした。歩隔は、この2点の左右方向に対する直線距離になります。両足を1つの直線上に置いて歩くと歩隔は0になり、左右方向に足の位置を遠ざけるほど歩隔は広くなります。


先ほどご説明した通り、歩隔も支持基底面に影響します。つまり、歩隔を広げるほど安定性は増します。ご想像の通り、安定性を確保するため、高齢者になるほど歩隔は広がっていきます。(※2)(※3)(※4)(※5)

さて、前に進むための歩幅と安定するための歩隔を組み合わせた指標が「歩行角度」です。すなわち、左右の足の位置と進行方向との関係を示しています。この角度が大きいほどあまり前に進めずに横に振れているふらつき歩行になり、この角度が小さいほど横にほとんど振れずに前に進めている直進歩行になります。
もちろん、この歩行角度は支持基底面にも関係します。歩行中は支持基底面から重心が飛び出す瞬間を作らなければ進めません。片足で支持する能力が足りない場合に杖をつくのは、支持基底面を増やすためです。また、支持基底面が機能するには、両足が地面についていなければならず、歩行中に両足が着いている時間を両脚支持期と呼び、動きが安定している時間を示します。
一方片足しか着いていない時間を片脚支持期と呼び、支持基底面が片足の接地面積と同じになるため、不安定な時間になります。両脚支持期が短いほど安定性が低く、両脚支持期が0になると、歩行ではなく走行と呼びます。走る、という行為はカラダが地面から浮いている不安定な時間をわざと作って前方への推進を特化させた戦略なのです。

今回はバランス能力を示すつま先角度と歩行角度について支持基底面からの説明でした。もちろんこのバランス能力も歩行年齢測定ミッションで計測することができます。自分のバランス能力について確認してみたください。『Walk Coordinator』(※6)でのバランスは歩幅と歩隔で計算される歩行角度を用い、その標準範囲は7度以内になります。
注意点はいつもと同じです。歩き方は自分の意志で、ある程度コントロール可能ですので、日常生活に近い条件でなるべく意識せずに歩き方を計測することで、本来の自分の歩き方を知る事が出来ます。それでは試してみましょう。

※歩行測定ミッションはキャンペーン期間内の毎週金曜日~日曜日に配信されますのでご留意ください。

執筆者の紹介

花王株式会社
ヒューマンヘルスケア研究所
須藤 元喜

2001年、花王入社、基礎研究部門を経て、商品開発部門に移り、ヘルスケア商品の開発に従事。今まで、メリーズ、リリーフ、Sooクールローション、リファインなどの商品開発に関わったほか、歩行基礎力測定、ホコタッチなどの歩行モニタリングサービス開発を手掛ける。

(※1)シート式圧力センサーを用いて計測した歩容左右差による年齢の推定 (jst.go.jp)
(※2)タンデム歩行とは?目的や評価のポイントについて解説 | セラピストプラス | 医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報 (mynavi.jp)
(※3)Murray MP, Kory RC, Clarkson BH: Walking patterns in healthy old men. J Gerontol, 1969, 24: 169-178.
(※4)Murray MP, Drought AB, Kory RC: Walking patterns of normal men. J Bone Joint Surg Am, 1964, 46: 335-360.
(※5)Murray MP, Kory RC, Sepic SB: Walking patterns of normal women. Arch Phys Med Rehabil, 1970, 51: 637-650.
(※6)花王 | 関節の動きを解析する「歩行メカニクスモニタリング技術」を確立 スマホをお腹に抱えて8歩歩くだけで歩行の姿勢や癖を見える化 (kao.com)